成年後見人である専門職が、被後見人の財産を横領する事件が報道されることはよくあります。
なぜ明るみに出るのかというと家庭裁判所が関与しているからなんですね。
一般の方は誤解されていることが多いのですが、認知症になったからといって成年被後見人になる、というわけではありません。
あくまで家庭裁判所に後見開始の審判を申し立てて、かつ、それが認められて初めて後見人、被後見人といった関係になるのです。
家庭裁判所は成年被後見人の財産をある程度把握していますので、使い込みがバレてしまうことがある。
今回ニュースになったのは、後見とは関係なく遺言執行者として遺言者の財産を使い込みしてしまった。
私もある方の遺言執行者に就任しておりますが、遺言執行者は法律上は相続人の代理人とされ、割りとオールマイティーな権限を持っています。
成年後見制度上の家庭裁判所のような監督機関が存在しません。
監督するのはいわば相続人たち。
なぜ発覚したのかが気にかかりました。
京都の司法書士が遺言無視し横領
京都市の司法書士の男性が、財産の管理を担当していた女性の遺産約730万円を、盲導犬協会に寄付するとみせかけて着服したとして刑事告発されていたことがわかりました。
関係者によりますと京都市伏見区の司法書士の男性は、2005年に亡くなった女性の遺言に基づいて財産の管理を担当していました。
生前、女性は「関西盲導犬協会に対して遺産を寄付する」との遺言を作成、しかし男性は遺言に従わず女性の銀行口座から現金約730万円を引き出して着服していたということです。
「なかなか遺言を執行するといってから連絡がなかったのでどうしたのかなと思っていた」(関西盲導犬協会・古橋博昭所長)
遺産横領容疑で司法書士を告発 関西盲導犬協会
京都府内の女性の遺言執行者として財産管理をしていた京都市伏見区の男性司法書士が、女性の銀行口座から預金を引き出すなど約730万円を着服したとして、遺贈を受ける予定だった関西盲導犬協会(京都府亀岡市)が京都地検に刑事告発していたことが、協会への取材で21日分かった。
刑事告発していたのは、関西盲導犬協会です。
遺言を執行すると言って、-つまり寄付すると言って-なかなかしないのでオカシイと思われて事件が発覚したのですね。
資産家の方が、-資産家でなくても事情は同じなのですが-相続人が居ない場合に公共団体等に財産を寄付することがよくあります。
寄付、という行為は、「◯◯法人に寄付します」と言ったからといって成立するわけではありません。
受け取る側の、「もらってあげる」という意思表示が必要です。
例えば、不要な土地を寄付されても、固定資産税がかかるマイナスの財産になってしまいます。
してがって、遺言書の内容として「寄付」を入れ込む場合には、予め寄付予定の団体に内諾をとっておくのが普通。
今回の場合は現金ですし、多額でもありますし、遺言執行者である司法書士は予め関西盲導犬協会に伝えておいたのでしょう。
それがいつになっても、寄付されないので不審に思われた事件が発覚。
遺言者からしてみたら、専門職だからこそ信頼をして遺言執行者にして自分の財産の行方をお任せしたわけです。
それがこんな結果になってしまって本当に不本意だと思いますね。
今回は司法書士ですが、弁護士でも行政書士でも同じように横領のニュース報道がなされることがあります。
こういったニュースから私たちが勉強するべきは、弁護士・司法書士・行政書士といった専門職の種類ではなく、その人自身の人間性を見なければならないということ。
遺言執行者に限らず、専門職に様々な業務を委任する際には、その専門職が普段どういった活動をされているのかは注意して見て欲しいと思います。
行政書士阿部総合事務所
行政書士阿部隆昭