まず判例を。
(最判昭34・8・7民集13-10-1251)
合意により協議離婚届書を作成した一方の当事者が、届出を相手方に委託した後、協議離婚を翻意し、右翻意を市役所戸籍係員に表示しているときは、相手方に対する翻意の表示または届出委託の解除の事実がなくとも、協議離婚届出が無効でないとはいえない。
分かりやすく説明すると、
1.旦那さんと奥さんとの合意によって離婚届を作成←この時点では離婚意思は合致している。
2.旦那さんが奥さんに役所の提出をお願いした。
3.旦那さんは、やっぱり離婚したくないと考えた。←この時点では離婚意思の合致がない。
4.旦那さんは、離婚の意思がないことを役所にだけ伝えた。←今でいう「不受理の申出」というものでしょうか。
5.旦那さんは、肝心の奥さんには、離婚したくないとは言わなかった。←言いづらかった事情が推察はされます。
上記の状況で、離婚届けの効力があるのかを最高裁まで争った結果の判決は。
結論部分で「無効でないとはいえない。」という二重否定を使っているということは、積極的に有効だとは結論付けるのに躊躇したのでしょうか。歯切れはよくないですよね。
歯切れがよくないということは、事案限定の判例とも解することができるので、もしもこれからこの判例のような事態になったのなら。
役所だけではなく、ちゃんと相手方にも翻意の意思、つまり”離婚届は出さないでくれ、離婚はしたくない”としたほうが問題が起きる余地が少なくなりますね。
<参考条文>
民法第764条(婚姻の規定の準用)
第738条、第739条及び第747条の規定は、協議上の離婚について準用する。
民法第739条(婚姻の届出)
婚姻は、戸籍法(昭和22年法律第224号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
2 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。
戸籍法第76条〔離婚の届出〕
離婚をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
一 親権者と定められる当事者の氏名及びその親権に服する子の氏名
二 その他法務省令で定める事項
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