【超簡単家族信託】WEB講座シリーズ22回目は、直近で相談をいただいた事例を守秘義務に配慮しつつ悩みを抱える方々の参考になる程度にお伝えします。
相談者は、知的障がい者のお子さんを持つ50代のお母様。
ご主人を早くに亡くされているので、ご家族は、お母様とお子さん三人
お母様
長女:知的障がい者
次女:既婚者
三女:既婚者
お母様の心配は、自分が認知症や病気になった後の長女の世話を誰がするのかということ。
また、死亡してしまった後の相続財産は、娘三人に均等に相続させるのではなく、長女に多く配分したいという希望も持っていらっしゃいました。
既に嫁いでいる次女、三女はお母様の希望について理解を示しています。
以上のような状況でどのようにして長女の将来の生活の安定を図るのか。
なかなか悩ましい問題です。
遺言書だけでは長女の生活は不安
お母様が遺言書を書き残すのが一般的な相続対策として考えられます。
お母様の遺産が現預金と自宅マンションのみだったとして。
長女:自宅と現預金の2/4
次女:現預金の1/4
三女:現預金の1/4
次女、三女よりも多くの遺産が長女に相続されるのでお母様の希望は叶ったと思います。
ですが、自宅不動産の管理や、生活資金としての現預金を適切に支出することを知的障がい者である長女には期待できません。
不動産や預金などの財産だけを渡すだけではなく、それを適切に管理してくれる仕組みが必要なのです。
今まではお母様がやってくれことを、お母様のなき後に長女の生活のために誰が代わって事務を行ってくれるのでしょうか?
次女も三女も既に嫁いでいます。
もちろん、年に数回、様子を見にいくことは不可能ではないでしょう。
しかし、お母様が心配しているのは、自分が長女の世話をしてきたことと同じようなサポートが出来るかどうか。
家族信託であれば、お母様の不安も解消できる
このような状況のときに家族信託の仕組みを活用することが可能です。
まさに、「親なき後問題対策としての家族信託」です。
この【超簡単家族信託連続WEB講座】をお読みの方でしたら、信託の三人の当事者を言えると思います。
信託の当事者は、委託者、受託者、受益者
さらに、それらの役割も言えますよね?
委託者は、財産の所有者
受託者は、委託者の財産の管理処分をする人
受益者は、信託の利益を受ける人
相談事例の当てはめてみます。
委託者:お母様
受託者:◯◯
受益者:長女
ご兄弟がいらっしゃる親なき後問題対策としての家族信託では、多くの場合障がい者ではないご兄弟の誰かが受託者となる場合が多い。
しかし、この場合の兄弟姉妹は、お二人とも嫁いでおり、別のご家庭を持っています。
長女のために信託事務を実行出来ることが期待できないという結論になりました。
家族信託の仕組みはもう少しのところで完成しそうなのですが、信託の要である受託者の選定に難航しそうです。
見解の相違はあるのですが、現状、専門職は受託者となることができないとされています。
受益者である長女の権利擁護を図る立場の受益者代理人や、受託者が信託事務をしっかりと行っているかを監視する信託監督人には専門職がなることは出来ます。
が、信託業法との絡みもあって、受託者そのものには専門職がなることが出来ないのです。
今回の場合は、受託者としての一般社団法人を設立するなどして家族信託スキームを成立させるかを引き続き検討することになりました。
お母様にとっては、不安の残る相談となってしまったかと心配したのですが、解決方法の道筋が見つかっただけでも気持ちが和らいだと仰って頂きました。
八方塞がりの真っ暗闇の道では人は絶望しますが、遠くに灯りが見えるだけでも前進しようと思います。
専門職は、その歩みをサポートするのがお仕事。
そう思っています。
行政書士阿部総合事務所
行政書士阿部隆昭