【ものづくり補助金】設備投資とシステム構築費の「補助対象経費」を世界一やさしく解説
ものづくり補助金の相談を受けていて、いちばん質問が多いのが
「どこまでが補助対象経費になるのか?」 というテーマです。
特に最近は、AI・クラウド・業務システムの導入が増えており、
- クラウドシステムのようにモノが残らない投資でも本当に大丈夫?
- サブスク利用料は? 設定費用は?
といった不安の声を、多くの事業者さんから耳にします。
・公募要領p.21「2.7」「補助対象経費」の内容を、やさしく整理する
・設備投資と「機械装置・システム構築費」の“線引き”をイメージできるようにする
・よくある失敗(交付決定前の発注・支払い方法のミス等)を事前に防ぐ
行政書士阿部隆昭が率いる行政書士阿部総合事務所では、
補助金ドクター診断(powered by LDAM)を通じて、
「採択可能性を高める補助金活用をお手伝いしています。
1.そもそも「補助対象経費」とは何か?
まず、用語の整理から始めましょう。
補助対象経費=「補助事業のために実際に支払うお金のうち、国が“対象にしてよい”と認めた部分」です。
つまり、次の2つの条件を満たす必要があります。
- 補助事業の目的を達成するために本当に必要な支出であること
- 公募要領で「補助対象経費」として認められている種類の支出であること
このうち、本記事で扱うのは「設備投資(機械装置・システム構築費など)」に関するルールです。
ものづくり補助金では、ここが必須条件になっているため、最初にしっかり押さえておきましょう。
2.設備投資が「必須」な理由と基本ルール
(1)本補助事業では設備投資が必須
公募要領p.21「2.7.1」では、冒頭で次のように明記されています。
- 本補助事業では設備投資を行うことが必須
- 設備投資は必ず単価50万円(税抜)以上の機械装置等を取得して、納品・検収を行い、適切に管理すること
ポイントは2つです。
- 経費の中に「単価50万円以上の設備投資」が含まれていないと、そもそも要件を満たさない
- “なんとなく便利になりそうなソフトやサービス”だけでは、申請の土台に乗りにくい
国としては、この補助金を通じて「中小企業の生産性を押し上げる設備投資」を後押ししたい、という明確な意図があります。
だからこそ、「設備投資がない計画」は、ものづくり補助金の枠組みから外れてしまうのです。
(2)事業費全体のうち 3 分の 2 以上が「補助対象経費」であること
さらに、公募要領では次のような条件も定められています。
補助対象経費(税抜)は、事業に要する経費(税抜)の 3 分の 2 以上であることが必要。
かんたんに言い換えると、
- 補助事業にかかるお金全体のうち、少なくとも3分の2以上は「補助対象経費」で構成されていること
- 残り3分の1以内であれば、広告費・研修費など、他の経費が含まれていてもOK(※別途ルールあり)
例えば、事業全体で1,500万円使う計画なら、そのうち少なくとも1,000万円以上は
「機械装置・システム構築費などの補助対象経費」である必要があります。
「補助金でもらえる分(たとえば1,000万円)さえ対象経費ならいいんでしょ?」
→ 実際には事業全体の構成がチェックされます。設備投資の割合が低すぎると、計画全体の説得力が落ちてしまいます。
3.「機械装置・システム構築費」と「その他経費」の関係をイメージする
(1)機械装置・システム構築費とは?
