「自社の設備は補助金の対象になるのか?」「自分たちの業種でも採択されるのか?」
こうした疑問は、申請を検討するすべての事業者に共通するものです。
しかし、事務局から公開されている採択実績や事例資料は、グラフや専門用語が多く、「何を読み取ればいいか分からない」という声も少なくありません。
この記事では、一次情報である「第1回公募 採択結果」および「採択事例集」をもとに、これから申請を目指す事業者の皆さんが活用すべき“読み取りポイント”を解説します。

採択企業の傾向:業種・地域・規模
まず注目すべきは、どんな企業が実際に採択されているのか、という点です。
▶ 業種別の傾向
- 製造業が全体の61.7%と圧倒的多数
- 建設業(11.3%)、卸売業(5.9%)なども一定数
- 一方、飲食・宿泊・生活サービス業は1~2%台とやや少数派
▶ 都道府県別の分布
- 全国47都道府県すべてに採択例あり
- 上位は大阪(10.0%)、愛知(8.7%)、東京(7.5%)
▶ 従業員数別では?
- 最多は21~30名の事業者(13.2%)
- 5名以下の小規模でも12.5%が採択されている
▶ 資本金規模は?
- 最多は1,000万円~2,000万円未満(34.0%)
- 個人事業主や資本金500万円以下も多数採択
→ 結論:製造業中心だが、業種・地域・規模問わず幅広い採択実績あり
金額の傾向:申請額とその分布
「どのくらいの金額を申請すればいいのか?」という点も気になりますよね。
▶ 申請額の多いゾーンは?
- 最も多いのは「1,500~1,750万円未満」(17.6%)
- 続いて「2,000~3,000万円未満」(14.1%)、「1,250~1,500万円未満」(10.4%) → 補助額の上限ギリギリを狙う企業が多いことが分かります。
▶ 少額申請も可能か?
- 「500~750万円未満」や「250~500万円未満」も全体の15%超を占める
→ 事業規模に応じた申請がされている実態が確認できます。
具体的な採択事例に学ぶ:成功のポイントとは?
事例集(grant_adoption_ippan_01.pdf)には、実際に採択された事業の要点が紹介されています。
以下、業種別に1件ずつ見ていきましょう。
▶ 製造業の例(3Dスキャナー付き溶接ロボット導入)

- 熟練技術者に依存していた溶接業務を自動化
- 生産性UP+余剰人員の再配置で経営改善を実現 → 課題の明確化と省力化の論理構成が秀逸
▶ 建設業の例(加工帳自動作成+鉄筋加工自動化)

- 人為ミス削減による品質向上・工期短縮
- ベテラン技術者の技術継承に時間を割ける → 一連の業務プロセスを自動化=高評価ポイント
▶ 小売業の例(カットフルーツ加工の自動化)

- 人手不足解消 → 商品開発・販路拡大へ人材再配置 → 省力化の先に“売上増”まで描けている点がカギ
▶ 宿泊業の例(宿泊管理システムの一元化)

- フロント業務の効率化+顧客単価UPを狙う → 単なる業務効率化だけでなく、サービス強化にも触れている点に注目
▶ 飲食業の例(オートフライヤーなど複数設備の導入)

- 業務の標準化・調理工程の自動化によるコスト削減 → 業務改善とブランディング両方に好影響
事例から見えてくる採択の共通点
すべての採択事例において、以下の5つの共通点が明確に確認できました。
1. 導入前の課題が具体的に説明されている
すべての採択事例に共通していたのは、「現在の業務のどこにボトルネックがあるのか」「人手・時間・品質のどの側面に課題があるのか」が明確に言語化されていた点です。例えば、「ベテラン職人に頼らざるを得ない工程がある」「転記ミスが頻発してクレームにつながっている」「慢性的に人手が足りない」など、日常業務のリアルな問題点を丁寧に描いていることが、補助金申請の起点として高く評価されていました。
2. 導入後の変化が定量的に表現されている
補助金の審査は「感覚的な便利さ」ではなく、「どれだけの時間が短縮されたか」「どれだけの人手が削減できたか」といった数値的な裏付けを求めています。たとえば「1件あたりの処理時間が30秒短縮」「月間で20時間分の作業時間を圧縮」といった具体的なデータをもとに、導入の前後でどのような変化が起きたかを「数字で“見える化”」している事業が、数多く採択されていました。
3. “余剰人材の再配置”に触れている(=賃上げとリンク)
単に「業務が楽になった」だけではなく、「余った人員を別の工程に配置し、より付加価値の高い業務に従事させることで売上や利益を上げ、結果として賃上げにつなげる」という論理構成が非常に重視されています。これは、補助金の制度上「賃上げ」が重要な評価軸であることからも当然であり、再配置が給与向上や福利厚生の充実にどう貢献するかを説明している事例が高評価につながっていました。
4. 自動化・省力化の範囲が“全体業務”に及ぶほど評価が高い
一部分だけの改善よりも、業務プロセス全体に及ぶ構造改革型の投資が高く評価されています。たとえば「受注→生産→納品」までを一貫してデジタル化した例や、「予約受付→会計→売上管理」までを一元管理するシステム導入など、単体機器の購入よりも“業務の流れ全体を省力化する設計”ができている企業が、より採択に近づいていました。
5. 補助金で終わらず、売上UP・品質UPなど経営改善を描いている
補助金を使って終わり、ではなく、「補助金を使って何を目指すのか?」という視点がしっかり書かれていることが共通しています。たとえば「自動化で捻出した時間を新商品の開発や営業活動に活用」「データ集約によって顧客分析が可能になり、リピート率が改善」など、“省力化”の先にある事業成長やブランディング戦略まで見据えた構想が採択に直結していることが分かります。
まとめ
「うちは飲食業だし…」「人数が少ないから…」とあきらめる必要はありません。
実際の採択実績を見ると、
- 小規模・地方企業でも多数採択
- 業種に関係なく「課題→改善→成果」の構造がある提案が通っている
ことが分かります。
つまり、「どんな機械を買うか」ではなく、
「その設備で、どんな改善が起きるのか?」を描けるかどうかがポイント。
申請を検討されている方は、ぜひ採択結果や事例を自社の立場で置き換えてみてください。
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