行政書士として創業塾などの講師をしていると、講義内容だけでなく、会場の機材にも気を配る必要があります。
資料は完成している。パソコンでも問題なく開ける。ところが会場でプロジェクターにつないだ瞬間、画面が映らない。講師にとって、これはかなり焦る場面です。
先日、私が担当した創業塾でも、まさにその問題が起きました。結果的には、後日用意したUSB-C・VGA変換アダプターと5mのVGAケーブルによって、いつものMacを使って快適に講義できました。
ただし、これは「VGAなら必ず映る」「この操作をすれば解決する」という話ではありません。今回、私のMacと会場機器の組み合わせで何が起き、何を確認し、どのような備えが役に立ったのか。その経過を、講師やセミナー主催者の参考として記録しておきます。
新しいプロジェクターなのに、Macを認識しない
会場に導入されていたのは、リコーの「RICOH PJ WUL5A50」という比較的新しいプロジェクターでした。
私が持参したのは、普段の業務でも使っているM1搭載MacBook Airです。USB-CからHDMIへ変換するアダプターを介して接続しました。
一度目は画面が出たように見えたものの、その後は投映できませんでした。プロジェクターのメニュー画面はスクリーンに表示されているので、プロジェクターの光源や投映機能自体が止まっているわけではありません。
HDMI1とHDMI2を切り替える。ケーブルを抜き差しする。別のHDMIケーブルを使う。Macを再起動する。プロジェクターの設定も確認する。思いつく範囲のことを試しましたが、改善しませんでした。
Macの「ディスプレイ」設定にも外部画面が表示されていません。この時点で、PDFファイルの内容以前に、Macがプロジェクターを外部ディスプレイとして認識できていないことが分かりました。
会場のWindowsパソコンを同じプロジェクターへ接続すると映りました。また、私のMacと変換アダプターを事務所のモニターへ接続すれば映ります。さらに、別のUSB-C・HDMI変換アダプターも試しましたが、会場のリコープロジェクターでは投映できませんでした。
ここまで確認しても、原因を一つに断定することはできません。Mac、変換アダプター、HDMIケーブル、プロジェクターが接続時に行う信号情報のやり取りなど、複数の要素が関係していた可能性があります。
少なくとも、プロジェクターが全面的に故障していたとも、Macの映像出力が壊れていたとも考えにくい状況でした。機器はそれぞれ動くのに、特定の組み合わせではつながらない。会場機材では、こうした相性に近い問題が起こり得ます。
同じ方式の予備だけでは足りなかった
最初の講義では、会場のWindowsパソコンを借りて対応しました。
講義そのものは実施できましたが、使い慣れたMacとは操作感が異なります。資料の切り替え、拡大表示、ウインドウ操作など、細かなところで進行しにくさを感じました。
そこで次回に向けて、予備の接続経路を用意することにしました。
考えたのは、USB-C・HDMI変換アダプターをもう一つ増やすことではありません。すでに異なるアダプターを試していたため、同じHDMI系統の予備を増やしても、同じ箇所で止まる可能性があります。
必要なのは、別の方式でプロジェクターへ到達する経路でした。
会場のプロジェクターには、従来のVGA、すなわちミニD-Sub15ピンの入力端子があります。そこで、エレコムのUSB-C・VGA変換アダプター「AD-CVGABK3」と、5mのVGAケーブル「CAC-50BK/RS」を購入しました。
VGAは古い方式ですが、商工会や商工会議所などの会議室では、今も端子を備えたプロジェクターが少なくありません。最新機器だけを想定するより、会場に残っている設備を利用できる方が、講師にとっては実用的です。
「会場にあるはず」が、実際にはなかった
VGAケーブルについては、会場に備え付けられているだろうとも考えました。
しかし、実際に行ってみるとVGAケーブルはありませんでした。プロジェクターにVGA端子が付いていても、接続ケーブルまで常備されているとは限りません。
しかも会場は約50人規模です。スクリーンとプロジェクターの距離を確保し、さらに講師席までケーブルを引くには、3mでは足りませんでした。購入しておいた5mのケーブルが必要十分な長さでした。
もし変換アダプターだけを持参し、ケーブルは会場にあるだろうと考えていたら、VGA端子を見つけても接続できませんでした。また、3mを選んでいたら、講師席の配置を変えるか、Macをプロジェクターの近くに置かなければならなかったでしょう。
変換アダプターだけでなく、実際の会場配置を考えて5mのケーブルまで用意したことが、今回はそのまま結果につながりました。
本番でもHDMIは映らず、VGAでは接続できた
次の講義当日、まずHDMI接続をもう一度試しました。しかし、やはりMacはプロジェクターを認識しませんでした。
そこで、用意したVGA系統へ切り替えました。
Mac、USB-C・VGA変換アダプター、5mのVGAケーブル、プロジェクターを接続し、プロジェクター側の入力を「Computer」に変更します。するとMacは外部画面を「RPJ-SERIES」として認識しました。
表示は1920×1200、リフレッシュレートは60Hz。Macの画面全体をミラーリングし、普段どおりPDFを操作しながら講義できました。文字の視認性にも、講義上問題になるような違和感はありませんでした。
これはVGAがHDMIより優れているという意味ではありません。HDMIにはデジタル映像や音声を一本で送れる利点があり、現在の標準的な接続方法です。
今回確認できたのは、私のMacとこの会場のプロジェクターではHDMI経路がうまく成立せず、別系統のVGA経路では実用的に接続できた、という事実です。
二系統を持つことは、講師の業務継続策になる
今回の経験で強く感じたのは、予備を持つなら「同じ物を二つ」だけではなく、「異なる経路を二つ」持つことの重要性です。
私の講義用バッグには、USB-C・HDMI変換アダプターとHDMIケーブルに加えて、USB-C・VGA変換アダプターと5mのVGAケーブルを入れることにしました。
さらに、会場のWindowsパソコンを借りる場合に備え、Windows上で開けることを事前に確認したPDFをUSBメモリーに保存しています。
第一経路はMacからHDMI。第二経路はMacからVGA。それでも接続できない場合は、会場のWindowsパソコンとUSBメモリーを使う。この三段階を用意しておけば、一つの不具合に講義全体を左右されにくくなります。
資料を作成することだけが講師の準備ではありません。その資料を会場で表示し、受講者へ予定どおり届けられる状態まで整えることも、講師業の一部です。
主催者側にとっても、プロジェクターのメーカー名や型番、利用できる入力端子、講師席までのケーブル長、貸出パソコンの有無を事前に共有するだけで、当日の混乱をかなり減らせます。
「HDMI端子があります」という確認だけでは十分でない場合があります。講師が実際に使うパソコンで事前接続できるのが理想です。難しければ、別方式の端子とケーブル、予備パソコンを確認しておくことが現実的でしょう。
今回購入したVGAセットは、念のための道具ではなく、実際に講義を成立させる装備になりました。
トラブルを完全になくすことはできません。しかし、接続経路を二系統持ち、資料も別環境で開けるようにしておけば、トラブルが起きても講義を止めずに済む可能性は高くなります。
講師として各地の会場へ出向く以上、これはパソコンや充電器と同じように、常備しておくべき業務道具なのだと思います。



