申請前の条件|人員・賃上げ
制度情報の確認日:2026年10月24日

資金・購入条件・人員・契約・証拠を確かめる手順と、特定の制度例を分けて解説します。制度名・数値・日程がある箇所は確認日付きの例です。実際に利用する年度・公募回の最新条件を公式サイトで確認してください。
目次|気になるところから読む
「給与を3.5%上げればよいのでしょうか」。補助金の賃上げ要件は、この一言では判断できません。給与の総額なのか、1人当たりなのか、最低賃金なのか。さらに、パートの勤務時間や年度途中の採用・退職で、計算に入れる人も変わります。
動物病院では、獣医師・愛玩動物看護師・受付等の構成や勤務時間が一様ではありません。申請画面に数字を入れる前に、誰の何を、いつと比べるかを確定する必要があります。
まず、3つの数字を混ぜない
| 指標 | 見るもの | 動物病院での注意 |
|---|---|---|
| 給与支給総額 | 定義された対象者へ支給する給与の合計 | 採用で人数が増えるだけでも金額は変わる。何を給与に含めるかは制度別 |
| 1人当たり給与支給総額 | 対象給与を、ルールに沿った従業員数で割る | 実人数で単純に割れない制度がある。途中入退職・短時間勤務も確認 |
| 事業場内最低賃金 | 院内の最も低い賃金を、所定の方法で比較する | 病院全体の平均給与が上がっても、最低水準を満たすとは限らない |
これらを一つの「賃上げ率」で代用しないことが重要です。役員報酬や福利厚生費を加えると計算が合う、という扱いもできません。
新事業進出・ものづくり第1回では、パートと中途入退職をどう数えるか
制度例として、2026年10月24日に確認した同第1回では、補助事業終了後の3〜5年計画について、1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上を基本要件とし、事業場内最低賃金は毎年、地域別最低賃金より30円以上高い水準が求められます。基準年度は補助事業の終了時点を含む事業年度です。これ以外にも付加価値額等の要件があります。第1回公募要領(9月28日改訂)p.11〜13
同要領の給与算定では、全月分の給与を受けた従業員を対象とし、中途採用・退職で全月分の支給がない人は、その年度の算定から除きます。パートは正社員の就業時間へ換算します。産休・育休等による一定の時短勤務者を除外できる規定もあります。これは同第1回のルールであり、ほかの補助金へそのまま当てはめません。
| 院内の状況 | 確認のしかた | 誤りやすい点 |
|---|---|---|
| 正社員と短時間パートがいる | 制度指定の勤務時間換算と、対象給与を対応させる | 在籍人数だけで割る |
| 年度途中で採用した | その年度に全月分の支給があるか確認する | 一度除外した人を翌年度も機械的に除外する |
| 年度途中で退職した | その人の給与と人数を、同じルールで扱う | 人数だけを減らし、給与は残す |
| 残業が減った・勤務時間が変わった | 基本給以外も含め、制度上の給与と将来見込みを確認する | 基本給を上げれば指標も必ず上がると思う |
たとえば、週40時間の正社員が1人、週20時間のパートが2人いる場合、時間換算の考え方は1人+0.5人+0.5人=2人相当です。実人数の3人で割る計算とは違います。実際の算定では、対象年度・対象給与と就業時間を該当要領に沿って対応させます。
新しいスタッフを雇うことや、残業を減らすことの是非を補助金だけで決めるのではありません。病院に必要な人員計画を先に置き、その計画で目標を達成できるかを試します。
計算例:3年後の目標と、3年間に増える支出は違う
制度上の対象給与が年1,200万円、算定上の従業員数が4人相当で変わらないと仮定します。1人当たりは300万円です。年平均3.5%で3年間増やす計算なら、3年後は300万円×1.035の3乗=約332.6万円です。
| 年度 | 対象給与の合計 | 基準年度より増える年間支出 |
|---|---|---|
| 基準年度 | 1,200.00 | ― |
| 1年後 | 1,242.00 | 42.00 |
| 2年後 | 1,285.47 | 85.47 |
| 3年後 | 1,330.46 | 130.46 |
この仮定では、3年間の給与増加分は合計約257.93万円です。さらに事業主負担の社会保険等も資金面で確認します。制度の算定給与に含めない費用でも、病院が支払わなくてよいわけではありません。
表は支出を見通すための一定率モデルで、同第1回が毎年一律3.5%の引上げを要求するという意味ではありません。1人当たり給与の年平均成長率は計画最終年度との比較、事業場内最低賃金は毎年の確認です。申請で3.5%を超える目標を掲げた場合は、その目標を基準に達成を判定します。
また、同第1回では直近事業年度から基準年度にかけての「足下の賃上げ」も審査対象です。基本要件の3.5%だけを見て、ほかの審査・表明・報告・返還条件を省かないようにしてください。同公募要領p.12・44
デジタル化・AI導入補助金は、第6次と第7次以降を分ける
| 2022〜2025年の交付決定歴 | 150万円未満 | 150万円以上 |
|---|---|---|
| なし | この給与成長率の必須要件はなし | 年平均3%以上 |
| あり | 年平均3.5%以上 | 年平均3.5%以上 |
適用除外の規定、最低賃金等の別要件、加点の条件は別途確認が必要です。この表だけで申請可否は判定できません。第7次以降・通常枠公募要領p.35〜36
院長が用意する資料は「給与総額」の1枚だけではない
給与・賞与台帳、入退職日、雇用形態、所定労働時間、勤務時間の変更、所在地、過去の交付決定歴を確認します。そのうえで、基準年度と比較する年度を置き、対象者と給与項目をそろえます。最初の相談では、個人名を含む台帳を一括送付せず、人数・勤務形態・予定する採用等の概要からで構いません。
「補助額が大きいから高い賃上げ目標を選ぶ」のではなく、診療収入、採用、設備導入の効果から続けられる数字かを確かめます。未達時の取扱いには返還規定と例外があるため、「未達なら必ず全額返還」「採用したから必ず免除」といった一律の理解は避けてください。
病院で実行できる賃上げか、申請前に確かめたい院長へ
行政書士阿部総合事務所の行政書士・阿部隆昭が、適用する公募回と給与・人員計画を照合し、どの数字を目標に置くべきか、何年分の負担を見込むか、申請計画と現場の運営が食い違っていないかを院長と検討します。採択後の報告も見据えた申請準備を支援します。
賃金規程や労働条件、社会保険、税務の個別判断は、社会保険労務士・税理士等の担当領域と区分します。検討中の制度、常勤・パートの人数、採用等の予定をお知らせください。対応範囲・費用は確認後にご案内します。



