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「次男に株を奪われないために!」中小企業の事業承継対策としての【遺留分に関する民法の特例】|行政書士阿部総合事務所

 

中小企業経営者が抱える大きな悩み。

それが事業承継対策。

今はまだ元気でも、そのうち元気じゃなくなるときは必ずやってきます。

実質的な経験を長男などの委譲したところで制度設計まで手を付けていなければ、いざ経営者に相続が起きたときに根本から崩壊する可能性があります。

 

例えば、

資本金 1000万円

従業員 10名

株主 社長Aさん

 

Aさんが死亡してしまうと株式が三人のお子さんに相続され、経営が不安定になってしまいます。

それを事前に予防する意味で株式を長男に贈与することもあるのですが、これも事業承継対策としては万全ではないのです。

 

なぜなら。

長男が贈与を受けた株式に対して、次男や三男から遺留分減殺請求がなされてしまう可能性が残っているから。

遺留分減殺請求とは、兄弟姉妹の相続人に認められた相続分を取り戻すことが出来る権利です。

せっかく、円満な事業承継対策として株式を贈与したにもかかわらず、兄弟同士の争いの火種となるかもしれないのです。

 

こういった事情を抱える中小企業の経営者さんは少なくありません。

このようなときに利用して欲しいのが、

中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律上の遺留分の適用に関する民法の特例です。

民法の特例というからには、民法に本則がありまして。

それが、多くの方がご存知の「遺留分」という制度です。

自分だけの相続分は確保されているんですよね!

といった質問をされることがとても多いですが、ニュアンスとしてはその通りです。

その遺留分も実は、相続が発生する前、この場合でしたら社長さんが亡くなる前に遺留分を棄てさせる制度があるのです。

この遺留分の放棄の制度は複雑で、しかも利用しづらい。

家庭裁判所に遺留分を放棄する本人が申立をしなければならないので、手続き面での負担が大きいのです。

 

そこで、経営承継円滑化法で遺留分の適用に関する民法の特例を設けることで、「特例中小企業者」の「旧代表者」から「後継者」に保有株が贈与された場合において、遺留分算定の基礎となる財産からその株式を除外(除外合意)することができるようにしたのです。

※「特例中小企業者」、「旧代表者」、「後継者」とは、この経営承継円滑化法上の用語で、後に説明します。

遺留分制度を利用して、

財産をよこせ!

と言われても、そもそも対象財産から除外されているので、その株式は次男、三男に取り戻されることなく全株式を持っている長男の株式数に異動が生じないのです。

 

とても複雑そうな制度と感じるかもしれませんが、順番に要件を確認していけばそれほど難しくありません。

 

まず、全ての中小企業が対象になるわけではなく、一定の要件があります。

遺留分の特例に関する民法の特例の対象事業者(特例中小企業者)とは?

・合意の時点で、3年以上継続して事業を行っている。

・経営承継円滑化法第二条で定める企業

 サービス業でしたら、資本金の額が5000万円以下、従業員が100人以下、といったように業種ごとに要件が異なります。

 そもそも、経営承継円滑化法に定める会社でなければ、この遺留分の適用に関する民法の特例を利用することができません。

 

 

(定義)
第二条 この法律において「中小企業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。


一 資本金の額又は出資の総額が三億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人であって、製造業、建設業、運輸業その他の業種(次号から第四号までに掲げる業種及び第五号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの


二 資本金の額又は出資の総額が一億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であって、卸売業(第五号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの


三 資本金の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であって、サービス業(第五号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの


四 資本金の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が五十人以下の会社及び個人であって、小売業(次号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの


五 資本金の額又は出資の総額がその業種ごとに政令で定める金額以下の会社並びに常時使用する従業員の数がその業種ごとに政令で定める数以下の会社及び個人であって、その政令で定める業種に属する事業を主たる事業として営むもの

 

「旧代表者」とは?

大切なポイントを赤のハイライトで示しましたが、特例中小企業者の代表者と簡単に考えてもらって問題ありません。

(※条文なので大切ではない部分は少しもないのですが、それですと全部「赤」になってしまいます。)

「推定相続人」というのは、もしも現時点で社長が亡くなったとしたら法律上の相続人になる人のことです。もしもの話なので、「推定」という用語を使っています。

「兄弟姉妹及びこれらの者の子以外」とあるのは、兄弟姉妹にはそもそも遺留分がありませんので適用になりません、と言っています。

 

2 この章において「旧代表者」とは、特例中小企業者の代表者であった者(代表者である者を含む。)であって、その推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者のうち被相続人の兄弟姉妹及びこれらの者の子以外のものに限る。以下同じ。)のうち少なくとも一人に対して当該特例中小企業者の株式等(株式(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式を除く。)又は持分をいう。以下同じ。)の贈与をしたものをいう。

 

「後継者」とは?

