「9割の企業が誤解している補助金の“常識”」最初の３問解説｜行政書士阿部総合事務所

補助金について、思っていたよりも“知らなかったこと”があったかもしれません。

先ほどの3問クイズ、いかがでしたか？
「なんとなく知っていたつもりだったけど、意外と違った…」
「これは当たり前だと思っていたのに、実は誤解だった…」
──そんな気づきがあった方も多いのではないでしょうか。

補助金は、“制度”としては多くの中小企業・個人事業主に開かれた支援策ですが、
実際に活用できている人は、まだまだ限られています。
その理由の一つが、今回のような“思い込み”や“誤解”です。

でも、逆に言えば、こうした基本的なポイントをしっかり理解できるだけで、
補助金という制度は**「申請するか迷うもの」から「事業の武器として活かせるもの」**へと変わっていきます。

ここからは、それぞれのクイズに対する正解と解説を通じて、
補助金の本質や、実務で本当に押さえておくべきポイントを深掘りしていきます。

ほんの少しの理解の深まりが、あなたの事業を支える大きな力に変わるはずです。

【Q1】補助金は、採択されればすぐに振り込まれる？

❖ 正解：C. 原則、後払いで交付申請・審査が必要

✅ 解説記事：

「補助金が採択されたから、すぐに口座に振り込まれる」
──これは、実は多くの事業者が誤解している“補助金あるある”です。

現実には、ほとんどの補助金制度において、補助金の支払いは「後払い方式」。
まずは交付申請を行い、認可を受けたあとに事業を開始。
経費を自己資金などで支払い、事業完了後に実績報告書を提出し、その内容が認められてからようやく補助金が支給される──
という流れが一般的です。

つまり、補助金は「先に受け取ってから使うお金」ではなく、
「あとから返ってくる」性質の資金なのです。
この仕組みを理解していないと、事業資金が足りずに進行がストップしてしまうというリスクもあります。

けれど、これは決して“ハードル”ではありません。
この後払い構造を正しく理解できれば、補助金は非常に有効な「事業拡大のテコ」となります。
自己資金や融資など、補助金を“呼び水”にする意識が大切で、
補助金があることで金融機関との連携も取りやすくなるケースも多々あります。

補助金は“もらえるお金”ではなく、「事業を成長させるために使いこなす道具」。
そのためには、まずキャッシュフローの管理力が問われるのです。

【Q2】補助金は、誰でも申請すれば通る？

❖ 正解：C. 計画内容や審査で選ばれる

✅ 解説記事：

補助金は、「条件を満たせば誰でも通るもの」と思われがちです。
けれども実際には、申請＝採択ではありません。

多くの補助金は“審査制”であり、限られた予算の中で、より有効性の高い事業を選定して支援する「選抜方式」です。
つまり、書類を出しただけで採択されることはなく、審査基準をクリアした計画書が評価されてはじめて採択されるのです。

審査では、

社会的意義
実現可能性
成果の見込み
数字的な根拠などが見られます。
「こうやりたい」だけではなく、「なぜ必要か」「どうやって実行するか」が、説得力を持って記述されている必要があります。

補助金の申請は、ある意味ではビジネスコンテストに近いもの。
だからこそ、「審査される前提」で計画書の質を高めていく必要があります。

でも、それは裏を返せば、どんな事業者でも努力次第で採択され得るということ。
補助金は“チャレンジしたものだけに開かれる扉”なのです。

【Q3】創業間もないと補助金は使えない？

❖ 正解：C. 制度によって異なるが、創業向けの支援もある

✅ 解説記事：

「創業したばかりだから、実績がなくて補助金は難しいのでは…？」
こうした声は非常に多いのですが、それは半分正しくて、半分誤解です。

確かに、一部の補助金では「過去の売上実績」などを求められるため、創業直後では要件を満たせないケースがあります。
けれども実際には、創業者の挑戦を後押しするための補助金制度も多く存在しています。

たとえば、

小規模事業者持続化補助金（創業枠）
各自治体による創業支援補助金
などは、創業間もないこと自体が「強み」になる場合もあるのです。

大切なのは、「なぜこの事業を今やるのか」「どんな社会的背景があるのか」といった“創業の物語”をしっかりと言語化すること。
創業だからこそ語れる想いや市場の新しさは、実績以上に力強い説得材料になります。

「実績がない」ことを恐れずに、“これからの可能性”を提示することが、創業者の最大の武器です。
制度を正しく選び、自分の言葉で伝えることができれば、補助金は創業期の力強い追い風になります。

「補助金に採択される」だけで終わらせないために

── 3つの“誤解”を解きほぐし、あなたの事業に追い風を。

補助金についての理解は、事業の未来を大きく左右します。
「採択されたらすぐに入金される」「誰でも申請すれば通る」「創業したばかりでは対象外」──
これらは多くの事業者が抱きがちな“思い込み”ですが、実はそこにこそ、戦略的活用のヒントが隠れています。

たとえば、補助金は採択されたからといってすぐに入金されるわけではありません。
多くの制度で、交付決定のあとに事業を実行し、その実績を報告してはじめて、補助金が支払われる仕組みです。
つまり、資金的に“先に動ける力”があるかどうかが非常に重要になります。
けれども、ここで不安になる必要はありません。
「補助金はあくまで“あとからついてくる”資金」であると理解できれば、事業計画の立て方そのものが変わります。
逆に言えば、補助金に依存しない形でスタートを切る姿勢がある企業こそが、結果的に選ばれやすいのです。

また、補助金は申請したからといって自動的に通るものでもありません。
その多くは“審査”を経て、社会的意義や実現可能性のある事業が採択されます。
これを聞くと「ハードルが高そうだ」と感じるかもしれませんが、審査基準はブラックボックスではありません。
公募要領には評価の視点がしっかりと明記されており、それに沿って事業の“理由”や“目的”“成果”を丁寧に描くことで、採択の可能性は着実に高まります。
必要なのは、“想い”を“伝わる言葉”に変える力。これは経験や訓練で誰でも磨くことができる力です。

さらに、創業間もない事業者の中には、「実績がないから無理だ」と思っている方も多いでしょう。
ですが、今はむしろ、創業支援に特化した補助金や、スタートアップ向けの加点措置がある制度も数多く存在しています。
ポイントは、「なぜ今、この事業を立ち上げたのか」を語れるかどうか。
創業の動機や社会的背景、提供する価値を丁寧に言語化できれば、創業期であっても採択される可能性は十分にあります。

補助金は、単なる“申請作業”ではなく、あなたの事業を見つめ直すきっかけであり、外部に伝える力を育てる場でもあります。

もし今回のクイズを通じて、ひとつでも「なるほど」と思えたなら、
あなたはすでに、補助金を“戦略的に活用する側”に足を踏み入れています。

勇気をもって、一歩踏み出してみてください。
その一歩に、補助金という制度が追い風を吹かせてくれることを、私たちは知っています。