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「どうだい?、ちょっとだけ私の話しを聞いてみませんか?」→頑張ることはたった一つ|行政書士阿部総合事務所

September 5, 2014
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約 9 分

 

あるセミナー終わりの駅までの帰り道。

「どうだい?ちょっとだけ私の話しを聞いてみませんか?」

と言われて驚きました。

 

普通だったら相手にもしないこんな突然のオファーに応じてしまったのは、いくつか原因があります。

 

歩道がとても狭くて、横道に逸れたかったから。

セミナーに登壇したコンサルの話しに共感できる部分がほとんどなく、「結論として必要なのは『人間力』です」と言われ、抽象的すぎるなあと呆れたから。

 

その方の家に付いていくのはさすがに無理なので(当然か)、近くのカフェへ。

「勉強になりましたか?」

 「いや、正直期待したほどでは、なかったです。」

 

 

 

 「えっと、何のお仕事をなさってる方ですか?」

「仕事といえるかどうか。ノウハウを教えています」

 

といって差し出された名刺には、名前しか書かれていない。

連絡先も肩書もなにもない。

実績やらアピールするものが裏面にもない。

名刺というよりも、名前だけが書かれた紙。

サイズ的には、名刺だから、まあ名刺です。
 

まあまあ、突然話しかけてくるぐらいだからとこれかなって予想したんですが、その通りになったかな。

次には、自分が主宰しているマーケティングセミナーのパンフか、ネットワークビジネス?、有り得ないほどキレイになる洗剤の実験とかこの場でやり始めたりしないよね?

 

あと30分ぐらいだったら付き合ってやるか。

 

「そうなんですか、そのノウハウっていうのはビジネスとか起業に関連してるんです?」

 

出席したセミナーが起業がテーマでしたからね。

しかし、起業セミナーの結論が「人間力」です!って言われてものね。

もっと、再現性の高いノウハウがあったりするとよかったのに、と思いながら。

ノウハウ?

 

 

「そう。ビジネス、かな。今のところ、知り合いだけにしか教えていませんが。」

 「ほー、どんなジャンルのノウハウなんです?、それは教えられないとかですか?笑」

「もちろん、教えられるよ、ノウハウだから教えられる程度に確立している。ただ、高いかもしれませんよ笑。」

 

ほらね、やっぱり。

ビジネスのノウハウ教えるから、おカネください!って話ですよね。

もう、このあたりで完全に脳内ブロックされていて、後はどうやって席をたつキッカケを作るかだけに意識を向けたんです。

 

こんな感じの短い会話ですが、ここまでで結構な時間がかかっています。

私の返事に対する相手の答えが遅いから。

時間がかかるんですよ。

その方は、50代後半ぐらいかな。

スペシャルなノウハウがあるとはとても思えないような風体。

小奇麗な身なりなんですが、ギラついた感じは全くなく、マルチレベルマーケティングなんてやってなければ普通のいいおじさま。(まだ、マルチだと決まったわけじゃないですが)

 

 

 「高いって、ちなみにいくらなんです?」

「60」

 「60万?」

「そう」

 「お知り合いにでも、60?」

「そうだな、知り合いだからとか意識したことないけど、60、みんなからもらってる」

 「すごいですね」

「すごいって、何が?」

 「いやだって、60払ってノウハウ買って、ペイできるほどのものがあるってことですよね?」

「ペイしてるかどうかは知らない。ただ、その後感謝の言葉をもらうから成功しているってことだろう。教えたあとに、どうなろうと正直興味がないしね。一度、伝わったら、後は自分一人で進められるものだから、巷によくある継続してフォローしますなんてことはやらない。」

 

WEBコンサルなんかだと、60は別に珍しくないけど、何のコンサルだか分からないし、伝えるノウハウが一回きりって。

ブルーオーシャンの紹介?

胡散臭さ満載なんですが、不思議とその先の話しを聞いてみたくなるのは、その人の持っているナニカなの?

 

 

 「なんだかすごいけですけど、ちょっとコワイ気がしますね笑」

「怖いって、どうして怖いと思います?、怖いって言われたのは初めてですが」

 「いやだって、60振り込んで、送られてきたのがA4一枚のペラ紙だったら困るじゃないですか笑、あっすいません」

「A4一枚の紙だけに収まる60の価値があるとしたら?」

 

ん?目の前にいる人は、もしかしてものすごい大物?

