サラリーマンを辞めて起業しようと思ったとき、最初に迷うのが事業主体の形態をどうするか?
個人事業主でとりあえずスタートするのか、株式会社、合同会社等の会社組織を作るのか?
それぞれにメリットとデメリットとがあります。
そのうちの一つ、資金調達の場面について過去の実例を交えながら説明しましょう。
・個人事業主は、金融機関の融資審査のハードルが高い
以前、複数のメガバンクの融資担当者から聞いたことがあります。
借入の申込人が個人事業主であるというそれだけで、もうバイアスが掛かってしまうとのこと。
といいますか、
貸出先の大前提として、会社であることが前提なので、個人というだけで審査が格段に厳しくなる。
”そもそも個人にカネを出さないメガバンクだからそうじゃないの”
と思われるかもしれませんが、信金、信組でもおおよそ同じです。
金融機関からすると、個人事業主と会社とでは、比較にならないほどイメージが違うのです。
「融資」がしやすくなるといった面から言えば、圧倒的に会社組織のほうが有利でしょう。
・助成金のボリュームが狭いのは個人事業主
起業する方の中には、公的機関からの助成金や補助金の給付を資金計画に入れているかたも多いでしょう。
助成金についても個人事業主は不利。
株式会社等に比べて、受けられる助成金の対象数も額も少ないのが現実です。
・個人事業主に比べ、会社は資金調達の手段が拡がる。
個人事業主の場合には、金融機関からの融資や助成金などしか目立った資金調達の手段がありません。
元々厳しい目でみられる個人事業主ですから、いくら将来性があったとしても融資担当者等を納得させ融資を引き出すのは大変。
もちろん、株式会社だから借入もラクラクなんてことはありません。
が、しかし。
株式会社には、株式の発行という資金調達の手段があります。
他にも、新株予約権の発行や社債を発行したりと多彩。
私の知っている会社のオーナーは、信用の基礎がない駆け出しの頃、様々資金調達に失敗し、最後には株式を発行し、知人に買い取ってもらい、ある程度まとまった金額の資金調達を実現しました。
都内のある繁華街の小さなちいさなお店だったのですが、今ではその分野で知名度のある立派な繁盛店に成功しています。
金融機関も公的機関も誰も認めなかったけれども、その人個人の将来性を信じ、投資をした人がいたからこそ現在の彼があるといってもよいでしょう。
当時、投資をした人の気持ちとすれば、お金を貸すのではない、将来大化けするかもしれない会社に投資をするのだから、支援しやすいといった感情もあるようでした。
どんな親しい仲でも、お金の貸し借りの関係を作るのはイヤですよね。
でも、株式を引き受けるということで会社の資金になるのであれば、お互い納得できると思うのです、それがたとえ戻ってこないことになったとしても。
資金調達の手段が拡がるのも会社組織にするメリットです。
・まとめ
個人事業主は、事業性個人とされていても、所詮は個人です。
一定の維持管理コストは必要ですが、株式会社等の会社組織には個人事業主には持ち得ないメリットが沢山あります。
自分自身のロードマップをよく考えながら、起業の際の組織形態を考えたいですね。
行政書士阿部総合事務所
行政書士阿部隆昭