これまで相続に関する業務を行ってきて感じることがあります。
それは、一般の方にとって「遺留分」についての関心の高さ。
遺留分の計算の仕方とか、
遺留分の割合など、
そういった細かいことではなくてですね。
相続分を取り返されてしまう可能性があることだけはご存じの方が多い。
これは、何も不思議な事ではなくて、「相続」という一生に一度あるかないかの不労所得の機会がどうなるかはやはり気になるところです。
例えば、4人家族だった家庭があったとします。
ご主人が先に亡くなって、お母さんと長男、次男。
長男はお母さんと同居して、晩年まで介護をしていたとします。
次男は遠方に住んで、年に一回帰省すればいいほう。
そういった状況のときに、お母さんがそろそろ遺言でも書きましょうと思いました。
次男は好き勝手やっているし、安定した生活も送っている。
それなら、いっそのこと長男に対して相続財産の全部をあげてしまおう。
そう考えるのも無理がないですよね。
この場合、遺留分は2分の1
2分の1の価額までは遺留分として確保されます。
しかし、この2分の1というのは、相続人全員で2分の1。
長男と次男がおりますので、次男だけの遺留分は2分の1の、更に2分の1で4分の1になります。
専門的には、この次男の遺留分のことを「個別的遺留分」といいます。
お母さんが、「預貯金1000万円を全部長男に」という遺言を残したとしても、です。
次男は長男に対して、こう言えます。
遺留分として250万円よこせ!
今回の事例の場合には、先にご主人が亡くなったとしています。
これは、遺留分の計算を簡単にするためではなく、親世代がゼロになったときに子どもたちの争いが先鋭化する傾向があるからです。
お父さんが存命であれば、次男としても、長男に遺留分をよこせ、とは言いづらいです。
このあたりは、鎹となる親が残っているかいないかは大きな違いとなって現れます。
ですので、親世代がゼロになってしまう相続のときにこそ、遺留分の手当を丁寧に心がけることが何より必要になってくるのです。
もちろん、遺言書にもその旨を書く必要がありますし、このあたりの事情はご家族によって全く違いますので、「こう書きましょう」といったことが案内できません。
どうでしょうか?
遺留分一つとっても、難しい判断があるのです。
最後の最後に書き残す法律文書として、報酬を支払ってまで専門職に依頼するメリットはここにあります。
遺言書が、遺言書として効力を発揮するのは、遺言を書いた人が死んでしまった後です。
遺言書を開封した後の、家族の行く末を見届けることが残念ですが、出来ないのです。
幽霊となって、
実は、この部分はこう書いたつもりだった。
と、指示できないんですよ。
だから。
だからですよ。
しっかり自分の想いを漏れなく書き残す遺言書が必要なのです。