相続税の負担を有利にするために養子を取ればいい。
といったハナシが噂レベルで流行っているようですね。
法定相続人の数が増えるほど、相続税の基礎控除額が増えるのは多くの方がご存知のとおりです。
この法定相続人の数に含める養子の数の制限について説明します。(1) 被相続人に実の子供がいる場合 一人までです。
(2) 被相続人に実の子供がいない場合 二人までです。
基礎控除額=(3,000万円+600万円×法定相続人の数)
法定相続人の数が増えれば増えるほど3000万円に加算される額が大きくなりますので、養子縁組をすることによって基礎控除額が増えるのは本当です。
しかし、そこには制限があります。
それはそうですよね。
制限がなければ基礎控除額が増やそうとして何人もと養子縁組をする人が登場してきます。
だからこそ、
実の子がいる人は、1人だけ。
実の子がいない人は、2人まで。
といった制限を設けてあるのです。
更に、税務当局の判断で、「養子の数を法定相続人の数に含めることで相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合」には、養子の数に含めることが出来ない可能性もあるのです。
課税逃れの養子縁組は認めない、と言っているわけです。
ですが、そもそもですね。
養子縁組は、婚姻の場合と同じルールが適用されるのが原則です。
婚姻の場合に真の夫婦関係を創設する目的が必要なのと同様、養子縁組の場合には真の養親子関係を創設しようという意思がなければ無効となります。
しかし、判例(最高裁などの裁判例)によって、解釈がいろいろと分かれているわけです。
「親子としての精神的つながりをつくる意思」が認められればいい、といったような緩やかな解釈がある一方、下記の事例もあります。
2)東京高決平成12年7月14日判タ1051号305頁
原審判は、本件養子縁組が相続税の負担を軽減する目的で行われたとするが…当該
養子縁組がそのような動機のもとに行われたとしても、直ちにそのような養子縁組が
無効となるものではない…
「直ちに無効となるわけではない」と、勿体まわった言い方になっておりますが、無効になる余地がないわけではないとも読むことが出来ます。
何れにしても、
相続税対策としての養子縁組が、人数要件以外でも自由に何でもかんでも認められるとは考えないほうがよいと思います。
行政書士阿部総合事務所
行政書士阿部隆昭