遭難スノーボーダー号泣会見「冬の山、こんなに恐ろしいとは」
お正月に起きたこの遭難事故の報道を聞いていたときに気になったのが、「登山届」という用語。
登山を趣味としている人にとってみたら当たり前のことなんでしょうけど、山を登るのにも届出が必要になっているのでしょうか。
県警やスキー場では、コース外に出る時は登山届の提出を呼び掛けている。3人は元日分の届けは出していたが、2日分は未提出だった。しかし、ゲレンデ上部のゲートに常駐するスキー場の係員には「(ゲレンデ下のスキー場本部で)出しました」とウソの申告をし、コース外へ出たという。
ウソの申告をしなければならないほど、登山届は必要的なものなのか分からないので調べてみました。
参考になったのが、公益社団法人日本山岳協会のWEBサイト。
計画をつくることで、登山の一歩がはじまります。山に思いを巡らせて 目的にあった情報を入手します。
登山計画は書類にまとめることが必要です。メンバーのほか家族友人など周囲の人々と計画の内容について理解がよういとなり、諸先輩や経験者などの登山に対するアドバイスが得られたり、万一の場合の迅速な対応が可能となります。
登山計画書の必要性について列挙しますと次のようになります。
登山予定や必要装備・食糧を明確にする。
家族や関係者への説明として供する。
捜索・救助活動での早期発見や対応に役立つ。
何時、誰が、何処で、何を、どのようにするかを明確にする。
事故時の対応の明確化する。
登山をするには計画を立てる
↓
立てた計画を書面にまとめる←「登山計画書」
↓
登山計画書を届ける←「登山届」
大まかにいえばこういった流れになるようです。
届けるといってもどこに届けるのでしょうか?
登山計画書(登山届)の提出先は次の通りです。
家庭、クラブ(山岳会)、職場、学校
山域の登山指導センターや案内所、登山口のと登山届ポスト
登山山域の都道府県警察本部地域課または山域を所管する警察署・交番・駐在所注:谷川岳、剣岳については条例に基づく登山届提出義務があります。
こういった計画で登山をしていることを関係各所に周知させるという目的のために登山届があることは間違いなさそうです。
谷川岳、剣岳については条例があると書かれています。
そして、「義務」とまで。
条例で義務とされている以上、届け出義務違反にはペナルティがありそうですね。
群馬県谷川岳遭難防止条例
目 的
谷川岳における岩場地帯の登山に関し、登山者の守るべき事項を定め、
登山届を、登山する日の10日前までに提出させることにより、登山者の 遭難を防止する。
規制期間
3月1日から11月30日まで【冬山の期間を除く期間】
適用区域
谷川岳(1,977m)における岩場地帯【危険地区を指定】
指 示
必要と認める指示事項があるとき、記載して届出者に交付する。
一般的禁止
3月1日から11 月30 日までの間に、著しく危険があると認めたときは、
期間・地区を指定して登山を禁止することができる。
(平成25 年は3月22 日(金)から4月30 日(火)までの40 日間)
罰 則
禁止区域登山者・未届出登山者には3万円以下の罰金⑦ 努力義務 12 月1日から
翌年2月末日まで(冬山の期間)は、危険地区に登山しないように努めなければならない。
登山届を出さずに登山をしたものには3万円以下の罰金がペナルティとなるようです。
実際のところどうなのでしょうか?
山にはたくさんの人が登っているでしょうし、インターネットで調べると全ての人が登山届を提出しているわけではないようです。
警察庁の発表によると、2013年、国内における山岳遭難事件の2172件中、登山届が出されていたのは371件のみだったとしている
義務化は3県
登山届(登山計画書・入山書)が、条例によって義務化されているのは、群馬県、富山県、岐阜県の3県のみだ。
未提出者に対しては「群馬県谷川岳遭難防止条例」では3万円以下の、「富山県登山届出条例」や「岐阜県北アルプス地区における山岳遭難の防止に関する条例」では5万円以下の過料などが科せられることになっている。
遭難事故になった件数からしても提出している割合はとても少ない。
何事もなく山登りを楽しんだ人の件数からすると、もっともっと少なくでしょう。
罰則を課したところで、遭難事故にならない限りは未提出の事実は誰にも分からない。
となると、実効性の点ですこし疑問ですね。
登山届の提出を義務付けるべきだという議論もあるようですが、個人的には、ただ義務付を行ったとしても効果は薄いと考えます。なぜなら、勝手に山に登られても無事に下山されてしまえば、登山届の未提出は発覚しないからです。仮に未提出の登山者に罰則を課しても、発覚のリスクが低いのであれば、提出のモチベーションを高める効果は期待できません。
登山届には、「自死」の推定を排除する意味も含まれているようです。
死ぬつもりで山に入ったのではなく、レジャー目的だったと。
死亡保険金の給付に影響があるかもしれませんのでコトは重大です。
いずれにしても、簡単な手続きで作成や提出が出来るようですし、未提出のリスクのほうが大きそうです。