東京都行政書士会の広報誌「行政書士とうきょう」9月号で会議通訳者の長井鞠子さんのインタビューが掲載されています。
記事によると、長井さんは会議通訳者としてダライ・ラマ14世、ホーキング博士、ヨーヨー・マ、アシュケナージなどの世界で活躍する数々の要人の通訳を行ってきたという。
長井さんの通訳の守備範囲は、広く浅く。
通訳というと、それなりの専門用語も各分野ごとに多くあり、間違いのない通訳をこなすためには分野は偏りそうなものですが。
仕事のたびに必ず手書きの単語帳を作って専門用語を調べ、簡単な単語であっても会議のキーワードに目を配り、さらに、専門知識や個別の予備知識、発言者のプロフィールの収集には時には夜を徹して行うのだという。
ウィキペディアによると、長井さんは1943年生まれ。
年齢とは関係ないと言われてしまいそうだが、それでもプロフェッショナルの仕事ぶりは正直すごいと思った。
意外だったのは、通訳にあたって表現者としての立場を意識しているということ。
発言者を引き立たせるためになるべく目立たないようにするのが通訳者だと思っていたんですが、長井さんは違う意識をもっているようです。
6歳から始めたヴァイオリンを人前で演奏するときと同じように、「私の通訳を聴いて」と表現者の立場に自分が意識するという。
黒子に徹するだけでは、魅力的な通訳はできないということなんだろう。
また、通訳の現場では、「ボキャブラリーはそれまでの人生の経験値に比例する」とのこと。
性別によって実力差がなく、逆に、「女性通訳がこの場にいてくれるから柔らかい雰囲気になってよかった」と日米貿易摩擦交渉の現場で言われてこともあるという。
英語が好きだから通訳が出来るのかというと、どうもそうでもないらしい。
「人間に興味があるという性質は基本的に通訳者向きなのでしょう」、と自身のことを分析。
「目の前の人にどこまで寄り添えるかしらといつも考えてる」とおっしゃるように、単に英語が得意だから通訳者になるのではなく、世界の様々な人々と関わっていきたいと思った時に、会議通訳者という職業が選択肢に浮かんでくるんだと思う。
東京都行政書士会の広報誌なので一般の目にふれることはないと思いますが、最近上梓された『伝える極意』により詳しく書かれていると思うのでそちらをご覧いただくといいと思う。