全体に斜線引かれた遺言書は無効…最高裁
民法は「遺言書を故意に破棄した時は、撤回したものとみなす」と規定するが、具体的にどのような行為が破棄に当たるのを明記していない。1、2審は、斜線を引いたのは父親と認定する一方、「文字が判読できる状態であれば有効」と判断。これに対して、最高裁は、「遺言書の文面全体に故意に斜線を引くことは、遺言全ての効力を失わせる意思の表れで、撤回したとみなされる」と指摘した。
赤ボールペンで斜線の遺言書は「無効」 最高裁が判断
「開封しないで知り合いの弁護士に相談するか家裁に提出して公文書としてもらうこと」と付箋(ふせん)が貼ってあった。だが、封は一度開いた後にのり付けされていたうえ、中に入っていた遺言書には赤いボールペンで文書全体に左上から右下にかけて斜線が引かれていた。このため、娘が息子を相手取り、遺言書は無効だとする訴訟を起こした。
斜線を引いたのは誰か?
遺言者であることに疑いがないようです。
ここで争われたのは、遺言書に書かれた斜線の意味。
ただの斜線ではありません。
遺言書全体にかかるように斜線が引かれていた。
しかも、色が赤ということにも遺言者としては意味があったのでしょう。
1,2審は、文字が判読できれば有効。
ということは、全体にかかるように斜線が引かれていても、斜線そのものの意味は無い。
そういう判断です。
であれば、何のために斜線を引くのでしょう。
最高裁の判断のほうが合理的だと思います。
文面全体に斜線を引くということは、全体を反故にする意思だったというのは一般的感覚にも近いのではないでしょうか。
間違ったら斜線を引いてナシにする、といったことは普通にしますよね。
遺言書に現れた遺言者の意思解釈として、斜線には何ら意味がない、とするほうが違和感があります。
資産の大半を相続させる内容となっていたそうですから、一方当事者としてはこの遺言書を無効として法定相続のルールを適用させたい。
遺言書で相続を受けるとされたほうは、なんとしても有効な遺言書と認定して欲しいでしょう。
遺言書は、相続争いを防ぐ有用な手段となりますが、一方で使い方を誤ると逆に相続争いの火種になるという事例です。
自分一人で遺言書を書く、「自筆証書遺言」には常にこういった「無効」の危険がつきまといます。
相続人に迷惑を書けないためにも、しっかりと法律的に間違いのない遺言書を残すことが遺言を書く者の責任です。