平成29年には東京都北区の高齢者人口(65歳以上)はピークを迎え、85575人となります。
同時に高齢化率も27%
4人に1人以上が65歳以上の高齢者。
高齢者夫婦の二人世帯も増えています。
配偶者なき後問題、という問題があることはご存じですか?
ご主人が先に亡くなった後に遺される高齢の奥様の面倒は誰がみてくれるのだろう
という問題です。
この状況で、例えばですが、
そう遠くない場所に住む甥っ子に、いくらかのお金をあげる代わりに自分が先に死んでしまった後に遺される奥様の面倒をみてもらう
難しい言葉でいうと、この行為は「負担付贈与」、とか「負担付遺贈」といいます。
「負担」というのは、奥様の面倒をみること。
その代わりに、お金をあげるのです。
面倒かけるから、お金で勘弁して!
事情はよく分かりますよね。
他に頼りになりそうな方がいない場合にはある意味仕方ありません。
負担付贈与や負担付遺贈の手続きを支援している多くの専門家は、契約書や遺言書を作ったその後の話まで知ることがありません。
たまたま私は、以前から高齢者を対象として地域ささえあい活動にも取り組んでいるおかげで様々な情報が入ってきます。
数名ですが、過去に負担付遺贈を経験されたご家族から話しを聴いたことがあります。
その現実は、
お金だけ使って、奥さんの面倒なんかみやしない
もちろん、法制度としては、負担した義務を履行しない場合には履行の催告をしたり、遺言の取り消しを家庭裁判所に請求することも出来ます。
なのですが、現実にそこまでやる方はごく少数でしょうし、そもそも遺言の取り消しの制度があることなんて一般の方は知りません。
遺言者や贈与者であるご主人の意思は無視された格好になります。
誠実な甥っ子さんもいるでしょうが、中にはそういった事例があるのは事実。
甥っ子さん側の弁護をすると、
簡単に介護などの面倒を引き受けてしまったけれど、実際にはとても難しかった
というのが本音でしょう。
こういった事情を考慮すると、配偶者なき後問題対策としての「負担付贈与」や「負担付遺贈」には不安な面が多く残されるのです。
家族信託では、確実に遺された配偶者のために使う財産を長期間に渡って管理する制度を組むことが可能。
さらに、家族信託では、受益者である遺された配偶者の権利利益を保護するための制度や規律が確保されていること大きな安心につながります。
このように、信託は従来の制度では成し得なかったことが法律的な枠組みの中で確実に出来るのが魅力です。
複雑な契約にはなりますが、そもそも依頼者の方が欲しいのは「安心感」だとすると、信託ほど適した仕組みはありません。
といっても、万能ではないのは信託も遺言も一緒。
高齢者夫婦世帯で、遺された配偶者の生活支援が心配な方は、信託という仕組みがあることもぜひ知っておいてくださいね。
5月18日に開催される家族信託講座は、精神障がい者や知的障がい者、発達障がい者のお子さんをもつご家族向けの内容ですが、今後は「配偶者なき後問題としての家族信託」講座の開催も予定しています。
信託の基本的な仕組みについても解説しますので、ぜひ皆さんでいらしてください。
行政書士阿部総合事務所
行政書士阿部隆昭