日々の営業努力の末に勝ち取った新規取引先。
円滑な取引を続けるためには、口頭で合意した内容を書面にしたほうがいい、ということは皆さんご存知だと思います。
自社で業務提携契約書を内製される企業様もあると思いますので、業務提携契約書を作るときにコレだけは入れて欲しいというポイントを一つだけ書いてみますね。
先日も業務提携契約書のリーガルチェックのご依頼を頂いたのですが、この条項がまるごと欠落していたのでご指摘させて頂きました。
業務提携契約書を作るときにコレだけは入れて欲しいと考えているのは、「情報管理体制」に関する条項です。
業務提携契約書の超重要ポイントは、情報管理体制に関する条項を入れること!
業務提携の場面では、双方の営業秘密に関する情報を共有することが多い。
A社が取得した情報をB社と共有するときに、どのようなルートで情報が流れるのか?
A社、B社の情報管理部門は誰なのか?
情報漏えいがあった場合、A社、B社の責任負担はどうするのか?
業務提携が終了した後は、既に取得した情報はどうするのか?
といった情報管理の条項を定めることが大切。
業務提携の場面では、収益が発生する具体的な内容について合意して終わりになってしまうことがとても多いのです。
情報管理体制の定めは、いざ問題が起きたときの備えとして定めるので皆さんあまり着目されないんですよね。
特に、契約当事者のパワーバランスが対等ではない場合に疎かになりがち。
”暗黙の了解”、”当然A社が責任を負担するものだと思った”
といったことは企業間の取引では通用しません。
コラボセミナーを企画する際の情報管理体制も気を付けて!
いざトラブルになったときは知らなかったでは済まされません。
また、小さな事業者ほど受けるダメージも大きいので注意が必要です。
個人事業主三人XYZが集まってコラボセミナーを企画したとしましょう。
この事例、全く可能性ナシですか?どうですか?
参加申込みの窓口はX
Xが参加者情報をCCでYとZに送信!
そのつもりが、全くの第三者G社にも送信してしまった。
G社から後日、参加者宛に不審なメールが届き、添付ファイルを空けた参加者の一人がウイルスに感染し、PCの全ファイルが破損した。
この場合、YとZは直接の送信者ではないので無関係ですか?
参加者が受けた損害はXだけが責任を負担するのでしょうか?
このような事態になったら、もうXYZの関係性も一瞬で壊れてしまうでしょう。
業務提携契約書があればトラブルは防げたのか?
さて、ここで考えたいのが、業務提携契約書をXYZ間で作っていたらトラブルは防げたのか?という問題です。
防ぐことは出来ません。
これが正しい答えです。
しかし、トラブルの発生を抑えることはもちろん可能です。
というのも、業務提携契約書の中で情報管理の規定が存在すれば契約当事者はそれを意識した行動を取ることが期待できます。
無意識にメールの送信先を選ぶ場面でも、より慎重に送信先を選ぶでしょう。
ヒューマンエラーを防ぐことは可能です。
実際にコラボセミナーを企画する場合に、業務提携契約書を交わすほうが稀ですが、意識の問題として頭の隅に入れておいたほうがいいと思います。
せっかく築き上げた関係が壊れるのはお互いに残念なことですので。
コラボセミナーを離れて、企業間の取引の場合でも同じことがいえます。
継続的に業務提携をしようという合意がなされれば、書面にせずにGOを掛けるのはむしろこの場合は稀ですね。
専門職に依頼すると費用がかかるということでインターネットに落ちていたテンプレートをそのまま使うという企業様もいらっしゃるでしょう。
インターネットのテンプレートをそのまま使ってもOKというケースはほぼゼロです。
自社で業務提携契約書を内製するのも構いませんが、今回書きました情報管理の問題以外にもたくさんあるリスクを丸抱えしている状態だということは知っておいたほうが良いですね。
解決支援コンサルタント 行政書士阿部隆昭