言っていることは確かにその通り。

PDF300ページ分のノウハウが詰まっていますという怪しげコンサルの情報商材がすごいわけは全くなく、

たとえA4一枚でも、そこから生み出されるものがものすごいものであれば、収まっていても何の不思議はない。

 

「確かに、そうですね。」

 

確かにそうですねっていうのが適切な相槌なのかわかりませんんが、まあそう言うしかなかったわけで。

 

「今日のセミナーは、どうして参加されたんですか?」

 

いや、そもそもですよ。起業のノウハウ教える無料セミナーに、大物が参加していること自体おかしくないか?

必要ないよね。

 

「無料だったからだよ」

 

当たり前じゃないかって感じでそう言うんですが。

無料だから来るってこの人、ホントは儲かってなんかないんじゃない?

 

 

 「はあ~。でも起業とかあまり必要なさそうにみえますけど。新たに事業をやりたいとかですか」

「そうだな~」

 「そう、なんで僕にその特別なノウハウの話しをしようと思ったんです?」

 

 

人間、何が琴線に触れるか分からないもの。

言わんとしていることもそれなりにわかるし、方向性も見えたので、そろそろ席を立つために言っただけの言葉だったのですが。

 

 

「今日、無料だろ?」

だろ?って、なんか気に障ること言っちゃったかな。今までと違うんだけど。

 

無料のセミナーに来るってことは、タダで自分の欲しいものを手に入れたいってワガママでずる賢いやつなのよ、来てる連中はね。

タダほど怖いものなんてない、って言うだろ。

コワイとか、コワくないとかの話じゃないんだよ。価値があるかどうかなんだ。

価値があるものには、それなりの値段がついてる。

市場原理とかそんな難しいことじゃない、当たり前のこと。

小学校の頃、休んだ日のノート借りたら、給食多めにやるとかさ、あるだろ、あれとおんなじ。

なんでもないことでも、全てに値段が決まっている。

さっき、60高いって言ったろ。

60はオレが付けた値段じゃない。

これを欲しいといったほうが付けた値段なんだ。

60はね、安いんだよ、人によっては。

あるものの価値は、可変でその人だけが価値を決める。

私のノウハウが100円の価値しかないと思う人の数が多ければ、ずっとそれは100円。

でもな、それが、1万の価値があるって思う人が増え、10万払ってでも手にしたいという人がどんどん増えていった。

そうした結果、私のノウハウは60になった。

それだけ。

今日、タダだよね。

無料で提供しているものに、それ以上の価値があると思うかい?

考えてみてごらんよ、無料のセミナーってことはそこで提供される価値は、それこそチラシに載せてアスファルトの上で踏みつけになっても本望ですと言ってるようなもんだよ。

他のメンツみてみたか?

みんな、タレ流れる言葉をあほーんとした顔をして聞き流してたろ。

メモしているやつもいたけど、そのメモは二度と開かない。

ここに来ているメンツは、明日も明後日もセミナーに行く。

なぜだかわかるか?

セミナー受ければ自分が前に進んでいるように錯覚できるからだよ、しかもタダで。

セミナーばっかり行っているやつ周りにいないか?

いるだろう。

そういう奴みてごらん。

一年、いろんなセミナーを受けました。

テキストはたくさん持っています。

自分なりにこれだけ頑張りました。

去年とは私違うんです。

 

いや、オマエなにも変わっとらんって。

一年たっても自分の立ち位置は、何一つ変わっていない。

 

セミナーなんかに出てる暇があったら、その二時間で集中して自分だけで考えたほうがいいだろう。

一年間でたセミナーの時間分だけ、自分一人、紙とペンで考える。

それやれば、明らかに去年の自分とは違う自分がそこに在るだろう。

 

 

キミは。

聞いた言葉を頭の中で反芻して自分なりの答えを出していたのが外からハッキリわかった。

途中からペンを置いてメモを取るのを止めた。

あそこで話されるものに価値がないと既にその場で気がついたってことだろ。

 

キミに話したかったことは、自分でやれって言いたかっただけ。

何度セミナーにいっても自分でやらなきゃダメだよって言いたかった。

警戒してたみたいだけど、何かを売りつけたいとかそんなのはないよ笑

 

まあ、とにかく頑張れ。

いいかい、頑張ることはたった一つ。

自分で動くこと。

 

 

 
と言って彼は席を立ち、一口も飲んでいないアイスオーレ代も払わずに店を出て行ってしまいました。

あっけにとられまくりながら、ものすごい疲労感のままレシートをもってレジへ。

 
「お代はいいですよ」
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

About The Author

行政書士行政書士阿部隆昭
創業支援と資金調達に強い東京都北区赤羽の行政書士阿部隆昭。
事業計画書作成支援、創業融資申請サポート、補助金助成金申請、契約書作成、ビザ申請など、中小企業支援業務をメインに業務を行なっています。
業務経験20年の知見をフル活用し、クライアント様の事業運営をサポートします。