公募要領では、
「機械装置・システム構築費(海外子会社への外注費における機械装置・システム構築費にあたる経費を含む)」
と定義されています。
イメージしやすいように、代表的な例を挙げてみます。
- 生産ラインの加工機、検査機、搬送機など
- 3Dプリンタ、NC旋盤、ロボットアーム
- 業務用サーバ、制御盤、IoT機器
- 生産管理システム、在庫管理システム、予約管理システムなどの構築費
共通するのは、「事業の中で継続的に使われる“道具”であり、資産として残るもの」という点です。
ハードウェアだけでなく、業務システムの構築費もここに含まれます。
(2)「その他の経費は500万円まで」の意味
同じセクションの中に、次のような一文があります。
(グローバル枠の場合は1,000万円)
ここでポイントになるのは、「機械装置・システム構築費が500万円まで」ではなく、
「機械装置・システム構築費“以外”の経費の合計が500万円まで」という意味だということです。
「以外の経費」の例:
- 技術指導や研修のための専門家経費
- 機械の運搬費・据付費
- 試作品の原材料費 など
計画の「主役」はあくまで 機械装置・システム構築費。
それをサポートする「脇役」(専門家経費や運搬費など)は、合計500万円までが補助対象になります。
そのため、システム中心の投資計画を組む場合でも、構築費そのものには上限はありません。
ただし、「サポート的な経費」に頼りすぎると上限500万円にすぐ達してしまうため、
設備・システム本体にしっかり投資する構成が大切になります。
4.交付決定前の発注・契約・購入は「原則NG」
補助金ではおなじみのルールですが、ものづくり補助金でも
「交付決定日より前に発注・契約・購入したものは、原則として補助対象外」です。
・採択される前から納期を気にして先に注文してしまう
・「見積書」のつもりで、実は注文書にサインしてしまっている
・リース契約・サブスク契約を先に結んでしまう
見積を取ること自体は必要です。しかし、「契約」「注文」「支払い」につながる行為は、
交付決定後までしっかり待つ必要があります。
ここを守れていないと、せっかく採択されても、後から
「その設備は対象外です」と言われてしまうケースもあります。
5.支払い方法のルール:現金NG・カードは原則NG
補助対象経費として認められるためには、「いつ、どの名義で、どのように支払ったか」も重要です。
・支払いは補助事業実施期間中に行うこと
・支払い方法は、補助事業者自身の名義で行った銀行振込で確認すること
・現金払い・クレジットカード払いは原則不可
・やむを得ずカード等を使う場合は、事前に事務局へ相談すること
ここで求められているのは、「お金の流れを客観的な証拠で追える状態」です。
銀行振込であれば、振込明細・通帳コピーなどで、いつ・誰から誰へ・いくら支払ったのかが一目でわかります。
実務上のポイント:
- 社長個人名義の口座から支払った場合はNGになることがあります。必ず法人名義の口座から支払うようにしましょう。
- 外国送金の場合は、送金手数料・為替レートなども記録として残しておくと安心です。
6.見積取得と「価格妥当性」をどう示すか
補助金交付候補者として採択されると、次のような追加ルールが登場します。
- 単価50万円(税抜)以上の物件等については、原則として2者以上から同一条件による見積書を取得する
- 価格の妥当性を確認できるよう、仕様書・比較表などの提出を求められることがある
ここで重要なのは、「一番安い会社を選ばなければならない」という話ではない、ということです。
- 性能・サポート体制・既存システムとの相性などを含めて、総合的に判断してよい
- ただし、「なぜその会社を選んだのか」を説明できるようにしておく必要がある
たとえば、次のような説明ができていれば十分です。
- 最安値ではないが、導入後の保守体制が充実している
- 類似業種への導入実績が多く、トラブル時の対応も期待できる
- 自社の既存システムとの連携実績があり、リスクが低い
7.よくある「落とし穴」3パターン
① サブスクや運転費だけで計画を組んでしまう
便利なクラウドサービスを並べただけの計画は、
設備投資としての厚みに欠けると判断されがちです。
「どの設備・システムを導入し、それによってどの業務がどれくらい改善されるのか」を、具体的に描きましょう。
② 交付決定前に“うっかり契約”してしまう
特にシステム案件では、要件定義書やPoC(試験導入)からそのまま本契約に移行してしまい、
気づいたら交付決定前に契約・支払いが完了していた、というケースもあります。
「正式な契約・注文は、交付決定通知が届いてから」とチーム内で共有しておくことが大切です。
③ 個人カード・現金払いで支払ってしまう
急ぎの支払いだからといって、社長個人のクレジットカードや現金で支払ってしまうと、
後から補助対象経費として認められない可能性が高くなります。
「法人名義の口座からの振込」を、社内ルールとして徹底しましょう。
8.まとめ:お金の流れを設計できれば、補助対象経費は怖くない
ここまで、ものづくり補助金の「補助対象経費」、特に設備投資とシステム構築費について見てきました。
- 設備投資(単価50万円以上)は必須条件であること
- 事業費全体のうち3分の2以上が補助対象経費で構成されている必要があること
- 「機械装置・システム構築費」が主役であり、それ以外の経費は合計500万円までが上限であること(グローバル枠除く)
- 交付決定前の発注・契約・支払いは原則NGであること
- 支払い方法は、原則として法人名義の銀行振込であること
- 見積と仕様書を通じて、「価格の妥当性」を説明できるようにしておくこと
補助対象経費のルールは、一見すると細かくて複雑に感じられるかもしれません。
ですが、本質的には、
を、筋の通った形で示してほしい――というシンプルな要請です。
もしこの記事を読んで、
- 自社の計画が補助対象経費のルールに合っているか不安
- システム中心の投資計画をどう組み立てればよいか相談したい
- 付加価値額・賃金要件とのバランスも含めて整理してほしい
と感じられた場合は、補助金ドクター診断(powered by LDAM)の活用もご検討ください。
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補助対象経費を「よくわからないから怖いもの」として避けるのか、
「きちんと理解したうえで、事業と社員の未来のために活かす」のか。
この記事が、後者を選ぶための一歩になれば嬉しく思います。
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