【超簡単家族信託】WEB講座シリーズ11回めの今日は、他益信託と自益信託との違いを説明します。
いきなりの専門用語で難しく感じるかもしれませんが、全く難しくありません。
もしも、
信託って何?
と聞かれたときに、説明する一つの方法として使えますので覚えておくといいですよ。
他益信託と自益信託との違いは、受益者が誰になっているかどうか?
違いはこれだけと考えてもらって構いません。
信託では、三人の当事者が存在することは説明してきました。
委託者
受託者
受益者
でしたよね。
委託者は、元々の財産の所有者で、これから財産の管理や処分を任せる人
受託者は、財産の管理や処分を任される人
受益者は、信託の利益を受ける人
ということは、
自益信託は、委託者と受益者が同じ人です。
委託者=受益者
他益信託は、委託者と受益者は別人です。
具体的な利用例を挙げてみます。
自益信託は以前にも事例であげた賃貸アパートの管理の仕組みで利用することが出来ます。
委託者は、賃貸アパートを持っているお父さん
受託者は、賃貸アパートを管理するその娘さん。
賃貸アパートの賃料を得ることができる受益者もお父さんです。
娘さんがアパートの管理をして、賃料収入はお父さんが得る。
今まで全ての面でアパート経営を行っていたものを娘さんに経営を任せる仕組み。
高齢になってきたお父さんに代わって、お嬢さんがアパート経営をすることになるので、経営権のスムーズな委譲をすることも出来ます。
そして、自益信託なので、経済価値の移動がありません。
信託財産とはなっていますが、経済価値はお父さんが保有したままですので、贈与税が課せられないのです。
では、他益信託の事例です。
同じ賃貸アパートを持っている家族にしましょう。
お父さんが所有している賃貸アパートの賃料収入を、精神障がいを持つ娘さんに受け取ってもらう仕組みが信託なら可能になります。
委託者は、お父さん。
そして、受託者もお父さんです。
お父さんには、信託法上の受託者として、引き続きアパート経営をしてもらいます。
受益者は、精神障がいを持つお嬢さんにします。
賃料収入を得る権利がお父さんからお嬢さんに移転していますので、経済価値の移転があったとみなし、信託設定時の贈与税が課されます。
この場合、受託者はお父さんにしましたが、高齢のためアパート経営から手を引きたいという場合には、第三者を受託者とすることも可能です。
信託は、これまでの法律行為では実現しづらかったことを容易に実現できる可能性を秘めたもの。
といっても、魔法のような夢のシステムではありません。
贈与や成年後見制度などと組み合わせることで、高齢者問題や親なき後問題に対する有効な解決策となるのです。
行政書士阿部総合事務所
行政書士阿部隆昭
【超簡単家族信託】WEB講座シリーズ11回目のまとめ
自益信託は、委託者と受益者が同じ。経済価値の移動がない。信託設定時に贈与税が課されない。
他益信託は、委託者と受益者が別人。経済価値の移動がある。信託設定時に贈与税が課される。
次回、【超簡単家族信託】WEB講座シリーズ12回目は、「受託者」の義務を考えます。