普段、報道には表れる事の少ない裁判官の発言集です。
裁判の判例は、六法や判例集など良く読みますが、裁判官の「お言葉」はさすがにそれらには掲載されないんですよね。
タイトルに魅かれて購入してみましたが正解です。
刑の執行とは何か、とか重い命題に思いを巡らすのもいいですし、著名な事件や、有名人の裁判などの例もあるので興味をもって読みすすめることが出来ると思います。
著者の長嶺超輝さんは、7回不合格で司法試験を諦め、ライターに転進されたようです。
今日は本書から、私が気になった「お言葉」をいくつか紹介します。
・「早く楽になりたい気持ちはわかるし、生き続けることは辛いかもしれないが、地獄をきちんと見て、罪の重さに苦しんでほしい。
これは、現住建造物放火で死刑の求刑をしりぞけ、無期懲役判決言い渡しのときの「お言葉」です。
死を選ぶことは地獄からの開放、罪の重さを背負ったまま生きること、それがすなわち地獄なんだという事を述べていますね。
・「犯人が人を殺すのは簡単だが、国家が死刑という判決を出すのは大変だということです。皆さん、納得はいかないと思いますが、そういうことです。」
皆さん、というのは実は、閉廷後、傍聴していた遺族に向かっての言葉です。殺人、未成年者略取などで死刑の求刑をしりぞけて無期懲役判決を言い渡し。
遺族感情として、当事者ではないのでもちろん分かりようもないのですが、この裁判官の言葉があるのとないのとでは裁判後の感情が違うような気がします。判決として死刑を出すのには、過去の判例を踏襲しないといけないんですね。いけない、というか、まあそうなっています。一人殺しても死刑ではないけど、二人殺したら死刑の可能性、三人なら死刑により傾く、といったような、あくまで例ですけど。今回の裁判官の「大変」とか、「まあそういうことです」という言葉の選び方にそれらが表れていると思うんですがどうでしょうか。
・「タクシー乗務員には、雲助まがいの者や、賭け事などで借財を抱えた者が、まま見受けられる。こうしたことは、顕著な事実と言ってよいかと思われる。」
顕著な事実というのは、法律でよく使われる用語で、誰でも周知の事実ということです。民事訴訟法の第179条で「裁判所において当事者が自白した事実及び顕著な事実は、証明することを要しない」と規定されているように、誰でも知っているから証拠調べは要りませんっていうことです。で、本書ですが、タクシー運転手について、それらの顕著な事実になっているのかはよくわかりませんが、ちょっと違和感ありますね。
・「暴走族は、暴力団の少年部だ。犬のうんこですら肥料になるのに、君たちは何の役にも立たない産業廃棄物以下じゃないか」
なかなか辛辣ですね
・「多少厳しいことを言いましたが、私は、犯罪をやめさせるのが仕事ですから」
これは、大麻取締法違反の罪に問われたテレビタレントに対してのお言葉です。
・「電車の中では、女性と離れて立つのがマナーです」
痴漢の罪に問われて被告人に対しての逆転無罪判決のときの言葉。
・「最後の機会を与えます。返済するというあなたの言葉を、だまされたことにして信用するから。
罪名は、詐欺罪なんです。有罪判決を受けた被告がだましとったカネを被害者に返す、というその陳述をだまされたことにして信用する、という言葉の置き方は被告人にも響くのではないでしょうか。
以上ですが、この本でいいなあって思ったのが判決をした当時の裁判官の「年齢」も書いてあるんです。やっぱり人生経験によって、出てくる言葉って違ったりしますよね。年齢が書いてあることによって、より裁判官の心情の背景を推察する一助にはなるのかと思いました。
興味ある方はご一読を♪
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