本格的に事業を開始しようと思ったらまず揃えたいのは権利義務に関連する書類関係。
すいません。権利義務などと難しい言葉を使ってしまいました。
例えば、自社が使用しているオフィスをセミナー会場としても他人に開放し、それでいくばくかの報酬を得ようと考えたとしましょう。
シェアオフィスをレンタルするための契約書をインターネットから引っ張ってきて自社の名前だけを入れ込み、さあ完成!
専門家に依頼すれば契約書作成報酬が必要になります。当事務所の場合には、特別の場合がなければ原則100,000円(税別)の報酬を頂いております。
100,000円!!
高いですよね。
インターネットで検索すれば、契約書作成報酬20,000円という専門職も見つかるでしょう。私、行政書士阿部隆昭の場合には、100,000円分の価値があると考えているからその価格設定なわけでして。別に、2万円なら2万円で設定する専門家がいてもいいわけです。
いずれにしろ、インターネットで契約書のひな形をコピーするだけなら完全無料、0円。
ですが、それでいいんですか?
という問題です。
いや、問題を問題と感じないのであれば、その人にとってはそもそも問題でさえありません。
しかし、私たち専門職の場合には、やはり、どうしてもそれは問題ですよ、とお伝えしなければならないわけです。
何が問題なのかと言いますと。
先ほどの例で言えば、自社が使用しているオフィスをレンタルする際の契約とのことですが、そもそもレンタルできるのですか?という問題をクリアする必要があります。
そのオフィスを使用しているのであれば、所有権(使用、収益、処分の権利を持っている万能の権利)なのでもちろん貸し出すことは可能です。
しかし、借りているオフィスの場合はどうでしょうか?
借りている当事者会社が使用していない日時や期間がもったいない。それなら誰かに貸して報酬を得てしまおう。
考えるのも無理はありません。
ですが、これはまず無理、できない。
なぜかといいますと、借りているものを更に貸し付けることは難しいからです。
空いてる貸せばいい
そんなもんじゃないわけですね。
借りている人が更に貸し出すには、元々の貸主の承諾が必要になる場合があるのです。
あなたがオフィスを貸している当事者だと考えてみてください。借りている当事者ではないですよ、貸している当事者です。
そもそも賃貸借(貸して、借りての関係)は継続的取引が予定されています。一日だけではなくて、オフィスなら二年間とか続けて貸しますでしょう。長期間に渡って、貸し借りの関係が続くので、信頼した相手に貸したいと思いますよね。
Aさんが持っているオフィスを、この人ならと思って貸したBさんが、実は、Aさんが知らないところでCさんに貸して、Bさんが報酬を得ていた
という状況は通常、許されないわけです。
そもそも許されないものを契約書として作り上げたところで、無効な契約です。確かに、インターネットからコピペした段階では無料で契約書が作れましたが、トラブルが発生した際にはもっともっと大きな金額を損害賠償として払わなければならない可能性があるのです。
であれば、2万円、10万円の契約書作成費用など安いものでしょう。
私がデパートでメガネを販売していた時。この業界に入る前ですから20数年前のこと。
高額のメガネを販売する際には、日割りで計算してもらうことをし、また、コーヒー一杯の値段でイメージしてもらうことをしていました。
メガネフレームは大抵3年程度は持ちますので、3年間、ざっくり言って、価格を1000日で割ることで高額な買い物をした感覚を薄めていました。
30万円のメガネでも1000日で割れば、一日300円。300円といえばコーヒー一杯分ですよね、と。
契約書の場合には、◯年使える、と言ったものではありませんが、当事者双方の信頼を確保し、無用のトラブルを避け、損害賠償リスクを軽減し、将来的に支障がない事業運営に役に立つ。
といったように、計り知れないメリットがあるわけです、契約書には。
ですので、私に関わってくださるクライアントさんには、契約書は作った方がいいと説明し、インターネットでコピペした契約書は無駄だと説いています。
それでもですね。
「トラブルはないと思うので、インターネットのひな形で十分です」
と言われれば、それはもう仕方がありません。
一緒にそれをすることはありませんが、事業者様の幸運を祈るほかありません。
しかし、いつも不思議に思います。
契約書ってなぜ自分たちで作れるって思うのだろう。
なぜ、インターネットのひな形で十分だと思うのだろう。
なぜ、それを実行してしまうのだろう。
契約書を作るのって専門的な作業です。
スポーツ選手が練習して練習して練習しまくって記録を出せるのと同じように、法律の勉強をし、実務感覚を磨き、いくつもの練習をしたからこそカタチに出来ている訳であって。
誰にでも出来ることではないのですよ。
解決支援コンサルタント行政書士阿部隆昭