課金ゲームアプリ事業者の運営管理で注意すべきものとして資金決済法上の届出義務が話題になっています。
資金決済法では、ある一定の基準に達した前払式支払手段発行者に届出義務や登録義務を課しており(資金決済法第2条第1項)、その届出や登録を行った者のことを「前払式支払手段発行者」と定めています。
整理しますと、
前払式支払手段発行者とは、資金決済法上の前払式支払手段発行者としての届出書を提出した者、また、登録を受けた法人のことを指します。
つまり、届出書も提出せず、登録も受けないうちは、資金決済法上の「前払式支払手段発行者」ではないということです。
(定義)
資金決済法第二条
この法律において「前払式支払手段発行者」とは、次条第六項に規定する自家型発行者及び同条第七項に規定する第三者型発行者をいう。資金決済法第三条
6 この章において「自家型発行者」とは、第五条第一項の届出書を提出した者(第三十三条第一項の規定による発行の業務の全部の廃止の届出をした者であって、第二十条第一項の規定による払戻しを完了した者を除く。)をいう。資金決済法第三条
7 この章において「第三者型発行者」とは、第七条の登録を受けた法人をいう。
自家型発行者が届出、第三者型発行者が登録、となっていることも大きな違いですので注意してくださいね。
条文は細かすぎるぐらいに丁寧に読むのが理解のコツ。
「届出書を提出した者」であって、提出する者ではありません。
「登録を受けた法人」であって、登録を受ける法人でもありません。
全ての事後的ですので、提出済みの者、登録を受けた法人となります。
さらにもう少し細かく読んでみます。
自家型発行者の場合には、届出書を提出した「者」
第三者型発行者の場合には、登録を受けた「法人」
自家型発行者の場合は、どうして届出書を提出した「法人」ではなく、「者」になっているのでしょうか?
第三者型発行者の場合は、登録を受けた「者」ではなく、登録を受けた「法人」となっています。
その答えは、資金決済法第5条に書いてあるのです。
(自家型発行者の届出)
第五条 前払式支払手段を発行する法人(人格のない社団又は財団であって代表者又は管理人の定めのあるものを含む。)又は個人のうち、自家型前払式支払手段のみを発行する者は、基準日においてその自家型前払式支払手段の基準日未使用残高がその発行を開始してから最初に基準額(第十四条第一項に規定する基準額をいう。)を超えることとなったときは、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した届出書を内閣総理大臣に提出しなければならない。自家型前払式支払手段の発行の業務の全部を廃止した後再びその発行を開始したときも、同様とする。
先ほど資金決済法第三条で、資金決済法第5条第1項の届出をした者が「自家型発行者」となることを確認しました。
自家型発行者が「法人」と定めていないのは、個人でも自家型発行者となるからなのですね。
「法人又は個人」と規定されています。
対して、第三者型発行者の場合にはどのように規定されているかといいますと、
(第三者型発行者の登録)
第七条 第三者型前払式支払手段の発行の業務は、内閣総理大臣の登録を受けた法人でなければ、行ってはならない。
条文には、「個人」は入っていません。
「法人」のみです。
さらに深くみてみますと、自家型発行者の届出事項、第三者型発行者の登録事項にもその違いが現れています。
自家型発行者の届出事項抜粋
一 氏名、商号又は名称及び住所
二 法人にあっては、資本金又は出資の額
第三者型発行者の登録事項抜粋
一 商号又は名称及び住所
二 資本金又は出資の額
自家型発行者の場合には、「個人」も想定しているので、「住所」の項目も入っています。
また、「法人にあっては、」という断り書きもわざわざ入っていますよね。
第三者型発行者の場合には、個人を想定していないので「氏名」は記載なし。そもそも法人した想定していないために、「法人にあっては、」という文言もありません。
さて、ここまでに書いたものとその他を表でまとめてみます。
前払式支払手段発行者 | ||
種別 | 自家型発行者 | 第三者型発行者 |
主体の別 | 個人又は法人 | 法人のみ |
届出又は登録の時期 | 届出 | 登録 |
届出又は登録の時期 | 基準日未使用残高がその発行を開始してから最初に基準額を超えることとなった基準日の翌日から二月を経過する日までに届出 ※資金決済法第5条、内閣府令第9条 |
発行時に登録申請 ※資金決済法第7条、内閣府令第14条 |
帳簿の作成義務 | 有り 1.管理帳 2.日記帳 3.在庫枚数管理帳 ※資金決済法22条、内閣府令46条 |
これでも自家型前払式支払手段発行者届出のほんの一部の解説です。
資金決済法や内閣府令、ガイドライン等を読み込むことが必要になりますので、実際の届出手続きはかなりの難作業が予想されます。
・リリースしているアプリの課金システム(仮想コイン、仮想通貨)が資金決済法に定める自家型前払式支払手段になるのか判明しない。
・基準日現在で未使用残高が1000万円を超えている。
・自家型前払式支払手段発行者届出手続きを代行して欲しい。
以上のような事業者様は、行政書士阿部総合事務所にご相談ください。
行政書士阿部総合事務所の代表行政書士阿部隆昭は、東京商工会議所主催のソーシャルメディアセミナーに講師として登壇するなどソーシャルメディア関連に強い行政書士です。
また、財務局長など官公署への届出手続きの代理は法律上行政書士に認められていますので、安心してご相談ください。
【自家型前払式支払手段発行者届出代行手続きのご依頼の流れ】
お問い合わせフォームから以下の内容を入力して送信してください。折り返し、当職からご連絡致します。
1.商号
2.本店所在地
3.連絡先電話番号
4.連絡先メールアドレス
5.ご担当者の部署及び氏名
【対応地域】
東京都 (全国対応可)
【手続き報酬】
金500,000円(税別)
報酬に含まれるもの
・自家型前払式支払手段届出コンサルティング
・届出書作成及び添付書類作成
・発行保証金供託手続きのための法務局同行(手続きは事業者ご自身で行っていただきます。)
・財務事務所への立会同行
※日当交通費は別途
※東京都23区以外の事業者様の場合には別途日当交通費宿泊費等を相談します。
【自家型前払式支払手段発行者 参考資料】
資金決済に関する法律(平成二十一年六月二十四日法律第五十九号)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H21/H21HO059.html
前払式支払手段に関する内閣府令(平成二十二年三月一日内閣府令第三号)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H22/H22F10001000003.html
金融庁 法令・指針等
http://www.fsa.go.jp/common/law/guide/kaisya/
5.前払式支払手段発行者関係
本文 http://www.fsa.go.jp/common/law/guide/kaisya/05.pdf
別紙様式集 http://www.fsa.go.jp/common/law/guide/kaisya/y05.pdf
法務省 供託手続きについて
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07.html