先に婚姻届を出してから結婚式を挙げるとか、式の後に届けを出しに行くとか、人によって様々だと思います。
そんなとき、自分たち、いつ結婚したんだろう?って思いませんか?
「結婚したのいつ?」って聞かれたときに答えるのは、
結婚式の日?、婚姻届を提出した日?
実は、婚姻の成立日は、法律の世界でも問題になる論点なんです。
民法の起草者は、結婚式をしたその日に婚姻届が出されることを期待していました。
第739条(婚姻の届出)
婚姻は、戸籍法(昭和22年法律第224号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
婚姻について定めた民法の条文をみると、婚姻の届け出をすることで効力を生じると書いてあるんですね。
婚姻が「成立する」のと、「効力を生じる」とはどう違うんでしょうか。
結婚したんだからどっちも同じじゃんと思いますが、ちょっとだけ異なります。
婚姻届を役所に出す日に効力が生じるとなると、じゃあ「成立」したのはいつなの?ってなります。
この場合は、
「結婚しようよ」、「うん、そうしよう」っていう会話がされた日(正確にいうと、婚姻意思の合致が成立した日)に婚姻は成立していたことになるんです。
日本で結婚するときって結婚する意思がないと成立しないんです、そもそも。
当たり前じゃんと思うでしょうが、ちゃんとそのあたりは民法でも規定されています。
第742条(婚姻の無効)
婚姻は、次に掲げる場合に限り、無効とする。
一 人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき。
法律を勉強したてのとき驚きました。
人違いで結婚するときなんてあるの?って。
結婚しようと思った相手がなんか違うと思ったら、双子の姉ちゃんのほうだったとか。
「婚姻をする意思」っていうのは難しく言うと、社会通念上夫婦と認められるような関係になりましょうよ、っていう意思です。
まあ、「一緒に生活していこうや」ってことです。
夫婦になるつもりがないのに届けを出しても、婚姻は成立していないんです。
例えば、相続権を与えるために届けだけ出しちゃおうよってのはダメです。
成立した日と、効力が生じた日を分けて考えるのはなぜなんでしょう。
配偶者って相続人ですよね。
亡くなった人の配偶者の地位にたまたまあったというだけで、莫大な財産を取得できるかもしれません。
「相続」できるのは、配偶者でも法律上の配偶者だけ。
法律上の配偶者を判断するのは、戸籍の記載だけです。
戸籍に配偶者として記載されていれば大金持ち、でもずっと男性を支えてきた内縁の女性には財産が1円も相続できません。
それを分ける唯一の基準が婚姻届の日なんです。
成立はしているんですよ、「結婚しようよ、そうだね」って言った日に。
でも、それって誰にもわかりませんよね。二人だけが知っている事実。
だから、届け出をした日を全ての基準にしましょうってことになっています。
相続って、その家族だけの問題じゃないんです。
家族以外の第三者が関係してくる場合はたくさんあります。
例えば。
亡くなった人が借金を負っていた場合、その返済義務も相続人に相続されてしまうんです。
莫大な財産を取得できるかもしれませんが、一生かかっても返しきれない借金を抱え込むかもしれない。
(※誰かが死んだという偶発的な事情で人の人生を壊すことがないように「相続放棄」という制度も法律は用意してくれています)
借金というからには、お金を貸した人がいます。
貸した人からすると、誰にも返せって言えるかを判断するのが戸籍なんです。
画一的に処理するためにも、戸籍簿に記載されることは必要。
婚姻届ひとつとっても、こんな複雑な事情があるんですよね。