タイトルの「熔けるは」一般に使われる「溶ける」ではないです。
度重なるギャンブルによってこしらえた借金によって自身が入る場所を「地獄の釜」と称し、その地獄の釜の蓋を閉じるべく戦った「48時間の死闘」が終わったとき、その蓋は「煮えたぎる溶鉱炉のごとき奈落で溶解していた」。
だから溶けるではなく、『熔ける』
その48時間の死闘、~死闘といってもバカラ賭博ですが~、の舞台になったのがシンガポールのマリーナベイサンズ。
マリーナベイサンズは単なるリゾートホテルではない。このホテルの中にあるカジノでは、ギャンブラーたちが大金を手にするべく、日夜しのぎを削っていた。
本書の面白みはこのギャンブルの話に尽きます。
私はギャンブルはやらないのでわからないのですが、バカラ賭博というとその中でも掛け金が多くダイナミックにお金が動くものなんですよね、きっと。
書類のサインだけで、利子ゼロで軍資金を借りることが出来るシステムが用意されていたり、マカオのバカラでは「ジャンケット」という仲介業者がいたり、客が動かした総額の1%をキャッシュバックしてくれる「ローリングバック」というシステムがあることが分かったり、
”へえ~”、”なるほどね~”
と思うことばかり。
しっかり章立てもされていて、自身の生い立ちなども書かれているのですが、面白いの第一章「極限」に書かれているマカオ・シンガポールでのバカラの連戦模様。
第七章「溶解」に書かれている子会社からの資金調達の図式、ぐらいでした。
時折触れられている当時の週刊誌報道に対する本人からの指摘も、当時の報道をよく知らないので女優さんとの噂の真相には興味が湧きませんでした。
厚めの本ですが、文字数も少ないですし、文章も読みやすいのであっという間に読み進めることが出来ます。
読んだ後に何かが残る、といった性質の本でも無いですし、一人の人間の転落模様と描き出すといったことを目指した本でもなさそうです。
”ふーん、そうなんだあ”といった感想しか残らない本ですが、図書館にあったら読んでみたらいいかもしれません。