東京都創業助成を申請する前に
「創業5年未満」だけでは
申請資格を判断できません
経営経験、指定創業支援、対象経費、審査、面接、後払い資金まで。申請準備の順番に沿って解説します。
東京都の創業助成事業は、都内で創業を予定する方や、創業後間もない事業者等を対象に、創業初期の経費を助成する制度です。上限額だけを見ると魅力的ですが、申請できるかどうかは「会社を設立してから何年か」だけでは決まりません。
代表者の過去の経営経験、指定された創業支援の利用、都内の事業実態、必要書類、対象経費、資金計画、そして代表者本人による面接まで、一つずつ確認する必要があります。本記事では、申請前にどの順番で確認すればよいかを、30分の解説動画とともにまとめました。
この記事の基準資料
令和8年度第2回募集要項を基準にしています。資格確認、数字のつなぎ方、経費の整理、面接準備という基本的な考え方は今後の募集回にも参考になりますが、実際に申請する際は、その募集回の最新要項・様式・電子申請マニュアルを必ずご確認ください。
先に確認したい3つのポイント
「創業5年未満」だけで判断せず、過去の経営経験と指定創業支援まで確認します。
顧客数、成約率、単価、原価、広告費、資金繰りを一つの計算としてつなげます。
採択後の立替払い、証拠書類、実績報告まで実行できる計画かを申請前に検証します。
申請資格は4つのゲートで確認する
東京都創業助成は、制度名だけを見ると「東京都内で創業した人向け」と理解しがちです。しかし実務では、次の4段階をすべて通過できるかを確認する必要があります。
| 確認ゲート | 主な確認内容 | 準備する資料・行動 |
|---|---|---|
| 1 申請者 | 創業予定者、個人事業主、法人等の区分と創業時期 | 開廃業届、履歴事項全部証明書、代表者の経歴 |
| 2 創業支援 | 指定された創業支援を利用し、所定要件を満たすか | 支援番号、実施機関、証明書、有効期間を確認 |
| 3 事業実態 | 都内の事業所、許認可、事業承継、他制度との重複 | 所在地、契約、許認可、既存事業との関係を確認 |
| 4 実行能力 | 立替資金、事業計画、対象経費、実績報告の実行可能性 | 月別資金繰り、見積、発注時期、証拠書類を確認 |
一つでも未確認のゲートがあれば、事業計画を書き始める前に確認してください。文章の完成度より先に、申請資格と実行可能性を固めることが必要です。
経営経験は、今回の法人設立日だけで判断しない
今回の法人を設立してから5年未満でも、代表者に過去の経営経験がある場合は注意が必要です。個人事業主として開業届を提出していた期間、別法人で代表者を務めた期間、雇われ社長や子会社社長の期間などが判断に影響します。
個人事業
開業日・廃業日
別法人の代表
就任日・退任日
正式な休業期間
証明書類との照合
今回の創業
法人設立・開業
最初に作るべきものは、長い事業計画書ではなく、代表者の経営歴を日付で並べた時系列表です。開廃業届、履歴事項全部証明書、休業を示す資料等と照合し、期間の重複や空白を確認します。
指定された創業支援と証明書を確認する
募集要項で指定された創業支援事業のいずれかを利用し、所定の要件を満たす必要があります。公式案内では、この要件を満たすまで概ね3か月以上かかる場合があるとされています。
対象支援を確認
支援を利用
証明書を取得
名義・期限を照合
創業セミナーや金融機関の相談を利用した事実だけでは足りません。支援番号、実施・運営機関、必要書類、有効期間、申請者名義まで確認します。指定支援を利用していても、提出する証明書が所定の書類と異なれば、審査の入口で不通過となるおそれがあります。
助成額は「400万円」だけを見ない
以下は、令和8年度第2回募集要項を基準にした金額です。
400万円
100万円
2/3以内
上限400万円を申請する場合の単純計算
対象経費 600万円 × 助成率 2/3 = 400万円
ただし、見積総額が600万円なら自動的に400万円が交付されるわけではありません。経費の対象性、事業との必要性、価格の妥当性、審査、交付決定、実績報告、検査を経て最終額が決まります。また、事業費・従業員人件費の助成上限は300万円、委託費の助成上限は100万円で、事業費を含む申請が必要です。
対象経費は、名称ではなく使い方と取引で判断
| 経費区分 | 対象になり得る例 | 注意・対象外例 |
|---|---|---|
