良いものはよいと、そうでないものはどう良くないのかをしっかりと書いたほうがいいですよね。
なんでもべた褒めでは内容に信頼性を欠きますし。
先日、東京が大雨に見舞われた日、日本政策金融公庫他の主催によるセミナーに参加しました。
タイトルは、
「ワーク介護バランス」が会社を変える!~会社と介護の関係づくりセミナー~
企業経営者、企業人事、総務ご担当の方必見
中堅・成長企業にとって、従業員とその家族の介護問題は、会社の成長を左右する重要な課題です。介護の「今とこれから」を知り、自社に適した介護支援策を打ち出していきましょう。
ターゲットにしている層といい、サブタイトルといい、介護離職問題に中小企業側はどういったアプローチが出来るのかを話して頂けるのかと思ったのですが。
セミナーなどに出席した経験がある方はおわかりだと思いますが、席に座るとたいてい配布物が机においてありますよね。
”今日はやけにたくさんあるなあ”
、と思って眺めていると、そこには、介護事業所フランチャイズ展開している事業会社のパンフが、そして主催者の日本政策金融公庫のソーシャルビジネス支援融資のパンフ。
このテーマで、なぜフランチャイズ事業の会社のパンフがあるんだろう?
そう思いました。
改めてセミナーのパンフレットをみると、その介護事業会社が協賛で入っています。
そういうわけか、なるほど!
この時点で思惑が透けて見えてきました。
このセミナーのタイムスケジュールは二部構成
一部は介護ジャーナリストの方の講演
二部は、介護ジャーナリスト、台東区役所の職員、そしてフランチャイズ介護事業会社の職員の対談
通常は、主催者が司会進行の段取りをするものですが、なぜか?、フランチャイズ事業会社の若手スタッフが進行していました。
一部について。
言わんとしていることはもちろんわかります。
ワークライフバランス、大事ですよね。
どの企業だって、ワークライフバランスを実現しようという取り組みには100%賛成でしょう。
介護離職についても、そう。
企業が行う介護支援策とは、介護の責任を果たしつつ、職場において生産性を落とさずに成果を出してもらう。
一方で、介護離職をすることは、企業において中核的人材の損失
人材を失えば、職場の生産性は落ちます。
人材を失ってもなお、生産性を落とさないためには、残された人材にこれまで以上の働きをしてもらう、もしくは会社に別な施策でサポートしてもらうしかありません。
このときに、
成功事例として、ベネッセやら大成建設などの大企業を出されてもまったく参考にならない。
なぜなら、そういった企業側の取り組みができるほどの「体力」がない会社は介護離職問題とどう向き合ったらよいのかを考えるためのセミナーのはず。
潤沢な資金がある大企業と、地場の中小企業とではまったく事情が異なるのです。
介護現場を知ってもらう意味で、という理由付けがされて、その介護ジャーナリストのご自身が親の介護をしたときのDVDが上映されるのですが、この時間が正直ムダでした。
ここに参加しているのは、介護の現場を知りたいのではなく、介護離職について考えたいと思っている人たちだからです。
そして、二部へ。
フランチャイズ事業会社の上席の方が、自社の事業内容をスライドを使って説明。
なぜFCの宣伝を15分にわたってするのでしょうか?
もちろん、そこには理由があるのですが。
ここでも、介護の現場を知ってもらう意味で、という理由付けがなされていました。
そうではなくて、中小企業でもできる介護離職に具体的な対策を知りたいんですよね。
そもそも、全体として、
スライドがひどかった。
途中のスライドもひどかったですね。
配布物としてのスライドがないので、スクリーンを見るしかないわけですが、およそどれだけ近づいても文字がわからないほどの細かいグラフがたびたび登場してきます。
どれだけ目を凝らしても参加者には見えないわけです。
私もセミナーのためにパワーポイントでスライドを作りますが、上映したときにどれだけ分かりやすいものになっているかがとても気になります。
なぜなら、参加者に私の言いたいことがしっかりと伝わって欲しいから。
逆に参加者にとって極端にわかりにくいスライド資料を作るということは、結果的には、参加者の方を向いたセミナーになっていないという判断にもなります。
自分自身に対する自分のためのセミナーなので、見た時にどう写っていよう関係ないわけです。
配布物としてのスライドは配ったほうが親切でしょう。
特段、秘密にしなければならないノウハウはないですし、何よりも参加してくださった人に対してそのほうがずっと優しい。
企画の立て方が間違っている。
フランチャイズ事業を始めるにあたっては加盟金等の初期投資がかかります。
介護事業を始めることはソーシャルビジネスになりますので、日本政策金融公庫の融資が受けられます。
であれば、もっとストレートに、ワークライフバランスと介護をからめずにセミナーを企画立案するべきでした。
このタイトルでは、介護離職について考えようと思う人は来ますが、融資を受けて新たに介護事業を始めてみようと思っている人は来ないでしょう。
であるならば、セミナーを企画した趣旨は達成出来ないことになります。
なぜかというと、
バックエンドで公庫に申込をして協賛のフランチャイズを始めます!という人が現れこそミッションが達成するセミナーだからです。
あの雨の中、行かなければよかったというのが正直な感想ですが、セミナー開催する側として勉強にはなりました。