外国人雇用最前線(2025):
「採用」から「定着」まで、企業の実務を壊さない運用設計
この記事は企業の人事・総務・採用担当者/経営者向けです。
2025年の外国人雇用は、制度の変化そのものよりも、社内運用(期限・書類・説明・届出)の整備が競争力になります。
本記事では、現場で躓きやすい論点を「採用前」「入社直後」「継続雇用」の3段階に分け、社内で再現できる管理方法として整理します。
外国人雇用は、手続を“こなす”だけだと必ず詰まります。
実務の要点は、①職務と在留資格の整合、②社内の期限・証跡の標準化、③相談ルートの固定です。
この3点が揃うと、採用・配置・更新・届出が「担当者の勘」ではなく「会社の仕組み」になります。
当事務所は、企業の外国人雇用において制度と実務の整合を最優先に支援します。
申請書類だけでなく、社内運用(台帳・アラート・担当分担・説明資料・証跡管理)まで含めて整備し、継続雇用の安定につなげます。
1. 2025年の「外国人雇用最前線」:採用競争より、運用競争が始まっています
外国人雇用の現場で、いま増えているのは「制度が難しい」という相談ではありません。むしろ増えているのは、制度を知っていても社内運用が追いつかず、結果として採用・定着・配置に無理が出るケースです。
よくある“現場の詰まり”:
・採用はできたが、配属先が職務説明を用意できない
・異動や担当替えで、誰も在留期限を把握していない
・本人への説明が不十分で、直前に事情変更が発覚する
・届出や社内資料の整合が取れず、手戻りが連鎖する
2025年は、申請方法の選択肢や各種運用が見直され、「できること」は増えています。その一方で、企業側の仕事は増えます。だからこそ重要なのは、担当者の頑張りではなく、誰がやっても同じ品質になる運用設計です。
2. 2025年の政策動向を“企業実務”に翻訳する:押さえるべき3つの方向性
2025年の外国人政策は、単純に「緩和」か「厳格化」かでは語れません。企業実務に翻訳すると、方向性は大きく3つです。
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方向性①:受入れは進むが、説明責任と整合がより重要になる
「職務内容」「雇用条件」「配属実態」を、会社として一貫して説明できる状態が前提になります。
一次情報: 「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」について(出入国在留管理庁) / 在留資格「技術・人文知識・国際業務」(出入国在留管理庁) -
方向性②:手続のデジタル化が進み、運用設計の差が出る
オンラインの活用自体が目的ではありません。権限・証跡・担当分担を整え、運用コストを下げることが目的です。
一次情報: 出入国在留管理庁オンライン申請(出入国在留管理庁) / 出入国在留管理庁電子届出システムポータルサイト(出入国在留管理庁) -
方向性③:制度の移行期に入り、採用計画と人材育成の接続が必要になる
制度が移るときに現場が混乱しやすいのは、「採用→育成→次の在留資格」を設計していない場合です。
一次情報: 育成就労制度の概要(出入国在留管理庁) / 特定技能制度における運用改善について(出入国在留管理庁)
企業が避けたいのは「制度変更そのもの」ではなく、制度変更に社内運用が追随できず、現場が停止することです。
そのために必要なのが、次章以降で扱う「採用前の整合」「継続雇用の標準手順」「相談ルートの固定」です。
3. 採用前のチェックが9割:職務・在留資格・雇用条件を“同じ地図”にする
外国人雇用で最もコストが高いのは、採用後に「前提が違った」と判明することです。採用前に、社内で必ず揃えておきたいのは、次の3点です。
| 採用前に揃えるもの | ポイント(社内でズレやすい箇所) |
|---|---|
| 職務内容(具体) | 配属先の“実際の仕事”を文章化します。業務範囲が曖昧だと、後から説明が揺れます。 |
| 雇用条件(確定) | 賃金・時間・場所・試用期間など、就業条件の確定が前提です。口頭合意のまま進めると手戻りが起きます。 |
| 整合の見取り図 | 「その職務内容」と「その在留資格」で説明が通るかを、採用前に点検します。後追いで整合させようとすると無理が出ます。 |
ここでの要点は、細かい条文暗記ではなく、会社としての説明を一本化することです。採用部門・現場・人事で表現がズレると、後で必ず困ります。
実務のコツ:
「求人票の文言」→「雇用契約書」→「職務内容説明」の3つを、同じ言葉で揃えておくと、採用後の運用が一気に楽になります。
4. 継続雇用を壊す“典型原因”:更新だけでなく、異動・職務変更・届出が引き金になる
「在留期間の更新」は確かに重要ですが、実務上のトラブルは更新単体では起きません。多くの場合、異動・職務変更・組織改編・上司交代などの“日常”が引き金になります。
企業で起きやすい“連鎖”:
異動(現場が変わる)→ 職務の説明が変わる → 社内書類が追いつかない → 期限が近づく → 直前対応 → 整合不足が露呈
