不正受給でクローズアップされた感のある生活保護制度ですが、本来であれば生活困窮者を日本国という共同体の構成員である国民全体で扶け合うという素晴らしいシステムです。
そんな生活保護制度ですが、民法上の扶養義務者等がいる場合には、その適用について一定の制限がかかります。
生活保護法第4条(保護の補足性)
保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2 民法(明治29年法律第89号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3 前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。
民法上の扶養義務者は、直系血族および兄弟姉妹が原則です。特別事情があれば、例外的に三親等以内の親族が扶養義務を負う場合もあります。
国民全体の扶けを請う前に、法律上の義務を果たすべき人にお願いしなさいという趣旨です。
民法上の扶養義務者がある場合には、生活保護費を支払った自治体等は、その扶養義務者に対して費用償還請求権が法律で認められています。
いったんは国民が立て替えて支弁したけど、本来であれば扶養義務者であるあなたが支払うべきなのだから国民に返してくださいね、ということです。
<参考>
第77条(費用の徴収)
被保護者に対して民法の規定により扶養の義務を履行しなければならない者があるときは、その義務の範囲内において、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の全部又は一部を、その者から徴収することができる。
2 前項の場合において、扶養義務者の負担すべき額について、保護の実施機関と扶養義務者の間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、保護の実施機関の申立により家庭裁判所が、これを定める。
3 前項の処分は、家事審判法の適用については、同法第9条第1項乙類に掲げる事項とみなす。
第877条(扶養義務者)
直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。