株式会社、合同会社、数々の会社設立のお手伝いをさせて頂いておりますが、ほとんどの方が悩んでいる、迷っているのがこの問題。
会社名義で店舗やオフィスなどの事業用不動産を借りたいけれども、肝心の会社が出来ていない。
会社設立の登記申請書には、会社の本店所在地(会社の住所)を書かなければいけません。
会社名義で店舗、オフィスなどの賃貸借契約(法律行為)をするには、会社設立手続きが終了し、法人格を取得しなければ出来ません。
つまり、会社のオフィスを借りるときには、その会社は未だ出来ていないのが普通なのです。
ではどうしたら良いのか?
実務上、二つの方法が考えられます。
1、個人で賃貸借契約をし、会社設立後に賃貸借契約の借主を会社名義に変更する。
発起人である代表者が個人名義で賃貸借契約をし、会社設立後に契約者の変更(個人→会社)することで賃借人を会社名義にします。
メリット1:費用がかからない
不動産仲介業者が契約変更の手間を負担するだけですので、会社側の費用負担は通常ありません。
メリット2:登記簿謄本の見た目がキレイ
会社設立時から会社の住所は動いていないので、登記簿の見た目もキレイです。
デメリット1:不動産会社と事前の交渉が必要
契約変更の手続きが会社設立後に予定されているので、事前にスケジュール等を伝え、了承を取っておくことが大切です。といっても、不動産仲介業者にしてみれば、よくある手続きですので特に問題とならないでしょう。ただ、後で伝えるとトラブルになる可能性があるので事前交渉は必須になります。
2、個人の住所を会社の住所として登記をし、会社名義でオフィスの賃貸借契約後、登記簿上の会社の住所を変更する。
メリット1:焦ってオフィスを決める必要がない
このメリットは大きいです。店舗やオフィスの所在地がその後の経営に多大な影響を及ぼす業種業態がありますよね。例えば、飲食店など。何れにしても、どこかのタイミングで会社の登記簿上の住所を変更することには変わりませんので、立地選定を焦る必要がありません。個人の住所ではありますが、会社は設立後なので法人として賃貸借契約の交渉をし、契約をゆっくり進めることができます。
デメリット1:費用がかかる。変更登記の登録免許税3万円が必要。
会社の住所(本店所在地)を変更する登記は、登録免許税として3万円を納めなければなりません。
https://www.nta.go.jp/taxanswer/inshi/7191.htm
デメリット2:登記簿が「汚れる」
会社成立後、すぐに本店移転(会社の住所変更)の登記がなされているのは、あまり見栄えがいいとは言えません。登記簿を見慣れている方でしたら、事情はすぐに分かりますが、出来れば不必要な登記は避けたいところです。
登記簿上の会社の住所は、変更せずに放置しておけばいいのでは?
と思われる方もいますよね。結論からいうと、これはダメ。会社法違反です。
(変更の登記)
第九百十五条 会社において第九百十一条第三項各号又は前三条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。
会社法という法律によって、会社の住所が変更になってから二週間以内に登記しなさい、と決められているのです。
今回は、会社設立者の誰もが悩むポイントを整理してみました。
参考になりましたでしょうか?
もう少し細かく解説すると、実は、会社設立中は講学上「設立中の会社」と呼ばれ、法人格のない社団として存在しています。法人格がないので発起人が機関として実際は動くのですが、設立中の会社と設立後の会社とは実質上同じ存在ですので、設立中に発起人がした会社のための権利義務は特別の行為なしに設立後の会社に移転します。この同一性説が通説として存在しますので、発起人がなした事業用不動産の賃貸借についても設立後の会社にそのまま引き継がれるのです。
ということで、
来月、2017年8月7日、東京都北区赤羽でちょっと変わった会社設立のセミナーを開催します。
私たちのような専門家に頼むのではなく、発起人ご自身で会社を作ってみよう、という内容です。
おかげさまで、開催は第5回目になりました。
実務的な手続きについて私だけのノウハウを解説しますので、本気で会社設立を考えている方であればとても参考になる内容です。また、起業家の方に多く参加していただく目的で開催しますので、士業、コンサルタント等、支援の側にある業種の方のご参加はご遠慮ください。
講座の概要、申し込み方法等はこちらのリンク先からご確認ください。