強制執行妨害目的の行為について取引先から相談を受けたのですが
なんだか事情は複雑怪奇でした。
ある土地・建物について共同抵当権を設定していて、既に担保権実行としての競売によって差し押さえの登記が嘱託されています。
その状況の中、担保の土地上にですね、新たに建物を建築する請負請負契約をしたことによる不動産工事の先取特権がされた建物登記の表題部が起きているんです。
土地の地積上、二棟の建物の建築はムリ。
しかも、その新たな建物は、差し押さえ済みの建物と構造・床面積が酷似しています。
ということは、古い建物を取り壊して、そこに新たな建物を建てるつもりなんでしょうか?。
古い建物には差し押さえがされており裁判所の競売のレールに乗っています。
もし取り壊しをしたとすると、民事執行法第53条の規定によって、競売手続きが取り消されてしまいます。
第53条(不動産の滅失等による強制競売の手続の取消し)
不動産の滅失その他売却による不動産の移転を妨げる事情が明らかとなつたときは、執行裁判所は、強制競売の手続を取り消さなければならない。
執行妨害を目論む方は、これを狙っているのかな。
とはいえ、この行為は刑法96条の2に触れる可能性があります。強制執行を妨害する目的で、財産を損壊していますから。
懲役まである比較的重い刑です。
強制執行妨害目的財産損壊等
第96条の2
強制執行を妨害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第3号に規定する譲渡又は権利の設定の相手方となった者も、同様とする。
それにもまして、不動産の所有権者が第三者に売買によって所有権が移転されていたり、さらには、土地上に給料債権を被担保債権とする一般先取特権の登記までご丁寧に入っています。
そもそも、債権額が小額である一般先取特権について登記されることさえまれです。しかも第三順位です。担保価値から考えると、配当目的ではありません。
なぞが多い案件なんですが、いずれ全貌があきらかになる時があったらレポートしたいと思います。
参考条文
第327条(不動産工事の先取特権)
不動産の工事の先取特権は、工事の設計、施工又は監理をする者が債務者の不動産に関してした工事の費用に関し、その不動産について存在する。
2 前項の先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増加が現存する場合に限り、その増価額についてのみ存在する。
第338条(不動産工事の先取特権の登記)
不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには、工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならない。この場合において、工事の費用が予算額を超えるときは、先取特権は、その超過額については存在しない。
2 工事によって生じた不動産の増価額は、配当加入の時に、裁判所が選任した鑑定人に評価させなければならない。
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