『ひきこもりのライフプラン』斎藤環著
岩波ブックレット
ひきこもり問題について、経済的な視点から支援策が具体的に書かれています。
誰にも相談できずに人知れず悩んでいる方にとって、心強い味方になるだろうなという印象です。
岩波ブックレットだから読みやすいのもいいですね。
ひきこもりのごく初歩的な理解のために有用だと思われるものをいくつか引用させていただきます。
いくつかある「ひきこもり」の定義のうち共通するのは以下の三点
<ひきこもりの定義>
1、六ヶ月以上社会参加していない。
2、非精神病性の現象である。
3、外出していても対人関係がない場合はひきこもりと考える。
ひきこもりに至る原因ははっきりとせず決定的なものはない。
<推定されるひきこもりの原因>
1、もともとの性格傾向(内向的)
2、社会文化的な背景(男性に多い、国際的には日本と韓国が突出して多い。)
3、社会や家庭の事情(本人の意図によらずひきこもりになることを余儀なくされる場合)
ひきこもり支援の難しさは、それが生き方の問題に結びついてしまうこと。
病気であれば治療という選択肢があるが、生き方の問題についてのアプローチは様々。そこが問題を難しくしている。
<ホームレスとひきこもりとの同一性>
1、両者とも社会から排除された者たちという点で同じ。
2、両者の居場所は、路上なのか家の中なのかという点で異なる。
適切な支援のためには、ひきこもりに至った犯人探しをするのは意味がない。
「何がひきこもりを抜け出すのことを難しくしているか」について理解することが必要。
<ひきこもりシステム>
個人ー家族ー社会それぞれのシステムどうしの間でコミュニケーションがなくなった状態。
問題点
1、ひきこもり当事者と家族の断絶→家族は、誰にも相談できずに問題を抱え込んでしまう。2、家族と社会の断絶→システムの安定性を高めてしまうことになり、問題が長期化する。自然治癒がきわめて起きにくい状態。
精神鍛錬の修行者のような人が、家庭から無理やり引っ張り出し、陸の孤島のようなところで集団生活をさせて「更生」させるといった内容のテレビを観た記憶があります。
ひきこもり支援策の方法の一つとして今でもそういったことがなされているか分かりません。
ひきこもりシステムとしてのコミュニケーション不足というは理解できます。
本格的なひきこもり状態になる前に、家庭の中にヒントがたくさん落ちていたかもしれません。
コミュニケーションがないとそれに気づくことなく日常が過ぎていってしまう。
著者の斎藤環さんが「もっとも重要なこと」として述べているのが、
「長期に及ぶひきこもり問題は、本人や家族の自助努力だけで解決することはきわめてまれである」ということ。
さらに、ひきこもり問題についてひきこもったままでいいという主張に対しては、
「それはそれで理解もできます。ただ、私にはその肯定の先に何があるかをまったく想像できません。私は、自分にとって予想もつかない未来を相手に押し付けることは、治療者のモラルに反するとかんがえています」とも述べています。
自助努力で解決することがまれな問題である以上、誰かが手を差し伸べる必要があって、その支援策の一つとしてファイナンシャルプランニングがあるのであればそこに関与していきたいと思いました。