顧客をランク付けすることで適切な施策を打つのも大切なマーケティングの一つ。
すごく簡単に言いますと、商品やサービスを提供している中で、”このお客さんはいいお客さん”だなあ、とか、”この客はダメ”とか思うこと、ありますよね?
絶対にあるはずなのですが、それを感覚として捉えるか、データとして捉えるかもまた違っていて。
顧客ロイヤリティーとかいう、お客さんのランク付けをすることがあるのですね。
そのときに、どのようにランク付けするかも実は難しいのですが。
飲食店を営んでいるとしましょう。
毎日ランチに来てくれるAさん
週に3回、夕飯どきに来てくれるBさん
月に1回のイベントの時だけに来てくれるCさん
毎日来てくれるAさんの印象はどうしても感覚的に強くなり、”いいお客さん”に分類されそうですよね。
一週間にするとAさんはどれぐらいお店に払っているのかというと、ランチ800円、平日5日間とする、4000円、ですよね。
Bさんは、週に3回、夕飯時に通ってくれています。利益率の高いサワーも2杯、つまみと定食で毎回2000円払っていきます。なので一週間で6000円ですか。毎日顔を合わせるAさんよりも、Bさんの方がお店に貢献しているのです。
月に1回しか来ないCさんはどうでしょう。イベントの会費6000円とすると、週にすると1500円しかお店に落としてくれていません。Aさんよりも、Bさんよりも、来店頻度も低いし、お金も全然使ってくれないし、ダメなお客さんですね、一見。
が、しかし。
ここからが難しいというか面白いところでして。
Cさんの紹介で新たにお店に来てくれるお客さんが居たとしたらどうでしょうか?
直接Cさんが店に来るのは月に一度ですが、Cさんからの口コミで来店したお客さんが、Aさんのような客、Bさんのような客だとしたら、実はあっという間に、Aさん一人が使った金額、Bさん一人が使った金額を上回ってしまうことがあるのです。
Cさんのような存在を「宣伝してくれる顧客」と呼ぶこともあるのですが、顧客のランク付けでもっとも大事にすべきおお客さんです、実は。
「宣伝してくれる顧客」はその人のパーソナリティーとしてその性質を持っていることもあるのですが、たいていの場合、キッカケに基づいています。
つまり、飲食店側が宣伝してくれる顧客を作りたいと思って、行動すれば「宣伝してくれる顧客」を作ることができるのです。
宣伝してくれる顧客はどのようにすれば作れるのでしょうか?
値引きしてあげる、割引チケットをあげる、安くしてあげる、全部ダメ、むしろ逆効果になりやすい。
宣伝してくれる顧客を作るには、何らかの絆が必要です、間違いありません。
金で作られた関係は、絆には変化しません。
金はそもそも万能な交換価値として機能しています。何にでも交換できる、これだけは無理だと思われている「愛」といったものさえ、形式的なものであれば金で交換できる。
だけど、人と人との関係を金で交換することが難しい。
顧客の宣伝は、人と人との関係でなされる以上、金で繋ぐのは難しいのです。
だから、Cさんに”安くしときますよ!”といっても、絶対に宣伝してくれません。他のお客さんを連れてきてくれません。
では、どうしたら良いのか?
体験、体験しかありません。
金では心は動かないけれども、体験、体験によっていとも簡単に人の心は動きまくってしまいます。
例えば、バースデーパーティーをしてくれた。
お誕生日会をしてくれて喜ばない人はこの世にいない。
誕生を祝ってくれるなんて、そりゃ年齢によっては恥ずかしいかもしれないけれど、嬉しいという気持ちはあるはず。
心は絶対に動く体験。
お誕生日の翌日、その人はどう行動するか?
「いやね、昨日、お店に行ったらさ、誕生日パーティーとかやってくれてさ、恥ずかしいったらありゃしないよね。でも、あの店、本当にいい店なんだよね。今度一緒に行ってみる?」
という会話を何人ともすることになります。
ごくごく簡単に説明しましたが、こうして宣伝してくれる顧客を生み出すことも実はできます。
その顧客が宣伝力があるかどうかは別の問題ですよ。
しかし、この「宣伝してくれる顧客」というのは、よく言われる「愛されるお店」とも直結しています。
創業支援業務を日々行なっていますとね、「愛されるお店にしたい」って皆、言うわけです。
愛されるお店、誰でも愛されないよりは愛された方がいいに決まっているのですが、どう愛されるか、も考えた方がいいですよね。
直接的で分かりやすいから仕方がないし、お金をたくさん落としてくれるお客さんを優良顧客として扱いがちなのだけれども、その優良顧客は「宣伝してくれる顧客」ともなってくれているのか、もよくよく考えてみたいところです。
事業を創るのは本当に難しいですよね。
私も日々勉強です。
解決支援コンサルタント阿部隆昭