【超簡単家族信託】WEB講座シリーズ18回目は、信託法の改正によって新しく認められた信託に関する機関である「信託監督人」を概観してみます。
最初に信託のおさらいをしてみましょう。
信託とは、財産を持っている方が、その財産の管理や処分を目的として第三者に預ける仕組みでした。
その過程で信託の利益を受ける人も登場してくるわけです。
財産を預ける人を信託の「委託者」
預かった財産を管理する人を信託の「受託者」
信託の利益を受ける人を、「受益者」
と以上のように呼ぶことになっています。
信託には、委託者と受託者と受益者の三人の当事者がいることが原則でした。
今回勉強する「信託監督人」は、これらの三当事者ににプラスαとして機能を強化するために設置された機関と考えてもらって構いません。
「信託監督人」とは、信託財産が信託契約等で定められた目的に従って管理・運用・処分がなされているかどうかをチェックする機関
信託監督人の役割を成年後見制度と比較しながらみてみましょう。
成年後見制度は、監督機関として家庭裁判所の役割が強大であることがメリットの一つとして挙げられます。
本人の財産管理といった側面では信託も成年後見制度も同じような機能を持っていますが、信託には制度的に監督機関が存在しません。
この【超簡単家族信託】WEB講座ではあまり登場しませんが、商事信託では金融庁の強い監督を受けますが、家族信託に代表される民事信託ではその監督機関が存在しないことが問題点とされていました。
不動産や金融資産など高額な資産を第三者に預けるのに、その後のフォローがない状態だったのです。
悪いことを考える受託者が存在した場合、不正行為の温床となる可能性もあったのです。
民事信託(家族信託)は、成年後見制度と違って家庭裁判所の監督が働かない。
民事信託(家族信託)は、商事信託と違って、金融庁の監督が働かない。
そこで、これらの状態を解消すべく新信託法で設置されたのが信託監督人でした。
受託者本人は親族などになってもらい、受託者の行為を専門家が監督する仕組みを作ることで安心して委託者は財産を預ける事ができるのです。
(信託監督人の権限)
第百三十二条 信託監督人は、受益者のために自己の名をもって第九十二条各号(第十七号、第十八号、第二十一号及び第二十三号を除く。)に掲げる権利に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
2 二人以上の信託監督人があるときは、これらの者が共同してその権限に属する行為をしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
次回の【超簡単家族信託】WEB講座19回目では、信託の機関として新しく登場した「受益者代理人」の役割について考えます。
行政書士阿部総合事務所
行政書士阿部隆昭