はじめに
「遵法精神を持って在留するベトナム人労働者の力になりたい。」
この言葉は、行政書士阿部総合事務所が「ミラキャリ」という外国人支援プロジェクトを立ち上げた原点です。ベトナム人の友人と二人で立ち上げたこのプロジェクトは、単なる理念ではなく、具体的な行動から生まれました。
2022年、私、行政書士阿部隆昭はビジネス視察のためベトナム・ハノイを2度訪問しました。一度目は現地の教育機関と技能実習について協議するため、二度目は送り出し機関と面談し、その実態をこの目で確かめるためでした。この経験等を通じて、日本に暮らす在留ベトナム人の状況が、数字や報道以上に「実感」として私に迫ってきました。
そして2025年、「情報の届かないところに支援は届かない」という課題に直面し、私たちは行動を起こしました。ベトナム語が話せなくても、AI翻訳と専門知識を組み合わせれば、確かなサポートが可能になると信じ、「日越未来キャリアサポート」がスタートしました。

ミラキャリとは?:週刊型レポートで在留ベトナム人のキャリア戦略を考えて伴走する。
「ミラキャリレポート」は、日本在住のベトナム人労働者向けに週刊で発行されるレポートです。
在留ベトナム人が日本国内で適法に暮らすための知恵や、帰国後のキャリア戦略について情報支援を行なっています。具体的には、在留資格、労働ルール、家族ビザ、キャリア、日本語、犯罪リスクなど、身近で切実な話題を扱っています。行政書士としての一次情報と、在留ベトナム人当人の生活感覚、AIによる言語処理、を組み合わせることで、わかりやすく、かつ正確な情報提供を目指しています。
現在、2025年7月時点で、以下のレポートが展開されています。
号数 | テーマ |
001 | 日本で働くための基本的なビザの仕組み |
002 | 家族滞在・留学ビザの就労制限「28時間ルール」 |
003 | 日本語能力試験(JLPT)とキャリアの関係 |
004 | 生活態度と在留資格更新の関係(違反事例含む) |
005 | 特定技能ビザへの切り替えでよくある誤解 |
006 | ベトナム人の日本での起業手続きと注意点 |
007 | 在留中の犯罪がもたらす重大なリスク |
008 | 家族を日本に呼び寄せるための家族滞在ビザ要件 |
なぜ、行政書士が“情報発信”にこだわるのか?
多くの行政書士の仕事は「依頼を受けて書類を作成すること」です。しかし私は、以下のような強い課題意識を持っていました。
- 「相談に来たときにはもう遅い」
- 「正しい知識が早く届いていれば、人生は変えられたかもしれない」
- 外国人コミュニティでまことしやかに通用している「情報」の信憑性
- 外国人は、在留に関する情報をYouTubeやTikTokなどが得ているという事実
これは、日本語の壁や文化の壁の中で孤立し、失敗を「無知」のせいにされる多くのベトナム人支援の現場から痛感したことです。
その意味で、ミラキャリは「情報による予防型支援」のモデルケースです。書類作成が“事後的”な仕事であるのに対し、ミラキャリは“事前的”なセーフティネットとなることを目指しています。
どこにでもある失敗が、退去強制につながる日本の現実
ミラキャリ007「在留外国人が日本で犯罪を犯すとどうなるか?」では、万引きや口論、名義貸しといった”つい”の行動が、どれほど深刻な結果を招くかを具体的な事例と共に紹介しました。
多くの日本人にとっては「反省して終わり」かもしれない行為が、在留外国人にとっては「人生の終わり」になりかねません。これは、制度上の“非対称性”の問題です。私たち行政書士の役割は、単に制度を説明するだけでなく、「その制度の運用が、どんな人生に影響を与えているか」を伝えることにあると考えています。

行政書士阿部総合事務所が描く今後の展望
今後、ミラキャリは以下のような展開を予定しています。
- 月刊ではなく「週刊」の発行継続(毎週A4一枚)
- LINEとChatworkを活用した相談チャネルの整備
- 動画・イラスト・音声など視覚・聴覚でわかる多言語解説の強化
- ミラキャリに関わったベトナム人支援者との協業プロジェクト
- ハノイとの二国間オンライン相談会(実証テスト中)
結び:情報が変えるのは「制度」ではなく「人の選択」
行政書士として、私は制度をよく知っています。しかし、それだけでは足りません。
大切なのは、人間の選択と物語に目を向けることです。
情報は、人を動かします。そして、人が動けば、制度も変わっていく。その起点として、ミラキャリが「小さな希望のメディア」であり続けられるよう、私はこれからも活動を続けていきます。
行政書士阿部総合事務所/ミラキャリ運営チーム