──採択を勝ち取るためのAI活用術と「自分自身から出た言葉」の重要性

はじめに
補助金の事業計画書を作成する――多くの小規模事業者にとって、頭を悩ませる作業です。特に、小規模事業者持続化補助金(以下「持続化補助金」)のように「販路開拓」「業務効率化」「経営計画」の要素が問われる制度では、自社の強みをどう語り、取り組み内容をどう明確にするか、迷いが生まれやすいでしょう。
2025年に入ってから明らかに変化を感じますが、生成AIを活用して事業計画書を作成する事業者も格段に増えた印象です。
ここで重要なのは「AIを使えばよい」という単純な発想ではありません。AIを“ツール”として活用しながらも、申請する事業者自身の視点・経験・想いを反映させた事業計画書でなければ、審査員である読み手の“心”を動かすことはできないのです。
今回の「行政書士阿部隆昭ブログ」では、なぜ“自分の言葉”が必要なのか、AIはどこまで役立つか、そしてどう活用すれば効果的かを整理していきます。
1.AIが活用できる範囲とそのメリット
まずは、AIを使うこと自体のメリットを整理しておきましょう。AIは、あなたの作業を「拡張」し、「補助」してくれる強力なツールです。
- 時間短縮: 膨大な公募要領や過去の採択例を手早く整理し、方向性をつかみます。公募要領理解までの時間を大幅に短縮できます。
- 構成案・草案の生成: 事業計画書の骨格(自社概要→強み→課題→取組→効果予測)をAIに支援させることで、「何を書いたらいいか分からない」状況から脱却できます。
- 言い回し・体裁の整備: 文章の読みやすさ、論理のつながり、重複表現の解消など、“書く”負荷を軽減します。日本語での表現に不安がある申請者にとっては、文法や表現の誤りを修正し、論理的な文章に整える強力な補助となります。
- データ・市場背景のサポート: 関連データやトレンドを整理し、文章に裏付けを入れるための情報収集をサポートします。
このように、AIは「書くための助走」「調べるための加速装置」として非常に有効ですよね。
2.しかし“AI任せ”では通らない3つの理由
ただし、AIを使ったからといって「採択可能性」が高まるわけではありません。むしろ、“AI頼み”の書き方が逆効果になる可能性があります。その理由を3つ挙げてみましょう。
(1)読み手に「この会社らしさ」が伝わらない
補助金の審査では、事業者が「自ら考え、自ら動く」意志・主体性が重要視されます。 AIが生成した文章は構文が整いやすい反面、どこか“誰が言っているか分からない”文章になりがちです。特に、AIは補助金文書に頻出する「常套句」(例:地域経済に貢献、顧客満足度を向上など)を多用する傾向があり、審査員はAI特有の定型パターンを見抜きやすいのです。 「この会社だからこの取組をやる」という独自性・説得力が弱ければ、評価で差が出ます。
(2)オリジナリティ・矛盾・浅さが露呈しやすい
AIに書かせた文章は“言葉としては綺麗”ですが、事業者自身が“なぜこの取組を選んだか”という“深み”が薄くなりやすいです。 また、AIによる自動生成は“情報の寄せ集め”になりがちで、書類中に自社の実態と合わない記述や浅い仮説が混じると、審査側や後の実績報告時に疑義を招く可能性があります。 AIの力を借りるならば、“自分の言葉・自分の背景・自分のデータ”を入れ込むという作業が不可欠です。
(3)“誰が書いたか”が読み手の信用に直結する
補助金の申請では、記載内容だけでなく“経営理念や創業動機”などもも評価対象になります。 もし「AIに任せました」「テンプレートそのまま」という印象を審査側が持った場合、それ自体がマイナス要因となり、申請者自身の計画に対する信憑性が疑われかねません。
3.では、AIはどう使えばいいか? “拡張”と“補助”の使い方
それでは、ではどうすれば「AIを活用しつつ、自分の言葉で届ける」事業計画書が作れるのでしょうか。実践的なステップを紹介します。
ステップ①:自身の言葉で原料(素材)を用意する
まず、AIを動かす前に、自社の言葉で次の問いに答えてみることをおすすめします。この“素材”が乏しいと、AIから出力される文章が“表面的”になってしまいます。
- 私の信念: なぜこの事業をやるのか?(私の背景/私の信念)
- 経営課題: 今、自社が抱えている経営課題は何か?(数値・感覚)
- 強みと変革: この補助金を使って、どんな取組をしたいか?その取組で何を変えたいか?
ステップ②:AIには“文脈・構成”を任せる
素材が揃ったら、AIに次のような使い方をすると効果的です。
- 素材を読み込ませ、構成案(章立て・流れ)を作ってもらう。
- 各章ごとに「この素材を文章化して」「ターゲットは審査員」「自社の強みを活かす」といったプロンプト(指示)を明確に入れる。
- 出力された草案を“自身の言葉に置き換える/膝を打つ語り口に変える”作業を行う。
- 最後に、文章を“自身の経験・エピソード”で肉付けする。「実例」「体験」「そこから学んだこと」を必ず入れましょう。
ステップ③:必ず“読み手視点”でチェックする
AIが出力した文章をそのまま使うのではなく、次の観点で必ずチェックしましょう。
- 説得力: 審査員が「この申請者ならこの取組をやり抜けそうだ」と感じるか?
- 論理構造: 強み→課題→取組→成果の流れが論理的か?
- 具体性: 数値根拠・KPIが具体的か?(定量+定性)
- 独自性: 自社の言葉・エピソードが十分に入っているか?
- 体裁: 語尾・体裁が統一されており、読みやすいか?
4.まとめ:AIはあなたの声を「拡張」するツール
補助金申請において、AIは確かに“味方”です。時間を節約し、構成を整え、言葉を磨いてくれます。特に、日本語での表現に不安がある申請者にとっては、論理的で正確な文章に整える強力な補助となります。
ですが、AIはあなたの声・あなたの経験・あなたの意志を代弁してくれるわけではありません。
持続化補助金で『この会社だからこの事業をやる』『この取組でこのように変わる』という説得力を届けるためには、“自分の言葉”が不可欠です。
AIは、あなたの考えを拡張し、補助し、整えるツールとして使いましょう。そして、事業計画書には必ず次の要素をあなた自身の言葉で残してください。
- あなたの背景・課題・強み
- 取組の具体的な流れ・数値根拠
- 成果予測・KPI
- 誰がいつ何をどう変えるのか
補助金申請は誰かの代わりにはできません。あなた自身が“主体”だからこそ、計画書が生きるのです。ぜひAIを“味方”にしながら、あなたの声を響かせる計画書を完成させてください。
行政書士阿部総合事務所 行政書士阿部隆昭
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