遺言を公正証書にしようというときは、公証人に認証という手続で認めてもらう必要があります。
遺言書には、公正証書で作るものと、自分で作るものの二種類がありますよ、ということをご存知の方も多いでしょう。
意外に知られていないのは、
公証人にも管轄がある
ということ。
公証人は日本全国どこでも仕事が出来るわけではないのです。
と、公証人法で決められているんですね。
先に条文を見てみましょうか。
面倒なようですが、何事も一次情報の根拠を確認しておくのは大切です。
公証人法十七条
公証人ノ職務執行ノ区域ハ其ノ所属スル法務局又ハ地方法務局ノ管轄区域ニ依ル
古い法律ですので、今となっては懐かしいカタカナです。
公証人の職務執行の区域は、その所属する法務局又は地方法務局の管轄区域に依る。
公証人が職務をすることが出来るのは、所属する法務局の管轄区域だけ。
実は、公証人って法務局に所属しているんです。
これも知られていません。
根拠はこちらです。
公証人法第十条
公証人ハ法務局又ハ地方法務局ノ所属トス
私が日頃懇意にしている公証人は東京都(赤羽ではありません)の先生です。
前職の頃からの長い付き合いなので仕事のやり方も分かっていますし、ある裁判所の所長をなさっていた方なので知識・経験ともに申し分ありません。
ですので、いつもその公証人に依頼をしてしまうのですが、埼玉県の人の遺言書は作ることが出来ないのです。
と、書きましたが、実はこれは間違っています。
A 埼玉県の人が、東京都の公証人役場で遺言書を作ることは、出来ます。
B 東京都の公証人が、埼玉県の人の自宅に出向いて公正証書遺言を作ることは、出来ません。
Aの場合、公証人が仕事をするのはどこでしょうか?
東京都ですよね。
東京都の公証人が、東京都で仕事をするのは認められています。
Bの場合、公証人が仕事をするのは埼玉県です。
東京都の公証人が、埼玉県で仕事をするのはNGです。
東京都の公証人は、東京法務局に所属しています。
所属している法務局の管轄以外で仕事をしてはいけないというのがルールなんですね。
病気や仕事などで遺言書を作る人(正確には「嘱託人」といいます)が公証人役場まで出向くことが出来ない、というのは割とよくあるケース。
そのときに管轄の問題になってきてしまうんですね。
行政書士などの専門職に依頼せずに公正証書遺言を作成するときには注意してくださいね。
行政書士阿部総合事務所
行政書士阿部隆昭