はじめに:登録者が減って気づいたこと
YouTubeチャンネル登録者の減少。
たった一人。それだけの出来事が、思いのほか心に残ったのはなぜか。それは、「なぜ減ったのか」を探る過程で、見えてきた構造があまりにも“経営”そのものだったからだ。
どうやら、以前「とりあえず登録して」とお願いした知人が、そっと登録を外したらしい。その行為自体は全く問題がない。
しかし、この”出来事”を通じて私は、「ノイズの存在」と「経営の純度」という言葉が、突然リアリティを持って浮かび上がった。

ノイズとは何か?
ここでいう「ノイズ」とは、単なる邪魔な存在というよりも、「本質的な関係性を覆い隠す要素」を指す。
たとえば、気を遣って登録してくれた知人のフォロー。それ自体はありがたいものだが、「本当の意味で応援している」かどうかという視点では、少し異なる。
彼らがフォローし続けていることで、自分の発信が「共鳴しているかどうか」の判断が曖昧になる。つまり、データとしてはプラスなのに、感覚的にはモヤがかかる。これが「ノイズ」である。
経営におけるノイズの例
この気づきは、私が日頃支援している中小企業の現場にも通じるものがある。
- 本音では不要だと思っている事業部
- 惰性で続けている取引先
- 付き合いで受けてしまう案件
- 評価制度に入っていないけれど影響の強い人物
こうした“ノイズ”は、経営を鈍らせる原因となる。それはコストとしてではなく、「判断基準の曖昧化」としてボディブローのように効いてくるのだ。
ノイズがあると、経営はどう鈍るか?
ノイズが多い経営は、意思決定の精度が下がる。
たとえば、毎月の売上目標は達成しているものの、利益率が低下している原因がつかめない──。よくよく調べると、既存顧客のなかに値引きや特別対応が常態化している“惰性取引先”が混じっていることがある。
彼らは一見「売上」に貢献しているように見える。しかし、「時間・人員・工数」への負荷は大きく、結果的に利益を蝕んでいる。
つまり、「ノイズのせいで、本当に見るべき数字が見えなくなっている」状態なのだ。
純度とは何か?
では、「経営の純度」とは何か。
それは、自社の理念・存在意義・届けたい価値に対して、ズレのない意思決定ができている状態を指す。
純度の高い経営では、
- 顧客もスタッフも“共鳴”で集まる
- やらなくていいことを明確に手放せる
- 決断が早く、後悔が少ない
こうした状態が生まれる。
そして、純度を高めるには「足す」よりも「削る」ことが必要なのだ。
経営のクリーニング:ノイズ除去のすすめ
あなたの経営にも、以下のようなノイズが紛れていないだろうか?
- 「この人との付き合いやめたら、何か言われそう…」という恐れ
- 「このサービスやめたら、売上が減るかも」という未確認の不安
- 「誰も反対しないから、続けているけど…」という惰性
これらは、事業にとって必ずしも“悪”ではないが、「選び取る判断」を曇らせているなら、いったん手放すことが必要だ。
これは、マーケティングの前に行う「経営のクリーニング」である。
それでも怖い、「登録者が減る」瞬間
ノイズを手放すには、たとえ1人でも「離れる人が出る」事象を受け入れる覚悟が必要だ。リスクではない、単なる事実。
私自身も、今回のように登録者が減ることで「この方向性で良いのか?」と一瞬迷った。
しかし、それは本質ではない。
「誰に向けて、何を届けたいか」が明確であるなら、減ることを恐れる必要はない。むしろ「その方向で合っている」と確認する機会ですらある。
純度の高い経営は、人を惹きつける
ノイズが減ると、驚くほど“本当に届けたい人”との距離が近くなる。
LINE登録でも、YouTubeでも、紹介でも、「ピンと来ました」「この話、探していました」といった声が増える。
経営においては、広く浅くよりも、「深く、届く」ことの方がずっと意味がある。
これは、補助金申請における“構想の明確さ”にもつながる考え方だ。制度に合わせて文章を作るのではなく、自社の思想や変革の方向性に基づいて提案を設計する企業が、最後には採択されている。
おわりに:純度が高まると、経営は自然に加速する
「ノイズが減った分、届けたい言葉が届く」
この感覚を経営で味わえるようになると、売上やKPIでは測れない“手応え”が日々の中に芽生えてくる。
そして、情報も、人も、チャンスも「選び取れる経営」ができるようになる。
私たち行政書士阿部総合事務所では、こうした“経営の純度”に向き合うお手伝いをしています。補助金や制度は、あくまでその一部にすぎません。
本当に整えたいのは、あなたの中にある「判断の純度」なのかもしれません。
行政書士阿部隆昭