最近、「信託」という言葉を聴くことが多くありませんか?
従来は一部の不動産金融業界でしか利用されていなかった信託。
私も信託法の改正前に、信託スキームの中で不動産管理処分信託契約証書などのリーガルチェックや契約書を何件もこなしてきました。
一時よりずいぶんと少なくなったようですが、一旦、信託を組成し、信託受益権を同時に譲渡、証券化した不動産を現物に戻す手続などは月に4,5件はやっていたと思います。
信託法改正後は、ある不動産コンサルティング会社と一緒に民事信託(家族信託)案件も手掛けるようになりました。
自然人(法人の反対概念のことで、普通の一般の人のこと)が受託者になるのではなく、予め親族が経営権を握る一般社団法人を設立し、その一般社団法人を受託者とする信託を組成するのです。
受益者連続信託とか、当時は苦労しました。
その信託スキームでは更に受託者の管理業務をコンサルティング会社に委託するので、コンサルティング会社としては管理費として継続的に利益を得ることが出来ます。
と、ここまで書いてきて、途中で離脱せずにお読みいただいた方はほとんどいらっしゃらないのではないかと思います。
信託に慣れ親しんだ人に以外にとっては訳の分からない言葉の羅列に過ぎないので退屈ですよね。
しかし、なぜこのブログで信託を書くのか?
この信託という仕組み、とても役に立つのです。
信託だけにしかない機能を利用することで、相続争いを防ぐ手立てをしたり、、円満な家族の財産承継を考えたり、精神障がい者の親なき後問題の解決策の特効薬になる可能性を秘めているのです。
高齢者問題や親なき後問題の対策としてとても有効な家族信託
ところが、契約関係も複雑であるために、一般の方にとってはかなり取っつきにくい制度であることは確か。
そこで、信託の仕組みを最初から分かりやすく説明してみようと考えました。
WEB講座・『超簡単家族信託』
今回はその第一回目
それでは、スタートします。
信託まわりには、似た用語がたくさん混在していることも理解を妨げている要因と言われています。
よく聞かれるものでは、
投資信託
遺言信託
信託銀行
年金信託
商事信託
家族信託
民事信託
遺言代用信託
ペットのための信託
福祉型信託
何がなんだかよく分かりませんよね。
「信託」という言葉の整理を先ずは簡単に。
信託とは、信じて託す制度
文字どおり、自分が信じた人に、ある財産権の管理や処分などを託す制度です。
そして、信託に特徴的な用語が登場してきます。
委託者→任せする人
受託者→任される人
受益者→利益を受ける人
そこには、先ほど掲げたような様々な信託のカタチがあるわけです。
10個の用語を書きましたが、これらは大きく二つに分ける事が出来ます。
「商事信託」なのか?
「民事信託」なのか?
ごく簡単に触れますと、
「商事信託」は、儲けを出すことを目的とした信託
「民事信託」は、儲けを出すことは考えていない信託
と言うことが出来ます。
更に、
「商事信託」は、営業として行いますので信託銀行や信託会社しか出来ません。
「民事信託」は、営業目的ではないので、信託銀行や信託会社以外の、委託者の家族でも利用することができます。
さて、ようやく「民事信託」と「家族信託」との違いです。
民事信託は、利益を出すことを目的としていない信託だと書きました。
「家族信託」とは、民事信託のうち、委託者(任す人)の親族が受託者(任される人)になる信託
民事信託や家族信託がなぜこれほど注目を浴びているのかといいますと、信託が持つ特有の機能が今日の高齢者問題や親なき後問題を解決するために大変有効だからです。
もちろん、メリットだけではなく注意しなければならないポイントはありますが、信託を上手に利用することにより家族の財産を円満に承継する仕組みを組成することが可能です。
終活の一つの方法としての信託。
これから連載で続けていきます。
介護従事者や福祉関係者、社会福祉法人など、高齢者問題に頭を悩ます方々に有用なWEB講座になるようにしたいですね。
次回、【超簡単家族信託2】は、「遺言」と「信託」との違い、「成年後見制度」との比較もしたいと思います。
行政書士阿部総合事務所
行政書士阿部隆昭