他人にとってはゴミ、本人にとっては宝物
汚部屋問題の特徴です。
昔の新聞の束が何層にも重なった巨大物体は他人から見たらゴミ
乾燥して広げて丁寧に一枚づつ積み重ねた牛乳パックもゴミ
他人からみたら、”そんなの捨てちまえ!”というものでも、宝物なので捨てられないんです。
という親御さんからの相談にどうしたものかと正直思いますよ。
宝物VSゴミ問題はなかなか決着がつかないのも特徴です。問題の核心が人の感情なのでそもそもややこしいですし、お互い100%満足ということが有り得ません。
完全決着があり得ない以上、ゴミを移動するという手段に出るのが次善策として一般的です。
汚部屋にしているということは、すなわちその部屋も実際のところ「倉庫」として利用しているわけです。
家賃12万円の「倉庫」を借りているのであれば、月額4万円の本当の倉庫を借りたほうがマシ。
浮いた8万円で今後こそ本当の住居を借りれば良いのです。
といっても、この策も汚部屋住人の感情に何らアプローチしていないので実は弱い。
あなただったらどうですか? 収集した宝物はそばに置いておきたいですよね。遠く離れた借りた倉庫に置いてあるからいいってもんじゃないわけです。
なので、
”本当に大切なモノだけを選んで後の残りは倉庫に置きましょう”
といったところで、
”全部大事なんだからそれはムリ”
と言われてしまえばまたハナシは振り出しに戻りますね。
ではでは、ご実家がとても裕福な家だとして、「自宅の離れに倉庫を建てる、自宅マンションのワンフロアーを専用倉庫に改造する、だからお部屋を解消してくれ」と言ったところで、「それならそっち行くわ」ともなりにくい。
なぜかというと。
ゴミ(宝物)に囲まれたその現況が当人にとっての最適空間としてかけがえのないモノに成長しているから。
汚部屋問題が問題化するのは大抵の場合十数年その状態が続き、大家さんや近隣から苦情が出てようやく本腰をあげて対処するようになるわけです。
長年に渡って築き上げた快適空間と、大好きで集めた宝物を同時に取り上げようというのですから、これはもちろん承諾し難い断固として反対するとなってしまう訳です。
じゃあ、汚部屋問題をどう解決するのかというと、3つの要素に整理することが大切だと思っています。
1.賃借物件の明け渡しの問題
2.ゴミの処理(移動、廃棄)の問題
3.感情の問題
もっとも簡単で整理し易いのが1です。
汚部屋状態になっているということは、当初の賃貸借契約で定められた賃借人側の債務不履行が成立している可能性もありますし、一般的には特に争いは生じることが少ないです。というよりも、2と3の問題のハードルが高すぎて正直気にならない。
2については、整理業者に見積もりを出してもらい、完全廃棄か一部を移動するかを決める。
移動するからには移動先の倉庫の契約も当然必要。ですが、倉庫業者としてみたら、倉庫に入れるものがゴミだと分かったらそれはイヤでしょう。ニオイの発生するものであれば、他の保管物に移るかもしれません。生ゴミ等は論外ですが、そもそも倉庫に移せる種類のゴミなのかも検討のポイント。
完全廃棄以外の最大の問題が実はありまして。
”いらないゴミ”と”いるゴミ”に分ける作業が必須だということ。さて、そもそもですよ、分けて整理することが難しいから増えに増えて汚部屋になっているわけです。難しいですよ、分ける作業は。ここでめんどくさくなって振り出しに戻る可能性が高くなります。なので、このあたりはご家族のサポートが必須ですね。
3の感情の問題は、先ほども書いたようにお互い100%満足はあり得ないです。整理の段階まで進んでいるとしたら、当人にとってかなりの譲歩をさせられているはず。なので、感情面のサポートをしてあげる必要があります。
よくですね、聞かれるのですが、”お金かけて手間もかけてこんなことしてもまた同じだからやっても仕方ない”と。
一つだけ確かなのは、ある日気がついたら自然に汚部屋がすっきりキレイになることは絶対にないわけでして。
誰でもよいのですが、当人以外の人が動かないことにはどうにも進まないことは確実なので相談出来る協力者を見つけるところから問題解決の道はスタートです。
行政書士阿部総合事務所 行政書士阿部隆昭