私のお客様からの依頼で老犬の将来の暮らし方を考えていました。
老犬ともなると、里親探しをしてもそうそう引き取り手は現れず、また、犬種によっても差があるとのこと。
飼っているペットを手放すということはそれぞれ事情があると思います。
ですが、もっとも心配していることは?
自分の手を離れた後も楽しく暮らしていけるのだろうか?
里親に預けたはいいが、そこで虐待などされてはこまりますし、老犬ホームに入れたとしてもその心配はなくなりません。
良くしてもらいなさい、
と期待を持って送り出す以外にないでしょう。
そうではないもう一つの選択肢として注目されているのが、
ペットの飼養を目的とした信託契約
契約ですので、約束する人は、今の飼い主と将来の飼い主の二人。
何を約束するのかというと、ペットの飼育に関することです。
といっても、無償では将来の飼い主が大変です。
特に老犬の場合には動物病院に通ったりと何かと費用がかかるもの。
ペットの飼養を目的とした信託契約が優れているのは、里親や老犬ホームなどと違って、ペットの円満な将来を確保しやすいということ。
また、費用や報酬が支払われるので、将来の飼い主も安心であること。
さらに、将来の飼い主がちゃんと飼っているのかどうかは信託監督人が管理できること。
ペットの飼養を目的とした信託契約のメリット
1.新しい飼い主に、費用及び報酬を定期的に支払うことができる。
(一度にもらってしまうと、その後、満足な飼育をしてもらえないかもしれません)
2.あらかじめ約束した信頼できる人に飼ってもらうことができる。
(老犬ホームや里親の善意に頼ることがありません。)
3.ペットの将来を第三者が監督することができる。
(預けっぱなしを防ぐことができます。)
では、具体的に考えてみます。
飼い主:一人暮らしの父親A
ペット:老犬
監督する人:Aの娘X
里親探しも難しく、老犬ホームに入れるにも費用がかかるので現実的ではない。
このような状況で考えられる手続は以下のようになります。
親戚でも知人でも誰でも良いので飼い主となってくれる方を探すことから始めます。
将来の飼い主をBとしましょう。
老犬の飼養を目的としてAとBとで信託契約を締結します。
↓
老犬の引渡し、信託財産(金銭等)の移動
↓
信託監督人の管理
信託監督人であるAの娘さんXが、老犬がちゃんと飼養されているかを管理することができるのがペットを目的とした信託契約の最大のメリット
問題が一つだけあるとすれば、信託契約が複雑であること。
信託契約には、
委託者(お願いする人)
受託者(お願いされる人)
受益者(利益を得る人)
の三当事者が登場します。
あまりなされない契約であるために、信託に詳しい専門職もごく少ないのが現実。
知識として知っていはいるけれども、実務はやったことがないという専門職も多いです。
私は、修行時代から不動産管理処分信託契約書を100件以上作成し、
現在の信託法になる前の旧信託法時代から信託に取り組んで参りました。
行政書士阿部隆昭は、ペットの飼養を目的とした信託契約に限らず、
家族信託や不動産管理処分信託、金銭信託、遺言代用信託など、信託契約に精通しております。
専門家に相談したけれど、自分の希望を叶えるようなアイデアをもらえなかった。
家族関係が複雑だが、円満に資産の管理や承継をしたいと考えている。
そういった事情を抱える方は信託制度を利用することによって解決する可能性があります。