株式会社設立の場面で悩まれる方が多いのが取締役の任期の期間
会社法上は、非公開会社(株式の全部が譲渡制限株式である会社)であれば、任期は最長10年まで伸長することが可能です。
任期が長ければ長いほど、役員の再任コストの節約が出来そうですが、問題はないのでしょうか?
・任期を10年にすればコストを節約になる?!
役員の任期が到来するたびに招集通知には、その旨を記載しなければなりませんし、新たな役員を選任する場合にはそのための煩雑な手続きに掛かりっきりになってしまうこともあります。
また、役員の変更登記には、登録免許税が必要なので、改選期間が長いほどそのコストは浮くことになるのです。
登録免許税は、原則3万円、資本金の額が一億円以下の会社は1万円
登記手続きを司法書士に依頼すると3万円から5万円程度かかりますので、確かにコスト節約にはなりそうです。
役員変更程度は、自社の総務部で行っている会社もとても増えてきました。
・任期10年の間は取締役で安泰。裏を返せば10年は解任出来ないということ。10年間も仲良しではいられますか?
特に注意したいのは、友達や先輩後輩関係で共同出資して株式会社を設立する場面。
会社を一緒に立ち上げるぐらいだから、仲は良いのでしょう。
しかし、しかしです。
会社を設立し、事業をするということは、これまでのサラリーマン生活とは必要な意識も覚悟も全く異なります。
サラリーマン時代は仲が良かったのに、一緒に事業を始めた途端、仲違いが始まったという例は少なくありません。
株式会社の取締役の任期を10年にしているということは、何もなければ10年は取締役のママだという事実。
裏を返せば、簡単にはクビ(解任)出来ない、ということを示しているのです。
会社法上は、役員などはいつでも株主総会決議で解任出来る、とされています。
だからといって、思い当たることがないのに解任されたのでは、10年間は取締役でいることが出来る方の不利益が大きすぎます。
なので、解任について正当な理由がある場合を除いて、株式会社に対し、解任によって生じた損害の倍賞を請求することが出来るような規定もあるのです。
簡単に言いますと、任期10年で選任した取締役を二年間で解任した場合、背任等の正当な理由がなければ、残存期間8年分の役員報酬を支払わなければならない可能性があるのです。
登録免許税の数万円を節約しようと思ったばかりに、数百万円単位の費用が必要になるかもしれません。
もしも、任期2年で設立していたとしたら、二年後の定時株主総会で選任しなければいいハナシです。
そこには、解任の際のような正当理由も何も必要ありません。
・まとめ
登録免許税に代表される役員の改選コストを削減する目的のみで取締役の任期を10年にするのは危険
専門職の中には、”登録免許税の節約になるから”とこういった事情を説明せずに、任期10年の定款を作る方もおりますので注意してください。
行政書士阿部総合事務所
行政書士阿部隆昭