子どものとき、
学校終わりに校庭開放で遊ぶ約束を忘れてしまったとしたら。
今度コレあげるよ、って約束したコレをあげなかったらとしたら。
そのペナルティは、給食の一品を差し上げる、とか、仲間の遊びに誘ってもらえない等、他愛もないものでした。
誰にでも思い当たることがあるでしょう。
大人になっても、約束をしなければならないときがあるのは子ども時代と同じです。
マンションを不動産業者から買うときには「不動産売買契約書」
アパートを借りるときには、「賃貸借契約書」
親が子に金銭をあげるときには「贈与契約書」
AさんがBさんに財産を預けて管理してもうら場合には、「信託契約書」
もう、きりがありません。
ただ、大人同士の約束と、子ども同士の約束とでは、決定的に違うことが一つだけあります。
それは、
約束違反のペナルティが違う。
大人同士の約束のことを、一般に「契約」といいます。
契約違反は、全てカネに換えて決着をつけるのが、大人同士の、そして日本のルール。
(債務不履行による損害賠償)
民法第415条債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
(損害賠償の方法)
民法第417条 損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。
だからこそ、契約は、紙に残さなければならない。
なぜか?
「言った」、と言わせない。
「言ってない」、と言わせない。
究極的にはこのためだけに契約内容を表した「紙」は存在します。
「言った言わない」という例のアレのことです。
モチのロンですが、契約は口約束でも成立します。
成立しますが、「言った言わない」問題は相変わらず残ります。
「言った言わない」問題を払拭するには「紙」にするしか方法がないのです。
(※電子文書といったものでも効果は同じです。)
つまり、
契約当事者が考えている重要な内容を可視化したものが契約書
といってもよいのです。
さて、問題はここからです。
「紙」として残さなければいけないのは分かりました。
では、何を残すのか?
契約、約束した内容を何でもかんでも「紙」に残せばいいというものではありません。
例えば。
AさんはBさんに、平成28年1月6日、Aさんの土地を売りました。
最初、高いと言ってゴネられましたが、結局金額をオマケしてあげたので、最終的には500万円になりました。
支払い方法も手付として100万円、あとは登記の時に残金をもらう約束をしているのですが、本当に払ってもらえるか不安で仕方ありません。
”こんな契約書あるわけないでしょ?笑”、と思われる方も多いでしょう。
いやいやコレがですね、現実に結構あるんです。
もちろん、このような文章ではありませんよ。
よく読むと、”言っていることが分からない”、”何をしたいのか分からない”、そんな契約書は実は少なくないのです。
不動産業者を始めとして企業が使用している約款等の契約書は通常、リーガルチェック等で精査されており、幅広く流通しているので問題ない場合がほとんど。
しかし、以下のような場合には、契約当事者が事実と違ったり、責任の所在があいまいであったり、契約書とした意味さえないものも存在します。
・第三者との売買ではなく、親族同士の土地売買だからと、インターネットで見つけた雛形に当事者の名前を入れただけのもの。
・新たに取引を始める企業との間で必要になった業務委託契約書をインターネットの雛形を参考にしたため、不備だらけの契約書と締結してしまった。
私たちは、仲が良いから喧嘩になることはない。
だから、契約書なんて適当に作っておけばいいんだよ。
といったことが通用しないのは、オトナであれば分かることです。
しっかりと作られた契約書は、トラブルを防止する機能さえあるのです。
大人同士の約束は、しっかりと「紙」で残しましょう。
行政書士阿部総合事務所
行政書士阿部隆昭