合同会社との比較で株式会社のデメリットと説明されることが多いのが取締役などの任期の存在。
任期が到来する度毎に改選手続きが必要になりますし、登記を受けるための登録免許税を収めなければなりません。
「登記してやっているのに、なぜ税金を払わなければいけないの??」
と仰る方もたまにいらっしゃいます。
気持ちは分かるのですが、登録免許税という税は、そもそも「登記を受ける利益」に対して課税されています。
会社の登記を受けることによって、「公示力」や「公信力」を貰えることになるのです。(会社法908条)
(登記の効力)
第九百八条 この法律の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。登記の後であっても、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、同様とする。
2 故意又は過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない。
詳しくはここでは説明いたしませんが、日本国から御社のお墨付きを貰えるようなもの。
そのお墨付きがあるからこそ、法人同士の取引も行えるわけですし、銀行からも融資を受けられるわけです。
さて、その登録免許税ですが、資本金の額によって3万円か1万円に分かれます。
国税庁のサイトを見てみましょう。
資本金の額が1億円以下なら1万円です。
つまり任期ごとに、登録免許税として1万円を支払わなければならず、さらに司法書士に依頼する場合には司法書士報酬も別途1件30,000円程度必要になります。
さて、この任期ごとの1万円が安いのか?高いのか?
株式会社の場合には、取締役の任期を10年まで伸ばすことが出来ます。
※会社の形態によって異なる場合があること、正確には決算期や定時総会との関連で10年とはならない等の説明は今回省略します。会社法332条)
10年間、役員変更登記をしなくていい!、なんてお得!!
じゃあ、任期は10年で大丈夫です。10年にしましょう!!
お得でもないし、大丈夫でもありません。
ある日、会社の先輩から呼び出されてこう言われるとしましょう。
オレ、実は4月に会社辞めることしたんだよ。
この会社居たって将来性ないし、いいこと一つもないでしょ。
給料だって同期と比べたら安い方だしさ。
それでだ、オレ、独立して会社やろうと思ってる。
経験がある仕事だから絶対に失敗しないし、具体的なプランも作ってあるんだよね。
で、そのプランにはオマエも入ってる。
計算でいくと、オマエの給料も今よりもアップするし、取締役だから友達にも箔が付くぞ!
どうだ一緒に退職してオレと一緒に事業やろうぜ!!
同僚同士、オレとオマエの関係性が、代表取締役と取締役となり、一緒に事業を行っていく過程でお互いの感情が一気に悪化することは珍しくありません。
「こいつ出来るな!」
と思ったけれども、意外にそうじゃなかった、という経験ありませんか?
一旦、取締役として選任した以上、”サクッと居なくなってくれ”とはいかないのです。
会社法339条を見て下さい。
(解任)
第三百三十九条 役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。
2 前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。
正当理由なく解任された取締役から損害賠償請求されるかもしれない
いつでも解任は出来るのですが、解任された者は会社に対して損害賠償請求が出来るのです。
言い換えれば、正当な理由なく解任した場合には、損害賠償を請求される可能性があるということ。
解任された取締役の残存期間分の役員報酬分が会社の債務として残る可能性があります。
会社設立業務を20年も行っているといろいろなケースを見てきました。
登録免許税が節約になるから任期は10年でいいですね?
ということは絶対に言えませんし、お勧めも出来ません。
そういった無用なトラブルを避けるために、法律で任期を制限しているとも考えられるのです。
事業執行者として不適任であることが分かったときでも、2年間我慢して定時株主総会の際に再任しなければいいだけです。
軋轢を生む「解任」という作業をしなくても良いのは精神的にもとても楽。
仲違いしたとはいえ、スタート当初の仲間を切るのは心情的にも辛いでしょう。
積極的な「解任」よりも、「再任しない」という選択のほうが相手方の受ける心象もまったく違いますしね。
そこまで説明を受けたうえでもなお、役員の任期10年を選択されるのであれば問題ありません。
会社設立の書籍を読んで設立手続きを一人で行った方の中には上記のようなリスクを知らずに任期を10年にしてしまった方もいらっしゃるでしょう。
気を付けたいですね!
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ただ、それにはちょっとしたコツが必要。
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解決支援コンサルタント行政書士阿部隆昭