あるモノゴトがあったとして、それについて確定的な判断を下せるかどうかがプロとの違い。
専門的なことになってしまいますが、ある人が財産を誰かに承継させたいと思っているとします。
そのときに、その人の意思を実現する方法として、”こちらが正しい”と信頼感をもってしっかりと伝える事ができるかどうか。
遺言書として書き残すほうがいいのか?、死因贈与契約をしておくほうが将来的に正しい選択肢なのか?
もちろん、考えられる二通りの方法のどちらも捨てがたい、とか。
本当はこっちの方法がいいけれど、事情を考えるとあちらを選択せざるを得ない。
といったこともあります。
それでも、理由をもってその選択肢を説明できる。
これがプロだと思います。
その判断をするには、もちろん知識に裏打ちされていなければいけないし、何よりも経験を積み重ねることがチカラになる。
もうちょっと例えを分かりやすくしようと思うんですが、メガネの調整の場面。
なんで、突然、メガネと思うかもしれませんが、私、元メガネの販売をやっていました。
かなり前のことですが。
最近、プラスチックのフレームが流行っていますよね。
「セルフレーム」などと言ったりします。
セルフレームのいいところは、オシャレで加工もしやすいところ。
さまざまな色使いやカタチがありますので、その人の顔のカタチや好みにあったものを探しやすい。
ところが、重大なデメリットがありまして、それは調整がしにくいんですね。
メガネを買った時に、メガネ屋さんで調整しますよね。
あれがすっごくやりづらいんです。
メタルのフレームのように、「言うことを聞かない」
といっても、私たちプロからすると、メタルフレームよりは調整し易い面もあります。
基本的に温めるだけでOKだからです。
金属を曲げたりする余計な道具は必要ありません。
セルフレームに、「言うことを聞かせる」には温めるしかありません。
メガネ屋さんには、専用の温風機がありますが、ドライヤーでももちろん代用できます。
ということは、技術があれば家庭で調整が出来るんです。
さて、ここでタイトルにやっとつながります。
というか、つなげます、ちょっと無理やりかな。
一般の人は、”温めるだけでいいんでしょ?”なんていいますが、この温め方の感覚が実はとても難しい。
メガネ屋さんには練習用のフレームがたくさんありますので、わたしも練習時代は何本ものフレームを折って壊して熔かしました。
経験を積み重ねて、感覚を覚えていくんですね。
折れない加減
熔けない加減
で、これって「感覚値」なので教えられないし、見よう見まねで出来るものでもないんです。
”そうは言っても、実は簡単なんでしょ? だって、温めて曲げるだけじゃん”
”自分でも出来るでしょ”
そう、おっしゃる方もたしかにいらっしゃる。
でも、それ自分のメガネでできますか?と言ったら、やはり怖くてできない。
せっかく買ったし、日頃慣れ親しんでいるメガネを壊すかもしれないと思ったら、手を加えられないです、普通は。
でも、プロは。
”暖め過ぎ?、曲げていい?”といった判断を無意識のうちにやっていて、何事もなく調整しています。
今では業としてメガネの調整はやっていませんが、一旦身についた感覚は消えることがないので「普通」に調整することができます。
といいますか、自分より上手にメガネの調整を出来る人は過去に一人しか会ったことがないので、他のメガネ屋さんに調整してもらうのはちょっとコワイです。
余談ですが、その「一人」は今はメガネ業界にいません。
なので、その「一人」の技術を受け継いでいるのは私一人です。
”なにを大げさな”と思う方もいらっしゃると思いますが、本当に突き詰めるとメガネの調整って難しいんです。
メガネの調整については、一家言あるので無限に書いてしまいそうですし、この辺で。
そう、メガネの話をしたいんじゃなく、結局はこういうことなんじゃないかと思って書き始めたのでした。
少しづつしか進んでいないと、
このままじゃ目標に到達しないんじゃないか?
とか、
そもそも道、間違ってない?
と思うこともままありますが。
積み重ねたこと全てが経験値となって実は成長していた。
本人が気がつかないうちにプロとしての感覚が備わっていた。
といったこともあるので、何事も諦めちゃいけないなと思っています。