| 原因 | 説明(企業側の改善ポイント) |
|---|---|
| 本人任せにしている | 期限・状況変更の把握が本人だけだと、会社側の準備が遅れます。台帳とアラートで“会社の管理”にします。 |
| 現場の職務説明が属人化 | 上司が替わるたびに説明が変わると整合が崩れます。職務内容は会社の文書として固定します。 |
| 変更点の申告が遅い | 住所・家族・副業・兼務など、本人の事情変更が直前に出てくるケースがあります。定期的な確認フローが必要です。 |
| 届出・社内資料の整合が取れていない | 社内の情報(部署名・役職・勤務地など)がバラバラだと、説明の一貫性が崩れます。基礎情報を一元管理します。 |
| 専門家相談が遅い | 直前だと、論点整理と必要資料の確定が間に合わないことがあります。企業側の標準手順を作ると相談も早まります。 |
5. 期限管理は“人事の仕事”ではなく“会社の仕組み”:基準日を固定する
在留期間の更新は「満了日の直前に出せばよい」という業務ではありません。入管の案内上、原則として満了日の概ね3か月前から申請が可能と整理されています(在留期間が6か月以上の場合)。
「在留期間の満了する日以前(6か月以上の在留期間を有する者にあっては、在留期間の満了する概ね3か月前から)申請可能です。」
ただし、企業実務として重要なのは「申請できる時期」ではなく、社内の準備が完了している状態をいつ作るかです。おすすめは次のように基準日を固定することです。
- 満了日の4か月前:台帳で対象者抽出/本人に現況確認(住所・家族・職務・異動予定)
- 満了日の3か月前:社内書類(雇用条件・職務内容・組織図等)の確定/申請準備完了
- 満了日の2か月前:申請提出(オンライン活用も含む)/不足があれば速やかに補正
運用例(最小構成):
①スプレッドシートで台帳化 → ②カレンダーで自動通知 → ③月1回の定例確認。
高価なシステムより先に、まず“漏れない仕組み”を作ることが重要です。
6. 定着を左右するのは「言語」より「相談設計」:本人・現場・人事の三者連携
外国人雇用は、言語の問題として扱われがちですが、実務上は「相談ルートがない」ことの方が大きなリスクになります。本人が困っていても、どこに言えばよいか分からない。現場が気づいても、人事に上がらない。結果として直前に課題が噴き出します。
相談が遅れると起きやすいこと:
・事情変更の把握が遅れ、説明の整合が崩れる
・現場が独自対応し、社内の統一手順から外れる
・不安が増え、離職や配置転換の混乱につながる
2025年の実務でおすすめしたいのは、相談を「個別の優しさ」ではなく、仕組みとして固定することです。例えば次のような設計です。
- 本人向け:相談窓口(担当者)と相談テーマの例を、入社時に紙1枚で渡す
- 現場向け:異動・職務変更・勤務条件変更がある場合は、人事へ必ず共有するルールを明文化
- 人事向け:月次で台帳確認し、期限と変更点をセットで点検する
重要なのは、誰が担当しても同じ運用になることです。
「優秀な担当者がいるから大丈夫」ではなく、「担当が替わっても大丈夫」へ移行することが、2025年の現場力になります。
7. 当事務所の企業向けサポート:書類作成より先に、運用を整えます
行政書士阿部総合事務所では、外国人を雇用する企業様向けに、次の支援を行っています。目的は、単発の対応ではなく「社内で回る仕組み」を作ることです。
- 採用予定者と企業で就労予定業務のマッチング整理(在留資格との整合の一次確認)
- 社員ごとの更新スケジュール設計サポート(台帳・アラート・担当分担の運用設計)
- 本人への説明支援/企業側書類の整理・作成支援(説明の一貫性の確保)
- 異動・職務変更が発生する企業向けの、社内ルール(連絡線・証跡)の整備支援
- 申請取次対応(企業実務と整合する形での段取り設計を含む)
期限・雇用条件・職務内容・変更点が分かれば、論点整理を前に進めやすくなります。
「更新が直前になりがち」「異動が多く管理が追いつかない」といった企業様ほど、台帳とアラートの設計から整えることが効果的です。
8. まとめ:2025年の外国人雇用で、今すぐ確認すべき3つのポイント
- 職務・在留資格・雇用条件は、採用前から同じ言葉で揃っていますか?
- 台帳とアラートで、期限と変更点を会社として把握できていますか?(本人任せになっていませんか?)
- 相談ルートは固定されていますか?(本人・現場・人事が迷わず連携できる状態ですか?)
「知らなかった」「忘れていた」では済まされない場面があります
外国人雇用は、採用と同じくらい「継続雇用の運用」が重要です。対応が遅れると、会社としての信頼や職場運営に影響が出る可能性があります。
2025年は制度や運用の見直しが続く局面だからこそ、早期の状況把握と社内運用の整備、必要に応じた専門家連携をご検討ください。
行政書士阿部総合事務所は、入管制度と企業実務の“あいだ”を丁寧につなぎ、企業の継続雇用を支えます。



