―― 該当しても“即取消し”ではないが、人事管理は確実に変わる
はじめに|「永住者だから安心」という前提が揺らいだ
2024年の法改正を受けて、
「永住者にも取消事由が新設された」という情報が企業側にも広がっています。
人事担当者として真っ先に浮かぶのは、
該当したら、突然在留資格が取り消され、雇用継続ができなくなるのではないか
という不安でしょう。
しかし、出入国在留管理庁が公表している永住許可制度の適正化Q&A(Q12)を読むと、
この点は比較的はっきり整理されています。
結論から言えば、
「取消事由に該当=直ちに取消し・出国」ではありません。
結論整理|取消事由に該当しても“原則は資格変更”
法務省Q&A(Q12)では、次のような運用方針が示されています。
-
取消事由に該当した場合でも
直ちに在留資格を取り消して出国させることを基本とはしない -
一定の場合を除き、
法務大臣の職権で「永住者以外の在留資格」への変更を許可する
これは企業側にとって重要なポイントです。
「即・雇用不可」という単純な話ではなく、移行プロセスが制度上想定されているということを意味します。
多くの場合は「定住者」へ|雇用継続の余地が残るケース
在留資格を変更する場合、
どの資格になるかは 本人の在留状況・生活状況・活動内容を踏まえて個別判断されます。
そのうえでQ12では、
多くの場合、「定住者」の在留資格を付与することになる
と、かなり踏み込んだ説明がされています。
企業実務の観点では、
- 就労自体が直ちに全面禁止されるケースが多数派ではない
- 「どの資格に移行するか」「その資格で現在の業務を継続できるか」が検討軸になる
と整理しておくのが現実的です。
例外|企業側も無関係ではいられない「取消し方向」のケース
一方で、Q&Aは明確に例外も示しています。
たとえば次のような場合です。
- 今後も公租公課(税・社会保険料等)を支払う意思がないことが明らかな場合
- 犯罪傾向が進んでいる場合
このように
「引き続き日本に在留することが適当でない」と判断されれば、
在留資格変更ではなく、取消し方向になる可能性があります。
ここで重要なのは、
単なる一時的ミスよりも、態度・意思・継続性が見られている点です。
制度背景|なぜ今「永住者」が見直されたのか
今回の論点は、「永住者を厳しくする」という単純な話ではありません。
法務省は、
令和6年改正を「永住許可制度の適正化」と位置づけています。
国会審議(衆議院法務委員会)でも、
- 永住という安定した地位があるからこそ
- 故意に公租公課を支払わないケースを是正する必要がある
という説明がされています。
つまり、
「生活・社会参加の前提が崩れた場合のセーフティ調整」
という制度趣旨を理解しておくことが重要です。
企業実務の要点|人事担当者が押さえるべき3つの視点

1.問題は「未納」そのものより「対応姿勢」
Q12の文言から読み取れるのは、
「うっかり」や一時的事情よりも、説明・是正・再発防止の姿勢が重視される点です。
企業としては、
-
問題が起きたときに
放置されていないか
相談・修正の動線があるか
を支援できる体制が、結果的に雇用リスクを下げます。
2.永住者こそ「期限管理以外」の管理が盲点になる
永住者は在留期限更新がありません。
そのため現場では、
- 在留カードの期限管理は不要
- 結果として、人事のチェックが薄くなる
という構造が起こりがちです。
実務上は、次のような軽い仕組み化が有効です。
- 年1回の簡易セルフチェック(税・社保・住所届出など)
- 困窮時の相談導線(分納・猶予制度の案内)
-
問題発生時の
「説明 → 是正 → 記録」の社内ルール統一
これは監視ではなく、雇用を守るための予防線です。
3.在留資格変更後を見据えた雇用設計
仮に「定住者」へ変更された場合でも、
- 就労範囲
- 契約更新の実務
- 社内配置や業務内容
が変わる可能性はあります。
人事・総務としては、
- 現在の職務が継続可能か
- 雇用形態を柔軟に調整できるか
を事前に整理しておくことが、突発的な混乱を防ぎます。
まとめ|企業に求められるのは「過剰反応」ではなく「設計」
- 取消事由に該当しても、原則は直ちに取消し・出国ではない
- 多くの場合は「永住者以外」への変更、特に「定住者」が想定されている
- ただし、支払意思の欠如や犯罪傾向などは例外になり得る
-
企業側は「期限管理」だけでなく、
生活・納付・届出を支える人事運用設計が重要
永住者制度の見直しは、
外国人雇用をやめる理由ではなく、
雇用を安定させるために管理を一段アップデートする合図と捉えるのが、実務的です。
行政書士阿部総合事務所
※本記事は一般的な制度整理を目的としたものであり、個別事案の結論を示すものではありません。実際の対応は、在留状況・経緯・資料を踏まえた個別判断が必要です。