| 賃借料 | 都内の事務所・店舗等を継続的に賃借する費用 | 敷金、礼金、保証金、手数料、更新料、バーチャルオフィス、親族等所有物件 |
| 広告費 | 広告掲載、パンフレット、展示会、PR用ホームページ | 有料会員、予約・決済、オンラインショップ、販売ページ等は要注意 |
| 器具備品購入費 | 都内で使用し、単体で機能する税込1万円以上50万円未満の備品 | 中古品、助成事業以外にも使用する予定のもの |
| 市場調査・分析費 | 外部専門業者による市場規模、顧客、競合、価格等の調査・分析 | 単なる役務提供、データ購入、成果物のない委託 |
例えば「ホームページ制作一式」ではなく、PRページ、撮影、サーバー、予約機能、決済機能等へ分けます。どの部分が広報で、どの部分が対象外機能なのかを説明できる内訳にしてください。
審査では、計画全体が一本につながっているかを見る
事業内容、販売計画、経営見通し、資金計画、経費明細を別々に作ると、数字や説明がずれやすくなります。まず顧客がどう動くかを数字にし、その結果を売上、利益、広告、人員、資金繰りへつなげます。
見込み客数 × 問い合わせ率 × 成約率 × 単価 × 購入回数
何を、どこまで完成させるか
なぜ自社が取り組むのか
顧客と競合をどう捉えるか
販売・人員・日程に無理がないか
なぜ今、この経費が必要か
売上と利益が継続するか
入金前の支払いに対応できるか
必要性と価格を説明できるか
「市場規模が大きい」という資料だけでは、自社が販売できる数量の根拠にはなりません。過去の注文、予約、問い合わせ、テスト販売、商談、広告結果など、自社の販売に近い証拠を優先します。
良い計画でも、書類と面接がつながらなければ通らない
- 全シート・全ページが揃っているか
- 発行日と有効期間は正しいか
- 申請者名義が一致しているか
- 年度と募集回の様式が正しいか
- 見積と事業計画の金額が一致するか
- 顧客と課題を自分の言葉で説明できるか
- 販売数量と単価の根拠を説明できるか
- 競合との差を具体的に話せるか
- 対象経費が必要な理由を説明できるか
- リスクと対応策を答えられるか
面接は代表者本人が、提出済み資料を使って説明
書類審査を通過した申請者には面接審査があります。基準とした募集回では、通訳等を除き代表者以外は入室できず、当日に使用できるのは提出済みの申請書と添付書類です。PC、追加資料、商品・サービスのサンプルは持ち込めません。
そのため、支援者が文章を整えるだけでは十分ではありません。代表者本人が、申請書と同じ数字・同じ論理で説明できる状態を作る必要があります。
助成金は後払い。入金前の資金繰りが必要
助成金が入る前に、事業者が経費を支払う必要があります。自己資金や融資を含め、月別の現預金残高を確認し、入金まで事業を継続できる資金計画を作ります。
申請前に進める9ステップ
- 1経営経験の時系列表を作る
- 2指定創業支援と所定証明書を確認する
- 3都内の事業実態、許認可、事業承継、他制度との重複を確認する
- 4既存事業と助成事業を分ける
- 5顧客数、成約率、単価、購入回数、原価を作る
- 6対象経費を活動と対応させ、見積内訳を分ける
- 7助成金が入る前の資金繰りを月別に確認する
- 8全シート、全ページ、発行日、名義、年度、様式を確認する
- 9申請直後から面接用の質問へ答える準備をする
行政書士阿部総合事務所の支援
申請書を書く前の資格確認から支援します
経営経験、指定創業支援、都内要件、許認可、他制度との重複を確認したうえで、事業計画、販売計画、資金計画、対象経費、提出書類、面接準備を支援します。
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公式情報
- TOKYO創業ステーション「創業助成事業」
- 申請する募集回の募集要項、申請様式、電子申請マニュアル
本記事は令和8年度第2回募集要項を基準にした一般的な解説です。資格確認、計画と数字の整合、経費の必要性、資金繰り、本人説明という準備の考え方は今後の募集回にも参考になりますが、申請受付期間、申請方法、金額、対象経費、必要書類、審査方法は変更される可能性があります。実際の申請時は、TOKYO創業ステーション公式サイトと、申請する回の最新資料をご確認ください。個別事業の申請資格、助成対象性、採択、交付決定額を保証するものではありません。



