「推定相続人」という言葉を耳にしたことがある方はいらっしゃいますか?
ただの「相続人」ではなく、「推定」という言葉がついている相続人です。
言葉の意味(定義)は民法の条文に書かれています。
第892条(推定相続人の廃除)
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
推定相続人とは、相続が今の時点で開始したとした場合に(←ここが推定ですね。)、法定相続人となるべき人のことを指します。
当然ですが、何かの行為をする時点によって推定相続人は違ってくることになります。
相続人ではなく、推定相続人の段階でなんらかの権利をもっているのでしょうか?
判例があります。
(最判昭30・12・26)
推定相続人は、将来相続開始の際、被相続人の権利義務を包括的に承継すべき期待権を有するだけで、現在においては、いまだ当然には被相続人の個々の財産に対し権利を有するものではない。
包括承継できるかもしれないとか、包括承継しなければならない、といった期待権はあると言っています。
ただし、具体的権利ではない。
他に、民法上、「推定相続人」という用語が使われている条文を挙げてみます。
第893条(遺言による推定相続人の廃除)
被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
第894条(推定相続人の廃除の取消し)
被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
2 前条の規定は、推定相続人の廃除の取消しについて準用する。
第895条(推定相続人の廃除に関する審判確定前の遺産の管理)
推定相続人の廃除又はその取消しの請求があった後その審判が確定する前に相続が開始したときは、家庭裁判所は、親族、利害関係人又は検察官の請求によって、遺産の管理について必要な処分を命ずることができる。推定相続人の廃除の遺言があったときも、同様とする。
2 第27条から第29条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が遺産の管理人を選任した場合について準用する。
第974条(証人及び立会人の欠格事由)
次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
一 未成年者
二 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
三 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
以上は、民法上の推定相続人の規定ぶりですが、相続税法第21条の9に規定する推定相続人は更に限定的です。
相続税法
第21条の9(相続時精算課税の選択)
贈与により財産を取得した者がその贈与をした者の推定相続人(その贈与をした者の直系卑属である者のうちその年1月1日において二十歳以上であるものに限る。)であり、かつ、その贈与をした者が同日において六十五歳以上の者である場合には、その贈与により財産を取得した者は、その贈与に係る財産について、この節の規定の適用を受けることができる。
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