どのような仕事でもそうですが、できるだけ多くの実戦経験を積むことでしか仕事の実力はつきません。
いつも言うのですが、
打席に立って、生きたボールと対峙した数だけ上手くなれる。
球技の例えになってしまいましたが、これは本当のこと。
私、行政書士阿部隆昭は長年、業務として契約書を読んできました。
「読んできた」といっても、マンガを読む、といったイメージではなく、法律の条文を頭に入れながら読み込むのですね。
業務として読み込む場合は、たいていは一方の契約当事者に不利益な条項が盛り込まれていないか、といったアンテナを張り巡らせます。
こうして、契約書作成の分野でも、数えきれないほどの「実戦」を経験してきたわけです。
すると、どうなるか?
契約書を初見でさらっと読むだけで、疑問の残る条項や、契約当事者のパワーバランスなどが理解できるようになるのです。
「契約書が難しくって」
と思う方も多いと思いますが、無理もありません。
契約書は難しいのです。
難しいからこそ、多くの「実戦」経験が必要です。
しかし、たいていの方は、実戦経験を積みませんし、事業会社の法務部勤務者でなければその必要も感じないのが普通です。
だから、難しいものは難しいままなのです。
契約書について多くの実戦を経験すると、契約書を読むだけで当事者のパワーバランスが見えてくるようになります。
このパワーバランスを見る力は、契約書を日常的に作成する者にとっては不可欠の能力です。
なぜなら、
当事者のパワーバランス、力関係によって契約書全体の作り方が大きく変わるから。
例えば。
自社(製造業者)が開発した、ある製品を販売店に置いて欲しい。
企業にとっては、販売して売上を立てないといけません。
なので、消費者との接点がある販売店に製品をどうしても置いて欲しいのです。
ところが、販売店にとっては、数多くある製品のうちのたった一つ。
その製品を取り扱うことにより販売店のイメージアップに繋がるような魅力的な製品以外は置いてあげるメリットはありません。
この時点ですでにパワーバランス、力関係が対等ではなくなっているのです。
パワーバランスが圧倒的に上だからといって、あまりにも衡平を欠いた契約書を作ってしまった場合。
一方的に有利な契約書は、この世に普通に存在します。
こういった契約書はトラブルの元になり、契約が破談になってしまうことも珍しくありません。
トラブル防止のために作成した契約書が、逆にトラブルの原因になることもあります。
だからこそ、契約書を作る際には、実戦経験豊富な者に依頼したほうが良いのです。