精神障害者や知的障害者の親なき後問題に悩んでいらっしゃる方は実は多い。
精神障害、知的障害のある子ども世代にとっての親なき後問題は、
親が亡くなってしまった後の生活はどうするのだろう?
お金や住まいは無くなってしまうのだろうか?
お金などの財産管理や、身体のことなどを誰がサポートしてくれるのだろう?
こういった漠然とした不安を持たれている方も多いのです。
なぜならば、家族の持ち家に住んでいる精神障害者は全体の36.7%(内閣府調査)もおります。
将来必ず発生することになる家族の相続が争いに発展したことによって、今までどおり住まいとして利用できなくなる可能性が十分にある。
また、「親兄弟の援助」を定期的な収入源とする精神障害者は全体の12%(内閣府調査)。
安定した住居や収入源を確保することは、何お精神障害者や知的障害者に限ったことではなく、私たちの精神の安定にとって欠かせないものです。
精神障害、知的障害のお子さんを持つ親御さん世代にとっての「親なき後問題」は、
”将来、親が先に亡くなった後の子どもの世話が誰がしてくれるのだろう?”
”子どもが困ったときにサポートしてくれる人がいれば私たちも安心した老後を送ることができるのに”
”私たち親が生きているうちに、子どもの生きる道を確保してあげたい”
このような状況の中、
精神障害者や知的障害者の親なき後問題の対策として任意後見契約の価値が高まっています。
しかし、契約の中でも比較的マイナーな任意後見契約の詳細について一般の方にとっては謎だらけ。
”任意後見契約は一部の富裕層だけのもの”
”任意後見契約をしてしまうと専門家に支払う費用が莫大になる”
といったウワサも耳にしたことがあります。
法定後見と任意後見とを含む広い意味での成年後見制度というと認知症高齢者を思い浮かべる方も多いでしょう。
民法という法律の規定では精神上の障害により事理弁識能力を欠いたり、不十分になると法定後見制度が利用できます。
が、精神障害者の場合、面談してみると成年後見の申立要件にあたる事理弁識能力に問題がない場合も多い。
その場合には、法定後見制度を利用することができません。
成年後見は知っているけれど、任意後見は知らないという方も多いです。
「任意」という名称が入ってはおりますが、公証人が作成に関与しなければ成立しないことが法律で決まっている等、法律的に根拠がしっかりとしている制度。
監督機関が入らない任意代理とは全く違うのです。
任意後見契約が利用できる場面では安心してその導入を検討すべきです。
それほど任意後見契約にはメリットが多い。
さて、その任意後見契約ですが誰が契約者となるかによって大きく二つに分かれます。
精神障害者、知的障害者本人が任意後見契約の本人となる場合。
任意後見契約の本人とは、任意後見契約をする人と考えて下さい。
精神障害があったとしても、契約をする能力があれば任意後見契約は出来ると考えられています。
契約ですので、もう一方の当事者は、本人のサポートをしてくれる方。
例えば、親御さんや親しくしている親戚の方、そういった方がいなければ行政書士などの専門職に依頼するケースも多いです。
置かれた状況によって最も良い方法を選択することになります。
ご本人と行政書士とが任意後見契約をすることにより、万が一本人の状況が悪化したときに親御さんに頼ることなく任意後見受任者である行政書士がサポートをすることが出来るのです。
精神障害、知的障害のあるお子さんの親が任意後見契約の本人となる場合。
どちらかというと、親御さんの相続対策をする際に「親なき後問題」を考えるというケースが多いでしょう。
1.親御さんにサポートをお願いする「任意後見契約」を結ぶ。
2.親御さんの遺産の管理等をしてもらうために遺言執行者を定めた遺言書を作る。
3.遺されたお子さんのために計画的に遺産を使ってもらうための信託契約を結ぶ。
4.親御さんが亡くなった後、お子さんの身上監護などの事実行為をしてもらうために準委任契約を結ぶ。
以上のような契約等を組み合わせることにより親なき後問題に対処することができます。
3の信託契約は、数ある契約形態の中でも難しい部類に入ります。
私は不動産信託契約書、遺言代用信託などを100件以上作成し、信託には詳しいのですが、”信託はやらない”という専門職もいるほど複雑です。
一般の方にとっても、”難しくて大変だなあ”、という印象を受けると思いますが、ここで大切なのは、
親なき後問題に対処する方法はある!
ということです。
方法が何もない!
全くの手詰まりだ!
そう思うと、ひとは希望を失います。
方法はある。
相談にのってくれる人もいる。
そう思うだけで前を向いていけるはずです。
人生において、背を向けて一時しのぎをできる「問題」も多い。
ですが、
「親なき後問題」だけは考えないわけにはいきません。
親御さん自身ではなく、お子さんの将来の問題だからです。
考えてあげられるのは親御さんが元気なうちだけです。
”まだ大丈夫!”と思っているうちに親御さんが認知症になったとしたら、遺言書を作ることも出来ませんし、任意後見契約も出来ません。
親なき後問題対策として執れる方法もかなり限られていきます。