新卒で入社し、都内百貨店の眼鏡売り場で4年と少し勤めました。
この業界に入る前のこと。
もう25年近く前になるんだなあ。
ブルーライトカットレンズ。
結構、知っている人も多いかもしれないですね。
パソコン画面などから出るブルーライトを目に入れる前に、レンズでカットします、というもの。
ブルーライトカットレンズが世の中に出た当時は、画期的。
機能としても商材としても。
なのですが、時代とともに顧客の求めるものも変わり、製品もまた改良される。
ブルーライトを眼鏡でしか防ぐことが出来ない時代もあったけれども今は。
これは当職が使用しているPCの外部モニタ。
そもそもモニタの機能としてブルーライトカットが付いている。
ブルーライトカットレンズ不要。
スマホ。
液晶カバーのフィルムにもブルーライトカット機能、付いてますよね。
つまり、メガネレンズにブルーライトカット機能を持たせることが必要だった時代から明らかに変わったということ。
ここから本題。
先ほど、商材としても画期的、と書きました。
なにが画期的かといえば、値上げ出来るんですよね。
付加価値だから。
同じ度数のレンズ、同じ材質のレンズ、だけれどもブルーライトカット機能を付けるだけで簡単に客単価アップが実現。
これは魅力的。
今回のエントリーは、値上げの話。
業種業態を問わず、値上げはしたいですよね。
利益を増やすには、入る方を多くするか、出るほうを少なくするしかないですから。
例えば、フィットネスクラブをあなたが経営するチャンスが回ってきたとして、価格設定の場面。
通常、競合店は近隣にあるはずなので、当然、価格帯の調査をします。
付加価値をつけて高単価を目指す。
よくある方法です。
おまけを付けるとか、原価を無視できるサービスを付けるとか、文字通り、「付加」、「価値」ですから。
だけれども、その付加価値の「価値」に「価値」が感じられないものだったとしら。。。
眼鏡の用途は、さまざま。
もっとも多い、これが普通なのは、常時眼鏡をかける人。
オフィス作業のときだけ使う眼鏡を欲しいという方もいらっしゃったことがあります。
運転するときだけ、とか。
免許の更新専用とか笑
メガネにも用途があるんですよね。
オフィス作業専用の眼鏡であれば、ブルーライトカットレンズを付けても良いかもしれません。
もちろん、モニタからそもそもブルーライトカットが出ていない状況なのであれば、機能的にはほぼ無駄になりますが。
もう一つ、元眼鏡屋だからこその視点ですが、普段使いのメガネにブルーライトカットがいるのか、特に女性で。
ブルーライトカットレンズは、茶色いです。
性質上、透明ではなく、より茶色がかった色味になります。
よーく見ればわかる、という程度ではなく、白背景だとはっきり茶色い。
今では、ブルーライトの軽減率で差を設けている販売店もあるらしく、もっともカット率の高いレンズは、明らかに茶色。
女性の場合、お化粧しますよね。
顔面の前に、色味が異なる、暗めの茶色が化粧の色味とは無関係に入ってくる状況になります。
ブルーライトカットレンズ入りの眼鏡をするということは。
男性はゼロなのですが、女性の場合、メガネレンズに色味を入れる理由はいくつかあって。
一つは、目尻のシワ隠し。
その場合には、割と濃いめの色をわざと入れます。
顔の印象を明るくしたい場合は、ごく薄めのピンクやパープルを入れるのが人気でした。
茶色は。。。。
そもそも需要がないです。
メガネ店というはどこにってもさほど差がない商品を扱っています。
機能的には、大手メーカーの製品はどれも同じようなもの。
個店の差を付けることが難しいビジネスなのです。
眼鏡屋じゃないし、私、カンケーないと思わずに、ご自身のビジネスに反映して考えてみてください。
起業家が大好きな「差別化」の話です。
店頭に眼鏡を作りに行ったとき、眼鏡レンズの選択の場面。
ブルーライトカットレンズが無料でついてくるキャンペーンを仮にやっていたーつまり通常レンズに対してのブルーライト加工オプションが無料ー、場合、何を判断基準として選びますか?
”無料でついてくるならそっちの方がいいか!”
”店員さんがオススメしてくれたし付けとこうか”
”目に悪いものじゃなさそうだし付けとくか”
せっかくだから、という理由でブルーライトカットにしてしまう人、多いんじゃないかな。
初めて眼鏡を購入するパートナーに同行し、元眼鏡屋の私は、ブルーライトカットレンズキャンペーンなのにブルーライト無しレンズにした理由は、
女性だから、普段使いだから、時代じゃないから
この三つの理由。
値上げ策として差別化の話に戻ります。
値上げをするためには付加価値を付ける。
付加価値の、価値に意味がなければ、付加しても意味がない。
活きてくるのが定員の提案力です。
「ブルーライトカット、付けた方がいいですか?」
という目の前からの客にどう答えるかが、定員の提案力です。
検眼はじめ、自動化された店舗のオペレーションで、唯一、店員の人間を発揮できるのが顧客とのコミュニケーションなんです。
客からの質問は、コミュニケーションの始まりの合図。
店員さんなので、当然、その道の専門家です。
顧客よりは情報も知識も上回っていることが必要です。
ブルーライト付けた方がいいですか?
の質問にマトモに応えられないのでは、店員の提案力不足です。
差別化の機会を逸しました。
これ、眼鏡屋だからイメージわかないかもしれませんが、例えば美容サロンだったらどうですか。
「私に、どんな髪型似合いそうですか?」
と、聞いたところ。
「そうですねー、どうでしょうねー、お客様はどんな髪型が好きなんですか?」
みたいな回答が返ってきたとしたら。
専門家的にどうですか?と聞いているのに、答えが返ってこないのでは、この店のリピートはないな、と判断しますよね。
こういった細かいところから、顧客満足度は下がっていきます。
顧客満足度が、期待値よりも著しく下がってしまうと、あそこの店、ダメだから行かない方がいいよ
という、マイナスの口コミをされてしまいます。
店舗ビジネスのマーケティングとしては失格。
どんな高額なマーケティングコンサルを入れてブランディングを図ったとしても全て無駄コストとなります。
値上げのために付加価値を付ける。
よくやるのですが、そもそも付加する価値に、価値があるのかは常に検討してみてください。
行政書士阿部隆昭