中小企業庁の委託調査結果によると、
「事業に失敗した時の世間や家族の冷たい目」という不安を起業段階で抱いているようです。
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H26/PDF/07Hakusyo_part3_chap2_web.pdf
創業支援業務をしていると、
”サラリーマンから独立しただけでも同僚や上司から妬まれているのだから、失敗したら何を言われるかわからない”
とおっしゃる創業者の方もいらっしゃるので実際も調査通りなのでしょう。
が、しかし、長いようで短すぎるワンチャンスの人生。
同僚や上司の視線を気にしている「暇」などないことは、自分の事業に一生懸命になっていれば分かるはず。
ということは、安定して継続することができる事業なのかが先ず不安に思っていることの裏返しでもあるし、成功するか失敗するのかが分からないから不安に思うことでもあるのです。
事業において、100%成功するものはごく一部の例外を除いてありません。
人が生きるうえで必ず必要になるコトやモノで、その事業者が専権を持っている事業。
これは100%成功しますよね。
そうでない限り、ほとんどの場合、市場には先達がいて、すでに成功者がいるはずです。
その状況の中から自分のビジネスを仕組み化していく。
簡単なようですが、これがビジネスのもっとも基本的なラインです。
100%成功するビジネスがごく一部である以上、私のビジネスは失敗する可能性が高いわけです。
私の場合は、現在行政書士という士業として活動しています。
”国家資格持っているからいいですよね、安定していて”
とおっしゃられることもあるのですが。
全国の行政書士が46,000人、東京都だけで6,000人の行政書士がおります。
特に行政書士という士業は、スポット業務が多く、継続的にビジネスを回していく仕組みづくりが難しいタイプの士業と言われています。税理士であれば税務顧問として顧問報酬が見込め、社会保険労務士も給与計算、年金などで同じように顧問としてのストック型ビジネスを展開することが可能です。
ですので、行政書士として起業しても失敗する可能性はもちろんありますし、他の士業と比較してその割合はむしろ高いといっても良いでしょう。
行政書士としての起業が失敗して、サラリーマンに戻ること。
全く、問題ないです。
他の事業でも同様です。
飲食店として開業したけれども失敗したから居酒屋勤務に戻る。
IT事業で起業したけれども失敗したからエンジニアとして再就職した。
事業として失敗した
と、
人生で失敗した
とは、全く違うことに事業で失敗したときには人は気づくことが難しいです。
「失敗」した、あるいは、「失敗したと思っているとき」は、様々な整理や先のことで追い込まれていますからね。
人間、メンタルが追い込まれると正常な判断力を失くします、実に簡単に失くなります。
だからこそ、正常な判断力があるうちに、事業の失敗は人生の失敗ではない、と強く意識しておき、そう考えた経験を持っていることが大切です。
その意味で、”世間や家族に冷たい目で見られる”と思っていることは大切です。
その処理方法さえ間違わなければ。
起業に失敗してサラリーマンに戻ることは恥ずかしいこともでも何でもないわけですが、実は、創業支援をしているコンサルタント側にはそれを恥だと考えている層が一定程度いるのは知っておいて損はありません。
創業支援業務として、起業家の方々と数多く面談をしていると、他の支援者の取り組み方法について教えてくださることもあります。
「他のコンサルタントはどうやっています」
と私から聞くことはありませんが、ヒアリングの最中に起業家、創業者の方から洩れ聞くことはたくさんあります。
それに対して、私からどうこう言うことはないのですが、コンサルティング、支援の仕方には色々な方法があるということは思いますね。
さらに、創業支援の在り方によっては、起業のタイミングや起業の形態なども違ってくることも感じます。
起業に失敗してサラリーマンに戻ることは悪いことでもなんでもありませんが、サラリーマンに戻るとしても、人生全体として考えたとき、起業時代に何らかの楔を打ってから次のステップに踏み出したいですよね。
創業支援とは、その楔をより深くより大きく打ち込めるように伴走することなのかなと思っています。
創業支援と資金調達に強い行政書士阿部隆昭