この「後継者」はちょっとしたポイントです。

株式の贈与を受けるのですが、100株のうち1株とかではダメですよ、ということが書かれています。

総株主の議決権の過半数にあたる株式の贈与を受け、

かつ、

代表者であること。

これが「後継者」の要件です。

 

3 この章において「後継者」とは、旧代表者の推定相続人のうち、当該旧代表者から当該特例中小企業者の株式等の贈与を受けた者又は当該贈与を受けた者から当該株式等を相続、遺贈若しくは贈与により取得した者であって、当該特例中小企業者の総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。以下同じ。)又は総社員の議決権の過半数を有しかつ、当該特例中小企業者の代表者であるものをいう。

 

 

「除外合意」、「固定合意」

急に難しい言葉が登場してきましたが、まったく難しくありません。

先ほども説明した、遺留分として「返せ」と言われない財産にすることが「除外合意」です。

「固定合意」というのは、ある時点で遺留分算定の基礎とされる財産(返せ!と言われる財産の元となる集まり)に組み入れる価格(正確には価額です)を合意のとき(推定相続人全員で約束するとき)の額に固定してしまうことです。

どうしてこんなことをするのかというとですね。

株式の価値が上がってしまった時でも、その株式が受ける遺留分の額としては固定されていますので、予め予測を立てることが出来るメリットが欲しいからなのです。

除外合意にしろ、固定合意にしろ、共通するのは推定相続人全員の書面による合意が必要になります。

 

(後継者が取得した株式等に関する遺留分の算定に係る合意等)
第四条 旧代表者の推定相続人は、そのうちの一人が後継者である場合には、その全員の合意をもって、書面により、次に掲げる内容の定めをすることができる。ただし、当該後継者が所有する当該特例中小企業者の株式等のうち当該定めに係るものを除いたものに係る議決権の数が総株主又は総社員の議決権の百分の五十を超える数となる場合は、この限りでない。
一 当該後継者が当該旧代表者からの贈与又は当該贈与を受けた旧代表者の推定相続人からの相続、遺贈若しくは贈与により取得した当該特例中小企業者の株式等の全部又は一部について、その価額を遺留分を算定するための財産の価額に算入しないこと。
二 前号に規定する株式等の全部又は一部について、遺留分を算定するための財産の価額に算入すべき価額を当該合意の時における価額(弁護士、弁護士法人、公認会計士(公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)第十六条の二第五項に規定する外国公認会計士を含む。)、監査法人、税理士又は税理士法人がその時における相当な価額として証明をしたものに限る。)とすること。

 

 

ここまで確認していただき、全ての要件に当てはまれば、後は手続をするだけです。

 

経済産業大臣の確認

「除外合意」または、「固定合意」をした日から一ヶ月以内に、「遺留分に関する民法の特例に係る確認申請書」を経済産業大臣宛に申請します。

 

2 前項の確認の申請は、経済産業省令で定めるところにより、第四条第一項の規定による合意をした日から一月以内に、次に掲げる書類を添付した申請書を経済産業大臣に提出してしなければならない。

 

確認を受けた後、最後にもう一つだけ手続をすれば完了です。

 

家庭裁判所の許可

経済産業大臣の確認を受けた日から一ヶ月以内に家庭裁判所に申立をし、許可を受けなければなりません。

「なりません」と書いたのは、家庭裁判所の許可が「除外合意」、「固定合意」の効力要件になっているからです。

つまり、推定相続人全員の合意を取り付け、経済産業大臣に確認申請をし、そこまでやったけれども家庭裁判所の許可が得られなければ「合意」はなかったことになるということです。

以下に条文のポイントをハイライトしました。

「心証を得なれけば」と書かれています。

逆の立場から考えてみると分かりやすいです。

事業承継を円滑に進めたい社長さんと長男からすると、全力でこの「特例」をやりたいわけです。

ですが、次男、三男にとってみれば、民法上遺留分として「オレたちの相続分をよこせ!」と言う権利があるのを奪われる、あるいは制限される場面。

次男、三男の立場からいうと、裁判所が最後の砦になるわけです、権利を奪われるかどうかの。

だから裁判所としても慎重に判断せざるを得ないし、裁判所の許可があってはじめて効力を発生しますよという法律になっています。

 

(家庭裁判所の許可)
第八条 第四条第一項の規定による合意(第五条又は第六条第二項の規定による合意をした場合にあっては、第四条第一項及び第五条又は第六条第二項の規定による合意)は、前条第一項の確認を受けた者が当該確認を受けた日から一月以内にした申立てにより、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
2 家庭裁判所は、前項に規定する合意が当事者の全員の真意に出たものであるとの心証を得なければ、これを許可することができない。
3 前条第一項の確認を受けた者が死亡したときは、その相続人は、第一項の許可を受けることができない。

 

 

事業承継対策に頭を悩ませる事業主のためにこの記事を書きました。

参考になりましたでしょうか?

難しいことが書かれていますが、内容はそれほど難しくないです。

御社の事情が法律の要件に当てはまるかどうかを判断し、定められた手続を行うだけです。

事業承継対策の一つとしてとても有効な方法なのですが、ご存知ない経営者様も多いです。

経営者様の集まりなどで事業承継対策が話題になったとき、

株式を取られない制度があるらしいよ

ぐらいのことを伝えてもらえると、この「特例」を自社に導入するキッカケになるのかなと思います。

 

行政書士阿部総合事務所

行政書士阿部隆昭

 

 

 

 

 

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